診療報酬の審査、「混乱が起きる可能性も」 ── 医療保険部会で池端副会長

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池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)20190612医療保険部会

 日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は6月12日、改正健保法の主要事項などが報告された厚生労働省の会議で、診療報酬の審査について「平準化は進めていくべき」と賛意を示しながらも、「現時点では一定のローカルルールがあることも事実」と指摘。「中央で集まって、これが基準なので、さあこれでやってくださいとなると、非常に混乱が起きる可能性も高い」と問題提起しました。

 厚労省は同日、社会保障審議会(社保審)の医療保険部会(部会長=遠藤久夫・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第118回会合を開き、今年5月22日に公布された改正健保法(医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律)のうち、医療保険制度に関わる事項などを報告しました。
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宮崎敦文課長_20190612医療保険部会

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審査基準の統一化を進めるため「連絡会議」を設置へ

 厚労省の担当者は、改正健保法について説明する中で「審査支払機関における審査の効率化・高度化等に向けた取組」を挙げ、これまでの経緯や最近の動向などを説明しました。

 その上で、今年7月に「審査支払機関における審査の判断基準の統一化を推進するための連絡会議(仮称)」を設置し、第1回会合を8月以降に開催する予定であることを報告しました。

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スライド4_2019年6月12日の医療保険部会の資料「1-4」

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統一的な判断基準を提供する

 こうした中央の連絡会議を開く趣旨について厚労省は、「今国会で成立した健保法等の一部改正法においても、審査支払機関の機能の強化が盛り込まれており、審査における不合理な差異をなくし、平準化を図るための改革が進められている」と指摘しました。

 また、診療報酬の審査を担う機関で基準の統一化に向けた取組が行われていることも挙げながら、「審査の運用の際に全国統一的な判断基準が必要と思われるものについて検討の上、統一的な判断基準を提供する」との意向を示しました。

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スライド3_2019年6月12日の医療保険部会の資料「1-4」

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「一定のローカルルールがある」と池端副会長

 質疑で、同部会に委員として出席した池端副会長は「支払基金等における審査の効率化・高度化に向けた、この取組そのものについては、もちろん反対するものではなくて、平準化も含めて進めていかなければいけないことは十分理解している上で、お話ししたい」と切り出し、「現時点では地域性に鑑みた一定のローカルルールがあることも事実である」との認識を示しました。

 その上で、池端副会長は「どう平準化を合わせるか。これについては、各地域性も踏まえた丁寧な情報収集などで議論してもらってソフトランディングする必要がある」と指摘。「中央で集まって、『これが基準ですよ、さあ、これでやってください』ということになると、混乱が起きる可能性も高いのではないか」と問題提起した上で、「ソフトランディング的な取組も考えているのだろうか」と質問しました。
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池端幸彦委員2(日本慢性期医療協会副会長)20190612医療保険部会

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「丁寧に話し合っていただく」と森光課長

 厚労省保険局医療課の森光敬子課長は「この連絡会では、まずローカルルールも含めてしっかり話し合って、丁寧にやっていただく。支払基金の中で、しっかり統一していただく。それぞれの審査機関の中で丁寧に話し合っていただくことが前提であるので、それはご心配ないのではないかと思っている」と答えました。

 池端副会長はまた、医療技術の進歩などに応じた迅速な対応についても質問。「医療というものは、薬剤の適応等も含めて日進月歩であり、一定のルールをつくったところで、1年1年、それをすぐにバージョンアップしていかなければ新しい医療に対する適応ということに対して遅れがちになる」と指摘し、さらに「萎縮診療につながってしまうようなこともあり得る」と懸念しました。

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中央で一括、「タイムリーな対応ができるだろうか」

 今回の支払基金改革では、2021年4月から支部長が担っている権限を本部に集約し、本部によるガバナンスを強化する予定です。

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スライド10_2019年6月12日の医療保険部会の資料「1-1」

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 池端副会長は「中央で一括でやることによって、タイムリーな対応ができるのだろうか」と尋ねました。

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「高度化に応じた形で疑義解釈を示していく」と森光課長

 この問題について森光課長は、中医協の権限事項であるとの考えを表明。「それは基本的には厚労省医療課のほうで、診療報酬改定の中で、新しい高度な技術を入れるとか、そういう部分に関しての解釈である」と説明しました。

その上で、森光課長は「それぞれの支払基金での審査というよりは、まずは私どものほうで高度化に応じた形で疑義についてしっかり解釈を示していく。そういうことで対応していくことが必要であろうと思っている」と答えました。
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20190612_医療保険部会

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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