ケアマネ逓減制、「せめて3分の2に」 ── 居宅介護支援費の見直しで武久会長

会長メッセージ 協会の活動等 審議会

介護給付費分科会_20201126

 ケアマネージャー1人あたりの担当件数が増えると介護報酬が減額される「逓減制」について、日本慢性期医療協会の武久洋三会長は11月26日の会合で「半額になってしまうのはあまりに厳しいので、せめて3分の2ぐらいにしてはどうか」と提案した。

 令和3年度の介護報酬改定に向け厚生労働省は同日、社会保障審議会(社保審)介護給付費分科会(分科会長=田中滋・埼玉県立大学理事長)の第194回会合をオンライン形式で開催し、居宅介護支援などについて審議した。

 この日のテーマは、①各サービス、②横断的事項──の二本柱で構成され、①に関する資料が1~4、②に関する資料は5~10となっている。
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01_議題_20201126介護給付費分科会

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逓減制の適用を45件から

 居宅介護支援について厚労省は10月30日の会合で「逓減制」の見直しを提案。今回の会合では具体的に「逓減制の適用を45件からとすることとしてはどうか」と提案し、大筋で了承された。

 現行は、ケアマネ1人あたりの担当件数が40件を超えると半額、60件を超えると3割に減額される仕組みになっている。
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P20抜粋_【資料1】居宅介護支援・介護予防支援_20201126介護給付費分科会

             2020年11月26日の介護給付費分科会「資料1」P20から抜粋
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 厚労省は「一定のICT活用、又は、事務職員の配置を図っている事業所については、ケアマネジメントの質を確保し介護支援専門員の負担に留意しながら、その取扱件数を増加させることが可能と考えられる」としている。
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P21_【資料1】居宅介護支援・介護予防支援_20201126介護給付費分科会

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45件超で「半額はあまりにも厳しい」

 質疑で武久会長は「事業所に事務的な処理を行う人を配置すれば、ケアマネージャーがもっと自由に動けて件数も増える」と今回の提案を評価。現在40件担当のケアマネについて、「50件以上の担当はおそらく可能」とし、45件を超えるとの見通しを示した。

 その上で、「45件を超えた場合の報酬が半額になってしまうというのはあまりにも厳しい」と指摘し、減額幅を3分の2程度にとどめることを提案。「ケアマネがデスクワークばかりになってしまうと全く意味がない」とし、事業所における事務処理能力の向上に期待を寄せた。
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「移行定着支援加算」の柔軟な対応を

 この日の会合では、介護医療院への移行支援もテーマになった。厚労省は介護医療院への移行を進めるための「移行定着支援加算」について、「期限どおりとしてはどうか」と提案した。

 その理由について、「令和2年9月30日現在、介護医療院は全都道府県で開設されており、一定の認知度は有していると考えられる」としている。

 武久会長は「日本慢性期医療協会としては、介護療養型医療施設のベッドは全て介護医療院に移っていただきたいと考えている」としながらも、自治体ごとの対応状況が異なることを指摘。「令和3年3月末までに申請を受け付けたものについては、許可される時期が4月になろうと5月になろうと、算定を認めていただきたい」と柔軟な対応を求めた。

 武久会長の発言要旨は以下のとおり。

■ 居宅介護支援費の逓減制について
〇武久洋三会長
 居宅介護支援費について、逓減制の適用を40件から45件に引き上げる案が示された。居宅介護支援事業所は業として成り立っているので、1人のケアマネが1人で行っているという場合のほうがむしろ少ない状況にある。また、ケアマネ自身がデスクワークばかりになってしまうと全く意味がない。ケアマネジャーというものは、病院の付き添いをするなど現場に出て行く業務をできるだけ多くすべきである。事業所に事務的な処理を行う人を配置すれば、ケアマネジャーがもっと自由に動けて件数も増えると思う。
 そこで、たった1人で行っている場合とを少し分けて考えていただければ、1人40件担当しているケアマネが50件以上担当することはおそらく可能だろう。
 今回、40件から45件への見直しという提案だが、45件を超えた場合の報酬が半額になってしまうというのはあまりにも厳しいので、せめて3分の2ぐらいにしてはいかがかと思う。
 今後は、事業所における事務処理をケアマネジャーではなく別の事務員などが対応できるような方向性も非常に期待される。

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■ 介護医療院への移行支援について
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 日本慢性期医療協会では、介護医療院への移行を積極的に推奨している。当会としては、介護療養型医療施設のベッドは全て介護医療院に移っていただきたいと考えている。
 介護療養型医療施設等から介護医療院への移行を進めるための「移行定着支援加算」については、算定期限が令和3年3月末までとされている。
 しかし、地域によっては県や市町村の事務処理能力が非常に遅い場合もあるので、3月31日までに介護医療院への転換の申請をして正式に受け付けた場合には、許可される時期が4月になろうと5月になろうと、算定を認めていただきたい。算定期間を1年以上も延ばしてほしいということまでは要望しないが、自治体の事務能力のことも考慮した上で、3月末までに申請を受け付けていれば大丈夫にしていただけるとありがたい。
 なお、介護療養型医療施設の移行予定に関する調査によると、2023年度末までに介護医療院へ移行を予定している病床数は38.4%であるが、日本慢性期医療協会としては行政を信用して、できるだけ早く、介護医療院にどんどん移っていただいたほうがよいと考えており、介護医療院をより良い施設にするように前向きにとらえていきたいと思っている。

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■ 栄養ケア・マネジメントの強化について
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 調査によると、介護保険施設の入所者のうち、低栄養が「中リスク」「高リスク」を合わせて約半数となっている。低栄養リスクの人がどんどん増えているように感じる。
 私はやはり、低栄養が起きてから治すよりも、入所・入院前の段階における低栄養対策を考えるべきだと思う。
 低栄養の人がどこから来たのかを考えると、どうやら医療機関における低栄養や対応策が不十分であるように思う。われわれは医療側だが、介護側としては一度悪くなった人が紹介されて入所してくる。むしろ、その前の急性期病院等の段階での低栄養対策等が必要である。
 排泄や食事が自立すればご自宅に帰ることができる可能性が非常に高い。介護施設に入所せずにご自宅で療養を続けられるので、栄養ケア・マネジメントを非常に評価していただくことはありがたいと思っている。

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■ 個室ユニット型施設について
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〇武久洋三会長
 個室ユニット型施設について、1ユニットの定員を現行の「おおむね10人以下」から「15人以下」に緩和するとの提案は非常に良いと思うが、1つ質問させていただきたい。
 県の指導監査では、1つのユニットの職員が隣のユニットに行って手伝ってはだめだと厳しく言われる。これはどう考えてもおかしい。1ユニットの定員が10人から15人になるということは、隣のユニットの10人の半分は一部になり、半分はまた別のユニットになる。すなわち、3ユニットの30人が2つの詰所というか、スタッフグループによって対応するということになり、それにより、実際にどのようにすればいいのか、教えていただけると大変ありがたい。

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〇厚労省老健局高齢者支援課・齋藤良太課長
 1ユニットの定員を15人以下にするが、ユニットケアはソフトもハードも一体となって運用できないといけないので、今ある10人単位の施設を15人になるように分ける、1つのユニットを半分に切るというようなことは考えていない。新規のもので、新たに15人のユニットを作って、それで運用していただくということを考えている。
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〇武久洋三会長
 監査になった場合に、既存の所でも、1ユニットの担当者が別のユニットに少しでも行くと「それは駄目だ」と言われるのだが、実際にはスタッフが急に休んだりすることもあるので隣のユニットに動くこともある。
 ユニット間のスタッフの移動について、ある程度、融通していただけるような指導をしていただけると大変ありがたいのだが、これに関してはいかがだろうか。

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〇厚労省老健局高齢者支援課・齋藤良太課長
 ユニットケアは1つのユニットで完結させるということが基本である。今回のご提案で、15名を1ユニットにしたのは、1ユニットで働く人数を増やすということであり、そういう意味でシフトや、あるいは休憩休暇が取りやすくなるという面で効果があるものと思っている。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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