「第6回療養病床の在り方等に関する特別部会」 出席のご報告

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「第6回療養病床の在り方等に関する特別部会」 出席のご報告

 平成28年11月30日、「第6回療養病床の在り方等に関する特別部会」が開催され、武久洋三会長が委員として出席いたしました。今回の部会では、とりまとめに向けた具体的な資料として、これまで5回の議論を踏まえた「療養病床の在り方等に関する議論の整理(案)」が示されました。
 
 平成29年度末に設置期限を迎える介護療養病床等の転換先となる新たな施設類型に関する議論は、主に次の3つの論点に焦点が絞られつつあります。

 ○ 転換に係る準備のための経過期間を3年とするか、6年とするか
 ○ 一般病床からの転換や新設(新規参入)を認めるか
 ○ 1室当たり定員4人以下、かつ、入所者1人当たり8㎡とする床面積は、生活施設として適当か

 また、「療養病床の在り方等に関する議論の整理(案)」には、新たな施設類型が、従来の介護保険3施設と同様に、介護保険法の本則に位置づけられることが明記されました。法律の本則に位置づけられることによって、新たな施設類型は恒久的な施設であることが明確となり、介護療養病床が廃止された後も引き続き同様のサービスを提供できる根拠ともなります。

 武久洋三会長は、議論が集中した上記の3つの論点について以下のように述べ、持論を展開しました。

(武久洋三会長の発言)
 今回の改革の基本的な方向性として、「今後、増加が見込まれる慢性期の医療・介護ニーズへの対応」が謳われており、毎年1兆円ずつ増え続けている医療費をいかに削減し効率化していくか、という大きな命題があるものと捉えている。

 一般的に病床は急性期と慢性期に分けられ、一般病床は急性期病床で、療養病床は慢性期病床であるという認識であろう。しかし実際には、一般病床にも多くの慢性期患者が入院している。新たな施設類型への転換は、まず介護療養病床等の慢性期病床から着手すべきだということは大方の委員が主張しているところであり、理解できないことはない。しかし昨年の10月14日に、第306回中央社会保険医療協議会総会で示された「一般病床7対1にも医師の指示見直しの頻度が週1回程度で、病状の安定した患者が50%以上入院している」という衝撃的なデータからすれば、一般病床の削減も重点的に行うべきであろう。なぜなら、一般病床の入院費は療養病床に比べて単価が高いので、一般病床から新たな施設類型への転換を認めていけば、医療費の削減と効率化に資するからである。

 転換に係る準備のための経過期間については、次回の診療報酬と介護報酬の同時改定に時期を合わせ、6年とするべきである。介護療養病床から新たな施設類型への転換には大きな経営判断がともない、新たな施設類型の介護報酬や施設基準などの詳細が平成29年3月に開催される介護給付費分科会で明らかにされ、その時点から転換を検討するとすれば、3年ではあまりに短い。

 以前から繰り返し確認していることであるが、単に、介護療養病床についての「病床」という扱いを「施設」という扱いに変えるだけのためにこのような大掛かりなことをしているのか。現行の療養機能強化型のAおよびBの機能やスタッフ配置を新たな施設類型のⅠ型にそのまま移すだけだというのであれば、現状でも介護療養病床は介護保険適用なので、財源や費用は何も変わらないということになる。もし、介護療養病床が担っていた医療機能にプラスして生活施設の機能を強調するというのであれば、大規模改修までの間は6.4㎡/人以上の床面積でよいとされているので、8㎡/人以上の床面積である現行の介護老人保健施設にハード面では劣るということになる。一体、現場では、どの部分を変えれば生活施設としての機能を備えていると評価されることになるのか。介護老人保健施設の中にも、在宅復帰の機能を果たしている施設もあれば、長期にわたって利用者が入所している施設もある。介護老人保健施設と新たな施設類型との整合性をいかに考えていくべきか、担う機能の違いがわかるような施設基準を示していただきたい。

 他の委員の発言としては、下記の意見がありました。

 ・「新たな施設類型が魅力的な選択肢になればなるほど、様々な施設種別からの転換が増えることが考えられるが、まずは既存の療養病床の転換を最優先とすべきである」(鈴木邦彦委員・日本医師会常任理事)

 ・「新規参入を安易に認めると介護療養病床等からの転換が進まず、介護保険財政を圧迫することにもなる。転換型老健の二の舞になることのないよう、まずは介護療養病床等からの転換を確実にするべきである」(東憲太郎委員・全国老人保健施設協会会長)

 ・「介護療養病床という病院の現場で患者のケアにあたってきた医師や看護師等の心情からすれば、新たな施設類型の名称にも工夫が必要である。単独型であれば名称の一部に医院やクリニックを含めたり、病院に併設されるのであれば『〇〇病院附属高齢者医療施設』とすることが考えられる」(加納繁照委員・日本医療法人協会会長)

 ・「新たな施設類型の名称については、患者・利用者が見て、どのようなサービスが提供されるのかが一目でわかるようにすることも大切である」(齋藤訓子委員・日本看護協会常任理事)

 ・「病院・施設側の経営や患者負担に極端に影響を与えるような介護報酬改定が行われることはないと期待しているので、転換の準備期間は3年で十分だと考えている。また、武久洋三委員が言われたとおり、一般病床にも慢性期の患者が多く入院しており、このことは、患者からすれば、適切な介護施設がないため、やむなく高い入院費を支払って一般病床に入院しているということでもある。今後は、新たな施設類型の体制をより充実させ、計画的に利用者を受け入れていくよう考えていただきたい」(白川修二委員・健康保険組合連合会副会長・専務理事)

 ・「土地の確保が困難な大都市部では大規模改修後も6.4㎡/人の床面積を可とする特例を認めてほしいという意見があるが、新たな施設類型が生活施設であることからすれば、本来、個室を目指していくべきなのではないか」(瀬戸雅嗣委員・全国老人福祉施設協議会副会長)

 ・「示された整理(案)にはこれまで挙がった問題点がほぼ漏れなく含まれていると思うが、どの部分が来年の通常国会での議論となり、どの部分が介護給付費分科会あるいは中央社会保険医療協議会での議論になるのかがわかるようさらに整理していただきたい」(土居丈朗委員・慶應義塾大学経済学部教授)

 ・「新たな施設類型が法律の本則に位置づけられる以上、あまりに長期間にわたって介護療養病床等からの転換を優先したり、新規参入を抑制するのは、営業の自由(憲法第22条第1項)に反することになる。ただし、正当な理由に基づく法的根拠があれば、介護保険事業計画の総量規制で対応することが直ちに違憲になるというわけではない」(岩村正彦委員・東京大学大学院法学研究科教授)

 ・「たまたまある利用者に、介護保険施設と医療療養病床のどちらに移りたいかを尋ねたところ、『介護施設に行くのは嫌だ。できれば病院に入院したい』とのことであった。福祉サービスを受けることについてのスティグマは、介護保険制度がスタートして20年が経ったいまも払拭されていないということをあらためて実感した。介護が医療に比べて劣っている点があれば是非ご指摘いただき、介護を学ぶ者のさらなる成長につなげていきたい」(井上由美子委員・高齢社会をよくする女性の会理事)。

 次回の特別部会は12月上旬に開催され、今回の委員の意見がさらに反映された「療養病床の在り方等に関する議論の整理(案)」に基づき、とりまとめに向けて議論が集約される予定です。

○第6回療養病床の在り方等に関する特別部会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000144533.html
 

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