第38回通常総会のご報告
日本慢性期医療協会は6月21日に第38回通常総会を開き、平成24年度の事業報告書、決算報告書などを承認しました。武久洋三会長は、「慢性期医療の重要性はどんどん増大している。責務に応えるためにも、慢性期医療の重要性や必要性を声高らかに叫び続けていきたい。良質な慢性期医療がなければ日本の医療は成り立たない」と挨拶、今後も引き続き慢性期医療の質向上に向けて取り組む姿勢を示しました。
武久会長は冒頭、平成24年度診療報酬改定を振り返り、「回復期リハビリテーション病棟入院料1が新設されたことは良かったが、算定日数の上限を超えた維持期リハが平成26年4月から医療保険の適用から外れることになり危機感を覚えた。治る見込みが低い患者さんにリハビリをしなくてもいいのか」と問題視しました(関連記事=5月8日の定例会見)。
そのうえで、慢性期リハビリテーションの重要性や必要性を訴えるため「慢性期リハビリテーション協会」を発足するに至ったことを説明、「慢性期リハが無視される状況を日本慢性期医療協会として座視するわけにはいかない」と強調しました。
武久会長は今後の超高齢社会に向けた慢性期医療の重要性を訴え、急性期と慢性期の円滑な連携を目指す「日本長期急性期病床(LTAC)研究会」の発足や、在宅医療の質向上に取り組む「在宅医療認定医講座」、リハビリスタッフのキャリアアップにつながる「総合リハビリテーション療法士」の提唱など慢性期医療の質向上に向けた取り組みを紹介。「木下毅会長から引き継いで5年経った。まだ任期が1年残っているが、慢性期医療の重要性はどんどん増大している」として、今後もさらに慢性期医療の重要性や必要性を訴えていく方針を確認しました。
■ 「慢性期や障害者のリハビリに目を向けてほしい」
「慢性期医療におけるリハビリテーションの役割は非常に大きい」──。慢性期リハビリテーションについて武久会長は、「回復期リハビリテーション病棟入院料1を新設する(財源を確保する)ために慢性期の維持期リハを犠牲にしたと思う人もいるかもしれない。では、慢性期リハビリテーションは不要なのか? 障害者のリハビリテーションは要らないのか?」と問いかけました。
そのうえで武久会長は、「どこの団体が慢性期リハビリテーションの必要性を声高らかに述べ、慢性期リハの廃止を止めてくれるのだろうかと、私は1年間待っていた。しかし、誰も何も言ってくれない。慢性期リハビリテーションの必要性や重要性を主張するのは、やはりこの日本慢性期医療協会ではないか。2014年度診療報酬改定の方向性が今夏に決まるという切羽詰まった段階にある。13単位を死守する」と訴え、7月11日に「慢性期リハビリテーション協会」の設立準備会を開催することを報告しました。
また、障害者へのリハビリテーションについても「侵されようとしている」と危機感を表し、「難病で死んでしまう人にリハビリが必要かどうか、などと言い出したら医療は成立しない。慢性期や障害者のリハビリに関する査定が一部の県では非常に厳しいと聞く。『80歳の高齢者になぜリハビリをするのか』などと言われて減点される。これでは、PTやOTらの努力が報われない」と語気を強めました。
新設する「慢性期リハビリテーション協会」について武久会長は、「現在あるリハビリ団体に歯向かうつもりは全くない。慢性期や障害者のリハビリテーションについて、もう少し目を向けてほしいという思いで設立する。設立した暁には、リハビリ関連の9団体に加えてもらい、リハビリ10団体にしていただくよう、我々から申し込みたいと考えている」と理解を求めました。
■ 「良質な慢性期医療がなければ日本の医療は成り立たない」
武久会長はまた、ケアミックス型病院で「一般病床」と「療養病床」の間を患者が移動する“キャッチボール”問題を例に挙げ、「優秀な医師を『一般病床』に配置する一方で、レベルが劣る医師を『療養病床』に配置している病院もある。院長自ら自分の病院の『療養病床』をレベルが低い病床であると思いこんでいるふしがあるが、とんでもない」と指摘、意識改革を求めました。
日本慢性期医療協会は平成4年に「介護力強化病院連絡協議会」として設立、超高齢社会の到来を見据えて慢性期医療の質向上に努め、昨年20周年を迎えました。会員数は現在も増え続けています。武久会長は「小さな協会ではあるが、4月以降に17病院が加入し、ついに1,100を超えた。私が会長を引き継いでから400会員が増え、皆様には大変感謝している」と謝意を示し、「責務に応えるためにも、慢性期医療の重要性や必要性を声高らかに叫び続けていきたい。良質な慢性期医療がなければ日本の医療は成り立たない」と締めくくりました。
この記事を印刷する
2013年6月22日