「在宅死と病院死が補完し合う体制を」 ── 死亡場所のデータで池端副会長

協会の活動等 審議会 役員メッセージ

池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)_2021年12月24日の中医協総会

 「最期を迎えたい場所」について複数のデータが示された会合で、厚生労働省の担当者は「調査の時期や質問の方法によって、ぶれがある」と説明した。日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「在宅死と病院死が互いに補完し合って、できるだけ最期まで長く在宅にいられるために、どういう体制にすべきかを考えるデータになったのではないか」と評価した。

 厚労省は12月24日、今年最後となる中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第508回会合をオンライン形式で開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。

 この日の主な議題は、①個別事項(その12)、②令和4年度診療報酬改定の改定率等、③令和4年度診療報酬改定への意見、③その他(公聴会の開催案)──の4項目。22日の大臣折衝で決定した改定率が報告された後、令和4年度改定への意見を各側委員が述べ、公聴会の日程を決めて閉会した。

.

「最後まで自宅」は1割、3割、6割

 最初の議題「個別事項(その12)」では、届出の簡素化と内視鏡治療について審議したほか、いわゆる「宿題返し」として、これまでに委員から要望のあった資料が示された。

 この中で、在宅医療の現状等に関する資料が追加された。10月13日の総会では「国民の約3割は、『最期をむかえるときに生活したい場所』について、『自宅』を希望している」(平成30年調査)としたが、同日の総会で池端副会長が「最後まで『自宅』は1割というデータや6割という調査もあった」と指摘していた。

 これを受け、厚労省は今回の総会に追加資料を提示。「最後まで自宅」が約1割だった平成20年の調査結果のほか、約6割が「自宅」と回答した平成29年度の調査結果が報告された。

.

01スライド_P19_【総-1】個別事項(その12)_2021年12月24日の中医協総会

.

02スライド_P20_【総-1】個別事項(その12)_2021年12月24日の中医協総会

.

患者のニーズは刻々変わる

 平成30年の調査は、在宅医療について1回目の審議となった8月25日の総会で示された。

 それによると、「年をとって生活したい場所」について、「配偶者がいなくなり一人となった場合」は「自宅」が最も多く64.7%だが、「介護を必要とする場合」は14.7%だった。

.

03スライド_P17_【総-1】個別事項(その12)_2021年12月24日の中医協総会

.

 「人生の最期をむかえるとき生活したい場所」については、「自宅」が27.9%となっている。

.

04スライド_P18_【総-1】個別事項(その12)_2021年12月24日の中医協総会

.
 池端副会長は「在宅医療の現状について丁寧に調べていただいた」と謝意を示した上で、「患者のニーズは刻々変わる。それを理解しながら、在宅医療を進めていかなければいけない」とコメントした。

.
2021年12月24日の中医協総会

■ 在宅医療の現状等について
.
 在宅医療の現状について丁寧にお調べいただき、感謝を申し上げる。先ほどの説明にもあったように、質問の方法によって結果が違ってくることがよくわかった。配偶者がいなくなったとき、介護が必要なときで違う。本当に最期まで家にいられるかについては不安を感じている。
 調査の年度は多少違う。患者のニーズは本当に刻々変わるし、聞き方によっても変わってくる。そこを丁寧に理解しながら、この在宅医療を進めていかなければいけないのではないか。
 大きな流れとしては、やはり最期まで在宅で迎えたいという気持ちがあることは、おそらく誰も反対しないだろう。しかし、本当に苦しくなったとき、つらくなったときに入院もしたい、そういう気持ちも表れているデータではないか。
 在宅死ありきではない。在宅死がマルで、病院死はバツという考え方ではなく、お互いが補完し合って、できるだけ最期まで長く在宅にいられるような体制を組むために、どういう診療体制があるべきかを考えていく、そういうデータになったのではないか。

.
■ 在宅療養支援病院の実績について
.
 在支病の評価に関して、強化型で求められる緊急往診件数がゼロの所があるのはなぜかが議論になり、機能強化型とそれ以外の内訳が示された。 
 ゼロの所を見ると、在宅からの緊急入院が30件以上ある。機能強化型以外も含めて、在宅からの入院受け入れをしっかりやっている。 
 おそらく、訪問診療、往診体制が取れていなくても、それをしっかり受け入れる体制は取れていることが在支病の1つの実績として出たのではないか。こういう点も評価できるということで、ご理解いただければいいと思う。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

この記事を印刷する この記事を印刷する
.

この記事を印刷する この記事を印刷する
.


« »