医療と介護の同時改定にどう対処すべきか

官公庁・関係団体等

医療と介護の同時改定にどう対処

「地域包括ケアシステム」の実現に向けた取り組みを進める
 (宇都宮啓・厚労省老健課長)

 

 介護保険では、平成12年の制度発足当初に比べて倍以上の方が要介護認定されており、それに伴い費用も制度発足当初は3兆6,000億円だったものが8年でちょうど倍になって、今は8兆円ぐらいになっている。

 2025年(平成37年)には20兆円ぐらいになるという推計もある。それに伴い、65歳以上の高齢者が支払う保険料も上がっていくと予想されている。

 6月15日に成立した「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」の概要には、高齢者が地域で自立した生活を営めるよう、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが切れ目なく提供される「地域包括ケアシステム」の実現に向けた取り組みを進めるということである。

 この地域包括ケアシステムには、①医療との連携強化、②介護サービスの充実強化、③予防の推進、④見守り対処などの生活支援サービスの確保等、⑤高齢者の住まいの整備──の5つの柱がある。この5つのサービスが包括的かつ継続的に推進されていく。

 まず、医療機関からの退院時における連携がある。病院から退院するときに地域の中の受け皿が不足している状況がある。また、高齢化が進むにつれて介護度の重い方や医療の必要性の高い方が増えるが、それらの方への対応といった点がポイントになる。

 介護療養病床については平成18年の制度改革で、介護療養型老健施設という従来型の老健施設よりも医療ニーズに対応できる施設に転換していく施策が登場した。転換については、昨年4月時点で6割ぐらいが未定で、その理由として一番多かったのが、同時改定の方向性を見てから判断するというものであった。

 介護療養病床は今回6年間の延長が法律で決まったが、これまでの転換、廃止という方針は維持し、来年度以降新設は認めない。

 平成18年の制度改革以降、医療療養と介護療養の機能分化が進んでいる。実際に行われている医療内容では、中心静脈栄養や人工呼吸器といった重い医療が必要な方は、介護保険施設ではほとんど見かけないが、喀痰吸引や経鼻経管栄養については介護保険施設でも行われていて、今回の法改正で、こういった行為についてはトレーニングを受けた介護職ができるようになった。そうなると、病院への入院が必要な医療の概念は変わってくると思う。

 医療との連携と関係するが、24時間対応の定期巡回訪問サービスを創設した。イメージをいえば現行では、1回の訪問で長時間対応するが、週に何回かしか訪問してくれない。そうではなく、1日3回ぐらい来てくれるサービスをつくる。また、複合型サービスを創設している。複合型にはいろいろなタイプの組み合わせがあるが、今回は小規模多機能と訪問看護の組み合わせだけを進める。

 介護保険の問題については、法律が通った。今は、介護給付の議論を進めている。例年のパターンであれば、12月ぐらいには改定率が出てくると思うが、それを踏まえてさらに具体的な議論になり、来年の4月から新しい方針でいくことになる。
 

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