看護必要度の見直し、「かなりの劇薬、毒薬」 ── 池端副会長、影響に危機感

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池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)_2022年1月14日の中医協総会

 令和4年度改定に向けた「議論の整理」をまとめた厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は重症度、医療・看護必要度の見直しについて「かなりの劇薬で、さらに副作用の強い毒薬になって地域医療の崩壊につながる」との危機感を表し、「詳しい分析も含めて、より丁寧な議論を」と求めた。

 厚労省は1月14日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第510回会合をオンライン形式で開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。

 厚労省は前回12日に示した「議論の整理(案)」を一部修正して再提示し、了承を得た。これを踏まえパブリックコメントを実施し、1週間後の21日にオンラインで公聴会を開催する予定。

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「それぞれの役割」を削除

 今回、修正されたのは地域包括ケア病棟に関するP4(16)の記載。前回会合では「一般病床及び療養病床の入院患者の特性の違いを踏まえ、それぞれの役割に応じた医療の提供を推進する観点から、地域包括ケア病棟入院料の要件及び評価の在り方を見直す」としていたが、このうち「それぞれの役割に応じた医療の提供を推進する観点から」を削除した。

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01スライドP4_【総-3】これまでの議論の整理(案)_2022年1月14日の中医協総会

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 前回会合で、池端副会長は「一般病床と療養病床はそれぞれ違う役割の地域包括ケア病棟だというように読める」と指摘。厚労省保険局医療課の井内努課長は「(地域包括ケア病棟に)『求められる』という意味では、(一般病床と療養病床に)違いはない」と理解を示していた。

 ただ、一般病床と療養病床の患者像について井内課長は「一定程度、違いがあった」としており、「一般病床及び療養病床の入院患者の特性の違いを踏まえ」との記載は残されている。

 このほか、今回修正されたのはP15の(3)で、「放射線治療病室加算」を「放射線治療病室管理加算」に訂正した。記者ブリーフィングで厚労省の担当者は「誤植があった。『管理』という言葉が抜けていた」と説明した。主な修正点は、これらの2箇所。

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02スライドP15_【総-3】これまでの議論の整理(案)_2022年1月14日の中医協総会

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地域医療の崩壊につながる

 質疑で、池端副会長は修文に謝意を示した上で、重症度、医療・看護必要度に関する記載に言及。「前回の総会で示していただいたシミュレーションの資料を見る限り、かなりの劇薬になる可能性が高い」と地域医療への影響を懸念した。

 今回の「議論の整理(案)」では、「急性期入院医療の必要性に応じた適切な評価を行う」とした上で、「必要度の判定に係る評価項目を見直す」「入院料について評価の在り方を見直す」としている。

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03スライドP3_【総-3】これまでの議論の整理(案)_2022年1月14日の中医協総会

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 池端副会長は「これがさらに副作用の強い毒薬になってしまい、地域医療の提供体制の一部崩壊につながる危惧がある」とし、「さらなる詳しい分析も含めて、より丁寧な議論を進めてほしい」と求めた。

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2022年1月14日の中医協総会

【池端副会長の発言要旨】
 資料(16)の地域包括ケア病棟における一般病床と療養病床の違いについての文章について、私の発言をおくみ取りいただき修文いただいことに心から感謝申し上げる。
 その上で、1点だけ、決して修文を求めるものではないが、この場を借りてコメントさせていただきたい。 
 (3)(4)にある重症度、医療・看護必要度の議論について、この議論の整理については了解しているが、前回の総会でお示しいただいたシミュレーションの資料を見る限り、かなりの劇薬になる可能性が高いという印象を持っている。これがさらに副作用の強い毒薬になってしまい、地域医療の提供体制に対して一部崩壊につながるようなことになってしまう危惧もされるところである。
 もちろん、2号側としても病院の機能分化、連携の重要性については十分理解しているつもりではあるが、事務局におかれては、項目の変更や重症度基準の変更も視野に入れた、さらなる詳しい分析も含めて、より丁寧な議論が進められるよう要望したいと思う。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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