急性期病院で終末期、「ふさわしくない」 ── 6月27日の定例会見で武久会長

会長メッセージ 協会の活動等

武久洋三会長_20190627記者会見

 日本慢性期医療協会は6月27日、通常総会の後に定例記者会見を開き、終末期の入院医療費について見解を示しました。武久会長は会見で、急性期病院の入院医療費が慢性期病院の倍以上であるとの試算を示した上で、「終末期の患者さんを高度急性期病院や急性期病院に入院させるのは不適切。ただ看取るためだけに高度急性期病院に入院することはふさわしくない」と述べました。

 試算によると、医療療養病床に入院した場合の終末期の医療費は1日約2万8,500円。これに対し、特定機能病院は約7万円で、7対1の急性期病院では4万5,000円以上かかると思われます。

 武久会長は「看取りは痛みや苦しみを取り除き、心安らかな環境で行うもの。自宅、緩和ケア、新しくできた介護医療院等で看取りをするのが適切」との考えを示しました。

 会見の概要は以下のとおりです。会見資料は、日本慢性期医療協会のホームページ(http://jamcf.jp/chairman/2019/chairman190627.html)に掲載しておりますので、ご参照ください。
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20190627記者会見
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終末期医療、「何らかのスタンスを示したほうがいい」

[武久洋三会長]
 今日は年1回の通常総会を開き、会員の先生方にもたくさんご出席いただき、有意義なお話もさせていただいた。先ほど、厚生労働省保険局医療課課長補佐である木下栄作先生から、来年度の診療報酬改定についていろいろなお話を聴かせていただいた。

 毎月、皆さまに記者会見にご参加いただき、大変感謝している。本日は、終末期医療についてお話ししたい。

 終末期医療については、「非常にお金がかかるので保険から外したらどうか」というようなご意見まで出す人もいて、いろいろ物議をかもすこともある。

 日本慢性期医療協会の会員病院では、終末期の患者さんと関わる機会も多いので、日慢協としても、何らかのスタンスをお示ししたほうがよいと考え、本日のテーマとさせていただいた。
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高度急性期病院での看取りは不適切

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 終末期の患者さんが、高度急性期病院や急性期病院で入院、治療をするのは、どちらかといえば不適切である。高度急性期、急性期の病床は治療をして改善させるために利用すべきであろう。

 ただ看取るためだけに高度急性期病院に入院することはふさわしくない。

 看取りは痛みや苦しみを取り除き、心安らかな環境で行うものだ。自宅、緩和ケア、新しくできた介護医療院等で看取りをするのが適切だろうと思っている。

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03_2019.6.27記者会見資料

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医療療養なら3万円弱、高度急性期では6万円以上

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 各病院等でどれぐらい医療費がかかるかを計算してみた。療養病床の20対1の病棟では、医療区分2か3、ターミナルに近い人は間違いなく3になると思う。そうすると、終末期患者の死亡前入院医療費は、医療療養病床で1日約2万8,500円かかってくる。

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04_2019.6.27記者会見資料

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 特定機能病院は6万7,010円だが、これは基礎点数であり、実際にはこれ以上かかる。7対1は4万5,000円以上かかる。10対1も3万円以上かかる。地域包括ケア病棟は3万円ほどかかる。

 緩和ケア病棟では、1カ月目と2カ月目での違いはあるが、およそ5万円近くかかる。Ⅰ型の介護医療院では1万3,000円から1万4,000円ぐらい。介護療養型医療施設は、1万5,000円ぐらいかかる。

 お亡くなりになることが分かっている容体の患者さんに対して積極的治療はしないと言いながら、7対1の特定機能病院に入ると、5、6万円から7、8万円かかることは問題ではないだろうか。

 終末期の状態だと思って急性期病院から慢性期病院に紹介されてくる患者さんは結構いらっしゃるが、慢性期病院での治療によって改善し、軽快退院する患者さんもおられる。その場合、1カ月間の平均で1日2万5,000円ぐらいである。
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改善が可能と判断すれば積極的に治療する

 終末期の患者は、一体どんな患者さんだろうか。終末期については、日本医師会の基準がある。約10年前のものだが、最善の治療を施したとしても死期を免れないような状態であると日本医師会が公式に発表している。最善の治療となると、自信のある病院がどのくらいあるかわからないが、それほど厳密にしているということである。

 それぞれの病院や医師によって、終末期の定義をそれなりに考えていらっしゃるところもあると思う。がんや神経難病以外の終末期患者とは、低栄養・脱水状態がずっと続いている患者、重症感染症、感染症が重積している患者、真性の心不全や腎不全、それから植物状態などが考えられる。

 急性期病院から慢性期病院に終末期患者として紹介される患者さんも結構多い。慢性期病院の側としては、治療によって改善が可能と判断すれば積極的に治療させていただいている。

 臓器別専門医の先生方は、高齢者の低栄養、脱水による虚弱状態は、終末期として捉えがちであるとも聞いている。

 しかし、治療可能で意識のある患者さんに対しては、慢性期医療の現場では「頑張って良くしよう」「必ず良くなって帰ることができる」などと勇気づける。水分や栄養補給を適切に行えば、病状が改善して日常に帰れる人も結構多い。

 特に低栄養・脱水で全身状態不良の高齢者の治療は、高度急性期病院の臓器別専門医よりも地域多機能病院の総合診療専門医による治療がふさわしいと考えている。
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適切に治療して、日常生活に帰る人を多くしたい

 新公立病院改革プランによると、公立・公的病院の病床利用率はどんどん上がっていく予測が立てられている。しかし現実には、その逆になっていることは皆さんもご承知のとおりである。7対1でも入院患者の平均年齢は70歳を超えた。高齢になればターミナルだということでもない。
 
 日本慢性医療協会では、きちんとした病態を把握し、適切に治療して日常生活に帰る人を多くしたい。医療・介護をともに提供している医療機関としては、当然そういう役割を果たすべきだと思っている。

 本当の意味での終末期の場合に、20対1の慢性期治療病棟で治療や看取りをするのが適切かどうかというと、やはり介護医療院、自宅などが適切であると思う。

 現在、終末期に対する議論が錯綜しているため、本日は日慢協としてのスタンスをお示しした。以上である。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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