「私費のリハビリ施設が全国あちこちに」 ── 11月21日の医療保険部会で武久会長

会長メッセージ 協会の活動等 審議会

武久洋三参考人(日本慢性期医療協会会長)3_20191121医療保険部会

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長は11月21日、令和2年度診療報酬改定の基本方針について審議した厚生労働省の会議で、「完全な私費のリハビリ施設が全国であちらこちらに出現している」と問題点を指摘した上で、質の高いリハビリテーションを進める必要性を強調した。

 厚労省は同日、社会保障審議会(社保審)の医療保険部会(部会長=遠藤久夫・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第121回会合を開き、「令和2年度診療報酬改定の基本方針(骨子案)」を示した。

 骨子案では、「医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進」を重点課題としたほか、視点の2つ目に「患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現」を位置付け、その中で「アウトカムにも着目した評価の推進」を挙げた。

 具体的には、「質の高いリハビリテーションの評価をはじめとして、アウトカムに着目した評価を推進」としている。
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事務局_20191121医療保険部会
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リハビリに対するスタンスに注目

 同部会に池端幸彦委員の代理として出席した武久会長は質疑で、骨子案に示された「アウトカムに着目した評価」に言及。「リハビリテーションが非常に重要だということを担当課が認めていることだと思う」と評価した。

 その上で武久会長は「現在、訪問看護ステーションでの訪問リハの問題や、完全な私費のリハビリ施設が全国であちらこちらに出現している」と課題を挙げ、「リハビリに対するスタンスが注目を浴びている」との認識を示した。

 武久会長は「これまでただマッサージを20分間しているだけでも点数が付けられていたリハビリについて、患者さんが良くなったというアウトカムに特に注目していることだと思う」と骨子案の方向性に賛同した上で、「この点について、もう少しご説明いただきたい」と求めた。
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武久洋三参考人(日本慢性期医療協会会長)2_20191121医療保険部会
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リハビリのアウトカムも評価していく

 厚労省保険局医療介護連携政策課の山下護課長は「おっしゃるように、やはり評価というのは大切で、ストラクチャーとプロセスだけで評価するとなると、例えばやればやるだけ点数が付くという話になってしまうが、そうではなく、やはりストラクチャーとプロセスだけではなくて、当然、アウトカムにも着目して評価をしていかなければいけない」との認識を示した。

 その上で山下課長は「そのアウトカム評価するために、それなりの評価の内容をつくっていかなければいけない」との見解を提示。「リハビリテーションについても科学的なアウトカムの方法がある程度、出てきたということもあり、平成30年度改定ではこういった質の高いリハビリテーションの評価をはじめとして、アウトカムに着目した評価の推進を基本方針に書いており、それを受けて、今回の令和2年度改定(骨子案)でも同様に示している」と説明した。

 今後の議論について山下課長は「中医協でも、これが反映されてリハビリのアウトカムも評価していくことにつながるだろうと理解している」と期待を込めた。
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厚労省保険局医療介護連携政策課・山下護課長_20191121医療保険部会
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地域包括ケアの推進は「変わらない」

 武久会長はまた、前回の平成30年度改定と次期改定の基本方針との違いについて説明を求めた。

 山下課長は「前回と変わったことと言えば、労働基準法の改正により、2024年度から医師の時間外労働の上限規制などが始まることが固まったので、それにあわせての見直しがなされた」とし、医師等の働き方改革の推進を重点項目に位置付けた趣旨を説明した。

 続けて山下課長は「さらに大きく変わったところは、2040年というところ」と指摘。「人口の減少で生産年齢人口が減っていく。さらに、支え手となる人や働く人が減っていく。そういったところは令和2年度の診療報酬改定の基本方針骨子案の所で、より強く書いている」と述べた。

 一方、前回改定と変わらない方針として山下課長は「地域包括ケアシステムの推進」を挙げ、「これは2025年度を見据えて変わらないことであり、今後も進めていかなければいけない」と述べた。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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