介護文書の軽減、「勘違いがある」 ── 社保審の委員会で橋本会長
介護文書の負担軽減に関する会合で、日本慢性期医療協会の橋本康子会長は押印の見直しによる簡素化に触れながら、「現場の事業所に勘違いがある。利用者との契約に必要なサインも不要と思われている」と指摘し、明確化して現場に周知すべきと提案した。
厚生労働省は４月17日、社会保障審議会（社保審）介護保険部会の下に設置された「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」の第14回会合をオンライン形式で開き、当会から橋本会長が委員として出席した。
本委員会の開催は昨年10月の取りまとめ以来、約半年ぶり。厚労省は同日の会合に「介護分野の文書に係る負担軽減の取組の進捗について」と題する資料を示し、自治体の取り組み状況などを報告した。
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電子システム、2024年度中に６割
厚労省は今年３月、取りまとめを踏まえた関係省令等の改正を全国の自治体に通知するなど、国が示している標準様式の使用などが各自治体に浸透するよう努めている。
厚労省がこの日の会合で示した調査結果によると、介護事業者が自治体に申請する際に用いる「電子申請・届出システム」の利用開始は今年から来年にかけて多く、2024年度の下半期には６割以上で開始される見通し。
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様式の修正など「独自ルールが残っている」
厚労省の委託調査によると、総合事業の指定申請等について、国が作成した「すべての様式例を利用している」と回答した自治体は全体の約６割だった。
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加算の届出に係る様式例については、約９割が「すべての様式例を利用している」と回答した。
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しかし、「すべての様式例を、修正を加えずに利用している」と回答した自治体は、総合事業の指定申請では３割、加算の届出では６割程度にとどまっている。
質疑で、岩澤由子委員（日本看護協会医療政策部長）は「着実に取り組みが進んでいる」と評価しながらも、「様式例を一部改変するなど独自ルールがまだ残っている状況が見られる」と指摘。今後に向けて「どこまでをやむを得ないと考えていくのか、その整理も必要ではないか」と述べた。
一方、橋本会長は押印廃止を例に挙げながら、現場への周知をさらに進めるよう提案。野口晴子委員長（早稲田大学政治経済学術院教授）も理解を示した。橋本会長の質疑の模様は以下のとおり。
【橋本康子会長】
進捗状況等について非常に簡潔にわかりやすくまとめていただいたことに感謝している。ただ、事業所と利用者間のサインやフォーマットに関する質問が多く寄せられている点を指摘しておきたい。
例えば21ページや22ページで説明いただいた地域の独自ルールについて、これまで議論されたことやまとめられたことがホームページに掲載されている。私たちは何年にもわたって文書負担軽減の取り組みに関する会議に参加しているので十分理解している。ホームページに掲載されている内容は、市や国などの行政と事業所の間の文書負担軽減に関する問題であることを認識している。
しかし、現場の事業所の方々は勘違いされているようだ。今後も厚労省のホームページに掲載される内容を見ると思うが、すでに私たちのほうに問い合わせが寄せられており、「押印が簡素化されるなら、今後サインはどうなるのか」との質問も出ている。
サインは事業所と利用者間の契約事項に関連する場合に多く、サインが必要である場面が存在する。しかし、私たちがこの会議で話し合っているのは行政と事業所間の問題であり、この点がホームページなどを見た事業所の方々に誤解されているように思う。そのため、押印の廃止など介護分野の文書に関する負担軽減の取り組みは行政と事業者間の取り決めに関する議論であることを明記したほうがいいのではないか。
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【野口晴子委員長】
実はその問い合わせが多く寄せられている。これはあくまでも「官民」であるということをもう少し明記しなければならないということは、おっしゃるとおりだと思う。事務局、今のご意見に対していかがだろうか。
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【厚労省老健局介護保険計画課・日野力課長】
ご指摘の点はおっしゃるとおり。この専門委員会では、基本的に行政と事業所の間をメインフィールドで議論していただいているので、そうした点がわかるように工夫したい。
（取材・執筆＝新井裕充）
2023年4月18日