「処方見直しの事例集に前文を」 ── 厚労省WGで池端副会長

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池端副会長(1月16日の高齢者医薬品適正使用ガイドライン作成WG)

 高齢者医薬品の適正使用に向けた指針について検討している厚生労働省は1月16日のワーキンググループ(WG)で、高齢者の処方見直しの事例集を示しました。患者の生活リズムの変化を踏まえて処方薬を変更するなど8つの実例を掲載しています。日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「非常に参考になる」と評価した上で、「この事例集に前文を付けてはどうか」と提案し、了承されました。

 厚労省は同日、「高齢者医薬品適正使用ガイドライン作成WG」(座長=秋下雅弘・日本老年医学会副理事長、東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座教授)の第7回会合を開き、当協会から池端副会長が構成員として出席しました。

 この日の主な議題は「高齢者の医薬品適正使用の指針(追補)(案)」です。厚労省は同日のWGに、昨年12月25日の前回会合での議論などを反映した修正版を示し、大筋で了承されました。このため厚労省は、25日に開催される予定の親会議(高齢者医薬品適正使用検討会)に示した上で、同検討会での意見などを踏まえて正式に決定する見通しとなっています。
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1月16日の高齢者医薬品適正使用ガイドライン作成WG1

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指針の別添資料に、処方見直しの具体的な8事例

【資料】別添_ページ_05 厚労省は指針の別添資料(別表2)に、処方見直しを実施した具体的な8事例を掲載しました。症例ごとに事例の特徴や療養環境、問題点、患者背景を記載し、処方見直しの内容について介入前と介入後の薬剤例、さらに服薬管理の状況を示しています。経過欄には「介入のきっかけ」「介入のポイント」「介入後の経過」がそれぞれ記載されています。

 症例1は、脳出血後のADL低下に伴い、ふらつき等の薬物有害事象が発現した事例で、ふらつきや低血糖の症状を踏まえて降圧薬や糖尿病薬の減薬を実施した事例が示されています。症例2は、退院後の服薬タイミングを生活リズムに合わせるべく改善した事例。退院後の生活リズムを考慮して1日1回、昼食後の服薬に変更し、残薬が多い薬も中止したケースです。

 症例3は、複数の医療機関からの処方が一元化できていなかった事例。催眠鎮静薬の複数の処方から抗うつ薬への変更等のほか、重複している薬剤の減薬等を実施しています。症例4は、在宅医療における身体状況の変化を踏まえて処方を見直した事例です。骨折により外出できなくなり食欲低下や低血糖の症状が出たため、糖尿病薬と降圧薬の中止を実施しています。症例5は、徐放錠を粉砕したことで薬物有害事象が発現した事例。パーキンソン病の薬を粉砕することで血中濃度が急激に上昇したため意識変容等の薬物有害事象が発現したケースを示しています。

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事例集の経緯や使用法、趣旨などを丁寧に説明を

 
 質疑で、池端副会長は「非常に良い事例を挙げていただき、参考になる」と評価した上で、「この事例集は実例をもとに作成したものか」と質問しました。秋下座長は「モデルはあるが、実例そのものではない。個人情報保護のため実際の症例をモディファイしている」と説明しました。
 
 そこで池端副会長は「実例に基づいているのであれば、前文でそのことを説明すると信憑性が出る。事例集だけを出すのではなくて、事例集を作成した経緯や事例の使用法、趣旨などを丁寧に前文で説明したほうがよい」と提案。これに他の構成員から賛成する意見がありました。
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1月16日の高齢者医薬品適正使用ガイドライン作成WG2

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                          (取材・執筆=新井裕充) 

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