「次は慢性期病床の機能分化」── 記念講演で日医の鈴木氏

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鈴木邦彦先生_20140626日慢協の記念講演で

 日本医師会常任理事の鈴木邦彦氏は6月26日、日本慢性期医療協会(日慢協)の平成26年度総会で「今後の医療の方向性について ~平成26年度診療報酬改定と慢性期医療のあり方~」と題して記念講演し、「次は慢性期病床の機能分化が議論になる」との見通しを示しました。鈴木氏は、政府の社会保障制度改革国民会議や医療・介護総合確保法で示された方向性などを踏まえ、今後の医療・介護提供体制について幅広い視点から言及し、かかりつけ医機能の充実による「地域に密着した医療」の重要性を語りました。
 
 鈴木氏は現在、中央社会保険医療協議会(中医協)の委員を務め、次期診療報酬改定に向けた審議に参加しています。中医協委員として平成22年度、24年度、26年度と3回の診療報酬改定に関わった経験などを振り返りながら、今後の方向性について指南していただきました。
 
 鈴木氏は今改定について、「2025年に向けた改革の本格的な第一歩となった」との認識を示し、「今までの高度急性期病院を頂点としたピラミッド型の連携ではなく、中小病院や診療所など地域の医療・介護の連携を重視した、いわば『水平の連携』を進めるシステムに大きく舵を切る意義のある改定だった」と述べました。
 
 今後の連携のあり方について海外の事例などを紹介し、「イギリスでは家庭医と専門医が分断されているが、日本は分断が少ないので地域包括ケアシステムを進めるための連携がとりやすい」との見方を示しました。
 
 機能分化については、今改定で重視された「在宅復帰機能」に触れ、厚労省が医療・介護について横断的な調査を予定していることを紹介。「療養病床は重度の受け皿と言いながら、今回のような在宅復帰率の要件を導入した以上、重度の受け皿と在宅復帰を両立させなければいけない。果たしてどちらをメインに考えているのか。介護保険のベッドを含めて考えているのではないのか」との問題意識を示したうえで、「次は慢性期病床の機能分化が議論になる」と述べました。
 
 また、今改定で新設された地域包括ケア病棟について、中医協での議論などを紹介。「当初は『病棟単位』であったが、中小病院では難しいので『病室単位』にしてほしいと求め、そのような形で認めていただいた」と評価しました。新たに設立された「地域包括ケア病棟協会」の活動に言及し、「これからどのような活動を展開されるか、注目している」とし、「厚労省は地域包括ケア病棟を大きく育てたいとの思いがあるので、次の改定でも大きなテーマになるだろう」との見通しを示しました。
 
 今後の医療・介護提供体制については、かかりつけ医機能の重要性を説き、「最終的には、まちづくりを考えていかなければいけない。地域医師会が重要な役割を果たしていく。個人的には、かかりつけ医の制度化が必要だと思っている」と強調。「今後必要な医療は、高度急性期医療ではなく、地域に密着した医療」とし、中小病院や有床・無床診療所など既存の資源を活用した日本型の医療・介護モデルを追求していく必要性を訴えました。
 
 今後さらに進む高齢化社会に向け鈴木氏は、「一人ひとりが生きがいを持って社会参加し続けられるまちづくりの中心に医療機関がある」と指摘し、「誰もがいつかは亡くなる。先進国における人生の最期にふさわしい看取りをわれわれは支える責務がある」と結びました。
 

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