「第5回療養病床の在り方等に関する検討会」 出席のご報告

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「第5回療養病床の在り方等に関する検討会」 出席のご報告

 平成27年11月27日、「第5回療養病床の在り方等に関する検討会」が開催され、池端幸彦副会長が委員として出席いたしました。議題は、下記の通りです。

 議題:新たな類型に関する論点について

◇池端幸彦副会長のご発言
池端副会長平成27年11月27日 事務局提出の資料、および鈴木邦彦構成員の提出資料「日本医師会・四病院団体協議会の提言 療養病床の今後の在り方について」により、今後検討していく療養病床の類型として、医療内包型と医療外付け型という二つの類型が提示された。私もこの二類型に賛成である。以前、当協会から提案したSNW(Skilled Nursing Ward)は、病院内の空床に施設を作る形態なので、医療外付け型に近いイメージになると思う。
 
 医療内包型の類型については、介護療養型医療施設の療養機能強化型A、Bがその役割を果たせるかと考える。また、嶋森好子構成員提出の資料にある通り、看取り等の観点から訪問看護の体制の充実が重要であるということは理解できる。だが、訪問看護ステーションや小規模多機能型居宅介護施設で、現状の介護療養型医療施設の患者ニーズに全て対応していくのは難しいのではないだろうか。かえって費用もかかってしまうだろう。そういう意味では、介護療養型医療施設等から転換した医療内包型の施設であれば、すでに様々な医療機能が病院内にあるので、必要な場合は医師も看護師もいつでも対応に入っていける。

 地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会での議論は、医療区分1の患者のうち7割は在宅に帰れるだろうという見解である。仮にも在宅に帰れるとみなされている人を施設に入れるという形になるのは避けるべきなので、あくまで病院内の「住まい」という形にすればいいのではないか。もちろん、院内の病床を転換しただけで住まいとみなすことについて反論はあるだろう。ただもはや現状では、6.4㎡の床面積を最低限に設定し、過渡期の対応ということで割り切ってでも転換を進めていかねばならない局面に来ていると思う。
医療外付け型の類型の基本は、あくまで病院の中に「住まい」をつくるという考え方になるべきである。そして、医療内包型については、医療と介護を一体的に提供できる施設として考える。そうした分け方なら、比較的すっきり整理できるのではないか。

 資料1-1「新たな選択肢の骨格に関する論点について」の中で、新たな類型には「利用者の生活様式に配慮し、長期に療養生活を送るのにふさわしい、プライバシーの尊重、家族や地域住民との交流が可能となる環境整備など「住まい」の機能」とあるが、現状、医療療養病床25対1に入院している医療区分1の患者には、行動範囲が10㎡の住居面積にも届かないような方が多い。そういう意味では、現状に合わせた住まいということで6.4㎡を最低限として確保し、経過措置ということにすればいいのではないか。

 医療内包型の新類型で絶対に譲れない点は、医師の当直体制である。医師の当直体制が要件とされなかったために失敗したのが、転換型老健だろう。医療内包型では、医師の当直体制を維持して、急変時もすぐ対応できるようにする。医療外付け型では、隣接の医療機関に24時間、医師を常駐させ、すぐに駆けつけられる体制を守る。医師の当直体制は、いずれの類型においても要件として含めていただきたい。

 新たな類型を考えるということで議論を進めてきたが、私としては、これは新たな類型というよりは、2025年に団塊世代が後期高齢者となり、その後の高齢者人口の減少という過渡期において必要となる、一時的な新類型というイメージで考えている。地域包括ケアシステムというのは住み慣れた地域で暮らし続けるための仕組みであり、セルフケア、セルフマネジメントでいかに長く住み続けられるかというのが基本にある。この仕組みの中で、「住まいと住まい方」を自分で決めていくというのが本来のあり方だが、現状では、やむを得ず介護療養型や医療療養型25対1にいるという方が多くいる。
 こうした問題をどう乗り越えていくかということに対して、本検討会で現実的な対応を考えていく中で、この二つの類型が出てきたのだと考えている。新類型が、あくまでもここ10~20年の間の過渡期のためのものであると申し上げたのは、そのような理由である。

 医療、介護を取り巻く環境はこれからも変化していくだろうし、利用者の考え方も変わっていくだろう。だから、今議論している新類型が、将来的に必要なくなるということも起こるかもしれない。そうなったら、それぞれの病院があらためて対応を考えていけばよいのではないか。
 だが今は、どういった施設が必要になってくるかを予想して、対策をとらねばならない時期である。6.4㎡は確かに住まいとは言えないかもしれないが、ある程度の期間は経過措置として割り切り、ニーズがあるならば住まいという形で対応しましょうというスタンスが、最も現実に即したやり方ではないか。そう考えると、この類型は、新規参入をどんどん受け入れるという方向には向かないと思う。もちろん、囲い込みをしようという意図ではなく、本検討会においては、今後は転換を中心に考えていくことになると思うから申し上げたまでである。

 医療外付け型の費用については介護保険をベースとし、提供する医療については訪問診療にするか、あるいは最初からある程度の医療サービスを包括としておき、看取り等の必要に応じて出来高算定とするような、医療保険、介護保険の二本立てで進めていくしかないのではないか。医療内包型の費用に関しては、現状の介護療養型医療施設の機能強化型A、Bがすでに介護保険でカバーされていることを考えれば、医療保険によるカバーは難しいかと考える。

 地域医療構想策定会議が進む中で、地方の医療機関はさらに状況が厳しく、一般病床の維持すら難しくなるという可能性が明らかになってきた。一般病床からの転換先として、現在議論している類型が選択肢に入るということも、ありうることかもしれない。そうなると、本検討会では議論を行わないにせよ、一般病床プラス住まいという選択肢についても議論することになっていくかもしれない。
加えて、医療内包型を介護療養型医療施設の転換先と考えると、すでに転換した後の老健や医療療養病床25対1から新類型に再転換したいという場合、受け入れるか否かという問題もあると思う。このあたりの対応も考えておく必要があるのではないか。
 また、新類型の整備にあたっては、既存の病床を使うにしても、転換するときにはある程度の費用がかかってくる。ぜひとも地域医療介護総合確保基金を使えるようにしていただきたい。

○第5回療養病床の在り方等に関する検討会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
 ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000105457.html
 

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