在宅での看取り、病院の役割は?

役員メッセージ

日本の風景-085

3. 山田智子氏(山口県・光風園病院病棟科長)

 光風園病院も長年、終末期医療・看護等にチームで熱心に取り組んでいる病院である。

 山田氏は医療療養病棟(60床)の看護師長である。私の記憶が正しければ、医療療養病棟の在院日数は664日といわれた。しかし、死亡された方は14か月で60床中28名であり、かなり多い数であった。

 ・ 事例1 : 90歳代、胃ろう希望、職員と家族で丁寧に看取った。

 ・ 事例2 : 80歳代、特別養護老人ホームから救急で入院。緩和的に看取った。

 ・ 事例3 : 多系統萎縮の事例。

 山田氏の温かいお人柄が表われ、日常の看護が見えてくるようなよい発表であった。

4. 蛸島八重子氏(北海道・北海道難病ネットワーク連絡協議会、難病医療専門員・看護師、北海道医療センター所属)

 神経難病はがん、高齢者(認知症)、救急、小児とともに5つの終末期医療の対象カテゴリーの一つである。

 日本慢性期医療協会の会員病院でも、高齢者(認知症)と高齢者のがんに次いで、神経難病の終末期に相対することも少なくないのではなかろうか。

 なお、蛸島氏の前職は定山渓病院の看護師長である。

 神経難病、特に、もっとも進行が早い筋萎縮性側索硬化症(ALS)の相談が多いようであった。診断はついたが、病気・病状がどうなっていくか等の相談は、北海道医療センター内の難病相談外来(週1件、予約制)を紹介、神経内科医師が丁寧に説明するという。蛸島氏はそのつなぎ役や同席も行っている。

 蛸島氏の発表を通し、難病の患者・ご家族の相談内容の多様さと氏のご苦労を知った。慢性期医療を担当する病院は今後、このような神経難病の方の入院相談にも十分対応していくことが求められよう。

5. 桑名斉先生(東京都・信愛病院院長)

 高齢者の終末期医療を考えるとき、「胃ろう」の問題は避けて通ることができない大きな課題である。

 老人の専門医療を考える会の第35回シンポジウム「胃ろうの現状と課題」が2011年5月14日、東京で開催された。その際、シンポジウムの座長を担当された桑名斉先生に、そのシンポジウムの内容の一部をご報告していただいた。

 この5月のシンポジウムのシンポジストとテーマは、「有益か否かで適応基準を判断」(山下晋矢・永生病院医師)、「患者家族の意思決定プロセスに寄り添う」(中島朋子・東久留米白十字訪問看護ステーション看護師)、「老衰には不適応」(石飛幸三・特別養護老人ホーム芦花ホーム医師)、「何のために生きるか、誰のための人生かに基づいた判断」(池田誠・NHK報道局社会部記者)であった。

 その中で、「日本では諸外国に比べて、一度胃ろうを造設したら中断する選択肢はない。法律が整備されていない」との指摘があった。

 全日本病院協会の調査(2011年3月)では、胃ろう造設決定の72~84%が「家族の意思」であること、そのうち、「造設してよかったと考える家族」は53~71%、「何ともいえない」40%、「よくなかった」2.7%であったという。

 私の突然の申し出に対して快諾され、貴重なお話をいただいた桑名先生に感謝したい。
 

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