在宅医療を支える「多機能病院」と連携を ── 10月31日の医療保険部会で武久会長

会長メッセージ 協会の活動等 審議会

武久洋三会長_20191031医療保険部会

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長は10月31日、令和2年度診療報酬改定の基本方針について議論した厚生労働省の会議で、在宅医療に取り組む開業医の高齢化などを指摘した上で、「地域の多機能な中小病院が夜間の診療を代わりに担当するなど、そういう連携が地域医療の中で必要」と述べ、在宅医療を支える地域の中小病院の役割を強調した。

 厚労省は同日、診療報酬改定の基本方針などをテーマに社会保障審議会(社保審)の医療保険部会(部会長=遠藤久夫・国立社会保障・人口問題研究所所長)を開き、「改定の基本的視点」を示した。

 改定の視点は4項目で、「医療従事者の負担を軽減し、医師等の働き方改革を推進」(視点1)を重点課題に位置付けた。
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20191031医療保険部会1
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医療を考えるきっかけとして「重点」

 会合では、保険者を代表する委員から「医師の働き方改革の部分だけを改定の重点課題としていることに大変強い違和感」などの意見があった。

 保険者の代表は「なぜ、ほかの項目よりも優先するのか、その理由や考え方を説明してほしい。もし、他の項目よりも優先するわけではないのであれば、『重点課題』という言葉は要らないのではないか」と詰め寄った。

 厚労省保険局医療介護連携政策課の山下護課長は、医師の時間外労働の上限規制が始まる2024年4月に向けた対応を急ぐ必要性などを挙げ、「どうやってみんなで医療を守っていくかを考えるきっかけとなるよう、こういった場で『重点』として発信することを通して皆さんに考えていただきたいという思いから、重点課題という位置付けで書かせていただいた」と理解を求めた。
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厚労省保険局医療介護連携政策課・山下護課長_20191031医療保険部会
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「前向きな連携ができれば非常にいい」

 参考人として出席した武久洋三会長は「視点3」(医療機能の分化・強化、連携と地域包括ケアシステムの推進」に着目。この視点の「具体的方向性の例」として示された「外来医療の機能分化」「質の高い在宅医療」などに言及した。
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05_次期診療報酬改定に向けた基本認識、視点、方向性等について_20191031医療保険部会

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 武久会長は「現実問題として、開業医の平均年齢が60歳を超えていて365日24時間、在宅患者の要求、要望に応えることが非常に厳しくなっている」と現状を伝えた。

 その上で、地域の多機能な病院と開業医などが連携して在宅患者を支援する必要性を指摘。「かかりつけ医が対応できないことは多機能な病院が対応する。日常的な疾患はかかりつけ医が対応するなど、前向きな連携ができれば非常にいい」と述べた。
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20191031医療保険部会

【武久会長の発言要旨】
  視点3(医療機能の分化・強化、連携と地域包括ケアシステムの推進)について述べる。「考えられる具体的方向性の例」として、「大病院と中小病院・診療所の機能分化を推進」「質の高い在宅医療」などが挙げられている。これについて、私は医療の真っただ中でいるので、現場からの発言としてお話をしたいと思う。
 資料(日本医師会・四病院団体協議会合同提言)にあるように、「かかりつけ医」の普及などには日本医師会が中心になって取り組んでいる。在宅医療の患者さんにはかかりつけ医の先生方が付いてくれているのだが、現実問題として、開業医の平均年齢がもう60歳を超えている。毎日毎日、365日24時間、その在宅患者の要求、要望に応えることが非常に厳しくなっている現状がある。
 そのため、地域の多機能な中小病院が夜間の診療を代わりに担当したり、開業医の先生が訪問診療できない時には代わりに行くなど、そういう連携というものがどうしても地域医療の中で必要である。そういう連携がないと、お医者さん1人だけで対応するというのは現実に難しくなってきている。
 開業医の先生は、地域の中小病院に送ると患者さんが長く入院したりして、なかなか在宅に帰ってこないのではないかと心配するということもあり、大きな公立病院に紹介する例が結構多い。しかし、地域の多機能な病院としては、かかりつけ医側のサイドに立って、かかりつけ医が対応できないことは自分たちが対応する。日常的な疾患については全部かかりつけ医が対応してくださいというような、そういう前向きな連携ができると非常にいいと思っている。
 開業医が大きな公立病院に紹介して、1週間ぐらいしてから地域の多機能病院に転院してくる場合も多い。医師会の先生方ともいろいろ相談して、軽度、中度の救急も含めて地域の中である程度は対応できればよいと思っている。現状は絵に描いたようには進んでいないということをお知らせするとともに、その現状を打破するためには連携をうまくやるように、医師会とも病院団体ともよく話し合って対応することが必要だと思う。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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