「急性期病院と慢性期病院の融合を」──5月15日の記者会見

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5月15日の記者会見1

 「急性期から地域包括ケア病棟に参入する病院と、慢性期から地域包括ケア病棟に参入する病院との融合というものを行いたい」──。5月15日、地域包括ケア病棟協会が発足しました。設立総会後の記者会見で、発起人である日本慢性期医療協会の武久洋三会長は冒頭のように述べ、各種団体に所属する病院が横断的に参加して互いに切磋琢磨していく必要性を語りました。

 会見では、武久会長が設立趣旨を述べ、続いて地域包括ケア病棟協会の会長に就任した仲井培雄先生が今後の抱負を語りました。武久会長と仲井会長の発言要旨は以下のとおりです。
 

○ 武久会長
 本日、地域包括ケア病棟協会が発足しました。現在、日本病院会や全日本病院協会、日本医療法人協会、日本医師会など各種の団体があります。地域包括ケア病棟は、そうした団体のどこに所属する病院でも算定できる病棟であると思っています。したがって、地域包括ケア病棟を持っている、または持とうとする病院が横断的に参加する協会ということです。類似の団体として、回復期リハビリテーション病棟協会などがあります。病棟種別的に、その病棟のレベルをいかに上げていくかを考える団体です。

武久会長 今回の改定で、地域包括ケア病棟が新設されましたので、同病棟がいかなる役割を果たし、どのような機能を担うのべきかを共通の課題として勉強する協会がどうしても必要だと考えました。そこで、本日の協会設立となったわけです。

 協会長には仲井先生になっていただきました。仲井先生は日慢協の理事を務めていますが、地域包括ケア病棟協会は日慢協とはまったく違う組織です。最初、発足する時点では事務局がありませんので、ここを借りていますが、会員が多くなれば当然、単独の事務所にして、単独の会になります。

 各病院が地域包括ケア病棟を持つ場合でも、その病院が所属している団体は全日本病院協会や日本病院会、全国自治体病院協議会などいろいろでしょう。そういう所属団体を横断した地域包括ケア病棟協会ということです。

 現在、急性期病院から地域包括ケア病棟を取ろうという動きと、慢性期医療のほうから地域包括ケア病棟を取ろうという動きと、二通りあります。しかし、地域包括ケア病棟について、急性期から来る場合と、慢性期から行く場合とのマインドが違っていては、改革の趣旨に合わないわけです。したがって、この2つの流れをうまく統一していく必要があります。

 厚労省は、地域包括ケアシステムの今後の展開を考えたうえで地域包括ケア病棟をつくられたと思いますが、現在はまだ「地域包括ケア」という名前だけがあるにすぎません。この病棟が今後どう発展していくか。今回の改定を担った当事者として、非常に気になるところだと思います。

 地域包括ケア病棟について統一した考え方を持ち、ポストアキュートやサブアキュートの患者さんを積極的に受け入れ、最大2カ月までリハビリテーションをしてご自宅に戻していく。そのためにわれわれは何をすべきか、共通の課題があります。

 亜急性期病棟は今年の9月で廃止されます。これまで亜急性期病棟は、7対1の急性期病棟での平均在院日数ではとても無理な患者さんを単に収容していたにすぎません。厚労省の調査によって、亜急性期病棟には非常に軽い患者さんがたくさんいたということが判明し、今回の廃止につながったと思います。

 ですから、この地域包括ケア病棟ができたとしても、そこで行われる医療が非常に貧弱では同様の結果になるでしょう。リハビリも、基準ギリギリの2単位しかしないということではいけない。「地域包括ケア病棟を持つ病院は真面目にやっていない」ということにならないように、この協会があるわけです。皆さんが思っているよりも、さらに高度な地域包括ケア病棟をつくっていくということが、この地域包括ケア病棟協会のベクトルになると私は思っております。

 発起人である私は、日本慢性期医療協会のほかにも、様々な団体に所属しておりますし、ほかの先生方も同様です。そうしたなかで思うことは、慢性期医療の側から光を当てるよりも、むしろ急性期の医療を積極的にやっている所が中心になっていくということです。

 各地域のなかで、在宅医療の後方支援を担うとともに、急性期医療も積極的にやっている病院です。回復期リハにも力を入れ、慢性期病棟も持ち、地域包括的なケアをしている病院。すなわち、地域における住民本位の医療センターです。いわば「大規模な医療福祉センター的な病院」を各地域につくることが、今回の改定の目玉でないかと思っております。

 地域包括ケア病棟は、遠く離れた地域に住む患者さんが評判を聞きつけて集まるような病棟ではありません。あくまでも、その地域の住民が在宅に復帰するために機能する病棟です。

 地域包括ケア病棟は、高度急性期の病院も取ります。500床以上で7対1の高度急性期と言われる病院もどんどん取りにくる。その一方で、療養病床を中心に慢性期医療にずっと取り組んできた病院も地域包括ケア病棟を取る。両者は、医師や看護師の経験も違います。互いに情報を共有しながら切磋琢磨して、共通の病棟をつくっていきたいと思います。

 急性期病院から地域包括ケア病棟に来る場合には、リハビリなどケアのレベルが慢性期や回復期の病院より低いかもしれません。そうしたケアの分野では、慢性期病院が急性期病院に提示できるものがあるでしょう。お互いにカバーし合いながら、「理想的な地域包括ケア病棟像」というものをつくっていくための協会であると、ご理解していただきたいと思います。

 まとめますと、急性期病院や慢性期病院など、様々な病院間の橋渡しができればいいと考えて、この協会ができました。したがって、この協会は日本慢性期医療協会に属するものではなく、独立した協会です。協会長として、私がお願いいたしました仲井先生は、かつては 消化器外科医として手術もどんどんやって、高度急性期病院の医療もやって、へき地医療をはじめ、在宅医療の後方支援的な経験も豊富です。急性期医療と慢性期医療の双方を経験しておられますので、会長として適任であると思いました。

 それでは続いて、仲井会長から設立の趣旨などをご説明していただきます。よろしくお願いいたします。
 

○ 仲井会長
 皆さん、本日はお忙しいところを集まっていただきまして、どうもありがとうございます。無事に設立総会が終わりまして、座談会も終えることができました。まずは御礼 申し上げます。

仲井培雄会長(芳珠記念病院理事長) 今日の設立総会で協会長を拝任いたしました。私はもともと消化器外科医でしたが、へき地医療や海外での経験があります。日本の国や 医療制度について興味を持つ目ができましたし、愛情を持って接することができるようになったと思います。

 地域包括ケア病棟は いろんなことがすべて包括になっています。診療報酬の包括だけではなく、ケアもキュアも包括です。効率化も医療の質も、様々な意味で包括である病棟だと思っております。

 救急搬送された病院で対応できないような疾患の 場合、遠くの救命救急センターに運ばれ、その後、なかなか帰ってこられないケースがあります。あるいは、救命救急センター近くの介護施設に移り、住み慣れた地域から離れた場所で長く過ごすというようなことが、我々の地域でもすでに起こっています。しかし、やはり自分の住み慣れた所でずっと暮らせるようにしていくのが、私たちの役割ではないかと思います。ポストアキュートは 地域包括ケア病棟の機能の1つであると考えます。

 それから、在宅患者さんらが急変した場合に受け入れるサブアキュートの機能もあります。当院は7対1病棟も持っておりますので、地域包括ケア病棟も同時に持つ場合、地域包括ケア病棟がどの程度、サブアキュートの患者さんを受け入れるべきなのかが問題になります。恐らく、地域の特性や病院の機能 、ケースの重症度等 によってサブアキュートの患者を受ける場合の条件は変わってくるのではないかと考えています。

 今回の改定で私が一番感じたのは、「病院はもはやダムではない」ということです。「非常に幅の狭い急流」に変わったのではないかと思います。今後、各病院では、在宅復帰のオペレーションが大変になることは目に見えています。

 ただ、それによって早く在宅に帰られる患者さんがいても、その人たちに不利益がないように、在宅のケアもきちんとしなければいけません。本当にいろいろなことを考えなければいけないのが、地域“包括” ケア病棟だと思います。 

 今後も、いろいろな地域 でいろんなことが起こるでしょう。これまでは、 地域のなかで、自分たちの病院がどう取り組むかは 、周辺の病院を見て、なんとなく「これだ」と思って決めていました。しかし、これからはもう、それはできなくなると思います。地域医療ビジョンの策定もそうですが、周りの病院と相談しながら自院の方向性を考えないと 、自院の事業計画すら立てられない状況 に陥るだろうと思います。

 地域包括ケア病棟協会の役割は本当に大きいと思います。様々な病院群があるなか、どうしたら少しでも地域の人の役に立てるかを考えて 、皆さんと一緒に地域包括ケア病棟協会を進めていきたいと思います。

 私自身、これから本当にいろんなことを勉強しなくてはいけません。情報発信もしていかなくてはいけません。本日、お越しになった皆さんから、いろいろ教えていただかなくてはいけないことも多々あると思いますが、これからもどうぞよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。
 

○ 武久会長
 先ほど、急性期から地域包括ケア病棟に参入する病院と、慢性期から地域包括ケア病棟に参入する病院との融合というものを、この協会が行いたいと申し上げました。このたび協会が設立されましたので、明日から全国の高度急性期病院、急性期病院、公的病院、公立病院も含めて、入会案内をお送りします。

 できるだけ多くの皆さまに集まっていただき、融合していくということです。慢性期側が強いような要素もあるし、急性期側が得意な要素もあるでしょう。様々な患者さんを、ともに協力して診ていくため、診療技術や運営方法なども融合させていかなければいけない。

 8月2日には、地域包括ケア病棟の看護実践講座を開催いたします。「高齢者救急の実際」や「術後看護」、「リハビリテーション看護」、「在宅に必要な地域連携」のほか、地域包括ケア病棟に必要な医療材料の紹介や解説などを予定しています。このように、急性期側のスタッフが得意なところ、また慢性期側のスタッフが得意なところを、それぞれ2つずつぐらい選んで、看護の研修会をやる予定です。私からは以上でございます。
 

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