「認知医療院」の創設を提言 ── 4月12日の定例会見

会長メッセージ 協会の活動等 役員メッセージ

01_武久洋三会長_0412会見

 日本慢性期医療協会は4月12日、日本介護医療院協会が発足して最初の定例記者会見を開きました。2日に開催された日本介護医療院協会の設立記念シンポジウムへの御礼を申し上げるとともに、介護医療院への転換事務手続きの迅速化を要請。武久洋三会長は「介護医療院をベストな施設にするために、日本介護医療院協会と共にベストを尽くす」と述べ、急増する認知症患者に対応するため、認知症型の介護医療院として「認知医療院」の創設を提言しました。
 
 同日の会見には、池端幸彦副会長が同席。冒頭で、「加藤勝信厚生労働大臣、厚生労働省の鈴木康裕医務技監、日本医師会の横倉義武会長をはじめ、各界、各方面から多くのご高名な方々にご参加いただいた。心から感謝を申し上げる」と謝意を示しました。その上で、日本介護医療院協会の理念として「利用者の尊厳の保障」「地域貢献」などを示し、「全国の介護医療院が地域包括ケアシステムの中において、なくてはならない位置づけとなるように育んでまいりたい」と抱負を述べました。
 
 続いて武久会長は、療養病棟入院料2(看護配置25対1)が2年後に廃止されることに言及し、「できるだけ速やかに療養病棟入院料1に移行するか、あるいは介護医療院に転換できるように会員に努力を促していきたい」との意向を表明。一般病床と療養病床との格差是正の必要性も指摘しました。
 
 武久会長は最後に、日本介護医療院協会の今後の展望などを語り、「認知症患者がやがて700万人にも及ぶとされる近未来において、病院内ではあるが病床ではない介護施設として、認知症型の介護医療院、すなわち『認知医療院』を検討してはどうか。日本精神科病院協会と認知症への対応について協調していきたい」と述べました。

 以下、同日の会見要旨をお伝えいたします。会見資料は、日本慢性期医療協会のホームページ(http://jamcf.jp/chairman/2018/chairman180412.html)に掲載しておりますので、こちらをご参照ください。
 

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同時改定の影響、「3カ月後にはデータを出したい」

[池端幸彦副会長]
 平成30年度第1回の記者会見を始めさせていただく。

[武久洋三会長]
 4月に入った。同時改定の結果がどうなっていくか。今回、いろいろな変更があった。これが現場にどのような影響を与えるかを考えることは非常に重要なことだと思う。じっくりと検討して、3カ月後ぐらいにはいろいろなデータを出していきたいと思う。まだ変わったばかりということもあるので、本日は同時改定に関する話題は少なくして、別の課題をお示ししたい。

 先ほど開催された当協会の理事会には40名以上の参加があった。平成30年度第1回の理事会として、皆さんのご意見も非常に活発で、いろいろな議論があった。それも本日の話題に含ませていただいた。

 配布資料をご覧いただきたい。本日のテーマは1番から5番までの5項目。このうち1と2については、池端先生からご報告させていただく。

【4月12日の記者会見の内容】

 1.「日本介護医療院協会設立シンポジウム」の御礼

 2.介護医療院への転換事務手続きの迅速化のお願い

 3.療養病棟入院基本料2(看護配置25対1)について

 4.一般病床における長期入院患者への特別措置について

 5.認知症患者と介護医療院について

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介護医療院、「尊厳の保障」を理念に育む

[池端副会長]
02_池端幸彦副会長_0412会見 日本介護医療院協会の設立シンポジウムと祝賀会を4月2日に開催させていただいた。本当にたくさんの方々のご参加をいただいた。加藤勝信厚生労働大臣、厚生労働省の鈴木康裕医務技監、日本医師会の横倉義武会長をはじめ、各界、各方面から多くのご高名な方々にご参加いただいた。心から感謝を申し上げる。

 新たなモデルとして介護医療院が誕生した。これから介護医療院がどう発展していくか、非常に注目されるところである。シンポジウムでは、日本介護医療院協会の江澤和彦会長が介護医療院の理念を示した。

 すなわち、日本介護医療院協会は「利用者の尊厳の保障」「自立支援を念頭に置いたサービス」「必要かつ良質の療養の提供」「潤いある生活感あふれるサービス」「開かれた交流施設としての地域貢献」などを掲げ、全国の介護医療院が地域包括ケアシステムの中において、なくてはならない位置づけとなるように育んでまいりたいと思う。引き続き、皆さまのご指導とご鞭撻をよろしくお願いしたい。

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介護医療院への転換事務手続きの迅速化を

 続いて、介護医療院への転換事務手続きの迅速化についてお願いしたい。介護医療院への転換がすでに4月1日から行われる予定であるが、条例の制定手続が必要であるなどの理由で都道府県によって対応に差がある。

 都道府県によっては6月以降というケースもあると聞いている。各都道府県で直ちに転換の受付ができるよう準備を進めてほしい。厚生労働省老健局老人保健課からもご指導をいただき、なるべくスムーズに転換が進むようにご協力をいただきたい。

 以上、簡単ではあるが、介護医療院に関するご報告をさせていただいた。

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03_武久洋三会長_0412会見
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介護医療院に転換できるよう努力を促す

[武久会長]
 では、療養病棟入院料2(看護配置25対1)について意見を述べたい。平成30年度改定により、療養病床は20対1に一本化された。5ページをご覧いただきたい。

スライド5会見資料

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 真ん中に、経過措置の1、2があり、それぞれに点数が付いている。この経過措置は2年間のため、平成32年3月末に25対1はなくなる。日本慢性期医療協会での会員の状況を見ると、2年前のデータで25対1は20%を切っている。現在はもっと減少していると思う。

 療養病棟入院料2の経過措置は2年であるが、できるだけ速やかに療養病棟入院料1に移行するか、あるいは介護医療院に転換できるように会員に努力を促していきたい。

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一般病床の90日超患者、「療養病棟入院料1はおかしい」

 次に、一般病床における長期入院患者への特別措置について述べる。療養病床と一般病床には似たような状態の患者さんがいるので、これらの整合性をいかに考えるかという点についてお話ししたい。

 療養病床については、今回の改定で療養病棟入院料1に絞られた。医療必要度の高い「医療区分2・3」の患者割合が8割以上でなければ、療養病床としては認めないという強い決意のようである。すなわち、療養病床のあるべき姿として、「慢性期医療は慢性期治療病棟しか認めない」という強い意向を感じている。

 ところが、一般病床の入院患者には、90日以上の長期にわたって入院している患者さんが依然として多い。同じような病歴・病状・病態の患者さんには平等な保険医療が提供されるべきであると考えるが、一般病床の長期入院患者は平均在院日数に算定しなくていいという特別な措置がある。14ページをご覧いただきたい。

スライド14会見資料

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 イの所だが、「療養病棟入院料1の例により算定する」とある。すなわち、90日を超えて入院する患者については、療養病棟入院料1を請求してくださいという。

 ところが、一般病床の中にはいまだに4.3㎡/人で6人部屋も多く含まれている。療養病床のハードの基準である6.4㎡/人を満たしていない病床であるにもかかわらず、療養病棟入院料1で算定できる。これは、基本的なところが間違っているのではないか。療養病床は6.4㎡/人の4人部屋となっているので矛盾している。17ページをご覧いただきたい。

スライド17会見資料

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 一般病床でも療養病床でも、病床面積は現在6.4㎡/人となっている。一般病床では5人以上でも可になっているが、療養病床では、6.4㎡/人で4人部屋までということは決まっている。

 18ページをご覧いただきたい。療養病棟入院料1と2の内容である。右端が療養病棟入院料1である。

スライド18会見資料

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 一般病床に90日を超えて入院する患者について、この療養病棟入院料1を適用するのは明らかにおかしい。むしろ特別入院基本料を適用すべきでないか。一般病床で現在の病床の基準を満たしていない病棟における長期入院患者には、特別入院基本料を適用すべきと考える。

 一般病棟特別入院基本料は、一般病棟において、看護配置、看護師比率、平均在院日数その他の事項につき、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合していない場合は、当分の間、地方厚生局長等に届け出た場合に限り、当該病棟に入院している患者については、特別入院基本料として584点を算定できる。

 これで算定するのが、基準からいうと当たり前であるのに、4.3㎡/人の6人部屋、8人部屋であるのに、療養病棟入院料1を適用するのは明らかにおかしい。

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「認知医療院」の創設を検討してはどうか

 最後に、認知症患者と介護医療院について述べたい。われわれ日本慢性期医療協会は、介護医療院をベストな施設にするために、日本介護医療院協会と共にベストを尽くす。介護医療院は、短期入院にも中長期入院にも対応する。積極的治療も当然OKで、ターミナルにも対応する。在宅復帰機能もショートステイ機能も果たす。地域に望まれる機能を取りそろえていきたいと思っている。日本介護医療院協会は、来年早々に日本介護医療院学会の開催を計画している。

 介護医療院の発足は時宜にかなったものであり、まさに適正であると思う。一方、認知症の中等度・高度な患者は、精神科病院や介護保険施設にも多く入院している。認知症の病状が安定している患者には、認知症専門の介護医療院が必要ではないかと私たちは思っている。

 認知症患者がやがて700万人にも及ぶとされる近未来において、病院内ではあるが病床ではない介護施設として、認知症型の介護医療院、すなわち「認知医療院」を検討してはどうかと思う。

 日本慢性期医療協会は、日本精神科病院協会と協力して、認知医療院の創設など認知症への対応について相談しながら、協調していきたいと思う。以上である。

                           (取材・執筆=新井裕充)

 

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