今後どうなる? 慢性期リハ、在宅リハ
2. 橋本康子(リハビリテーション委員会委員長)
次に、橋本が回復期リハ病棟基準には対象患者8割が必要であるが、残りの2割の病床を回復期リハ対象外でリハが必要な患者さんに使用した症例を示した。
症例は62歳の女性で1年前にくも膜下出血を発症。脳動脈瘤クリッピング術、外減圧術、L-Pシャント術を経て、他院回復期リハ病棟へ転院、6か月間リハを行い介護老人保健施設へ退院となる。しかし、家族がもっと動けるのではないか、歩いて自宅へ帰ってほしいとの希望があり、発症後1年を経て当院へ入院となった。
入院時のFIMは56点、端座位は見守り、立位は上肢支持で不安定、セルフケア・移乗・移動・コミュニケーションでは原点が著明であった。重度失語症、ゲルストマン症候群、身体失認・遂行機能障害・情動障害・記憶障害があり、全体として立位が不安定で情動抑制困難なため、指示が入らず同時課題遂行が困難な混乱した状態にあった。
これらの負のループを断ち切るために、入院直後から長下肢装具を利用し、麻痺側下肢に支持性を向上させ、混乱のない学習環境を取り入れていった。5か月経過後、直線歩行は見守り杖歩行が可能となり、応用歩行や段差昇降も可能になった。また、家族が希望されていた排泄の自立とコミュニケーションの確立も達成され、自宅へ退院された。
ここでの問題点は、回復期リハ病棟へ入院しても適切かつ十分なリハが提供されていない場合があるということである。さらに、回復期リハ適応外患者のリハは十分に行われていない。そして、回復期リハ退院後の継続したリハが不十分である。
当院では2010年の1年間で17名の回復期リハ対象外患者のリハを行い、そのうち5症例が他の回復期リハ病院でリハ経験があった。17名中12名、約70%の自宅復帰率となっている。
3. 横串算敏氏(札幌西円山病院リハビリテーション室)
次に横串先生から「療養型病院で医療ケアの質の向上にリハを活用する」と題して発表があった。最初に、札幌西円山病院の紹介があり、医療療養病棟、介護療養病床、通所リハ、訪問リハでのリハの役割や効果の検証が行われた。
西村式老年者日常生活動作能力と精神状態評価尺度を用いて、約3年間のデータを示した。医療療養病棟でのリハは、摂食自立度維持、会話、認知、転倒防止に役割が認められた。通所、訪問でのリハは、日常生活能力の維持、運動機能や栄養、口腔ケアなどの効果があった。
まとめとして、療養型病院では医療ケアの質の向上にリハを活用できる、維持期リハは地域包括ケアシステムを支える重要な柱となる、維持期リハの科学的な検証が必要である──と話された。
4. 原田拓哉氏(定山渓病院リハビリテーション)
最後に原田先生から、リハ療法士の立場から発表があった。まず、定山渓病院の紹介があった。病床数386床(医療療養245床、特殊疾患病棟141床)、リハスタッフ数52名(PT17名、OT25名、ST10名)であり、1週間のリハ実施単位数は平均8.3単位/患者、リハ実施頻度は医療療養で週平均4.6日、特殊疾患病棟で週平均4.1日だった。
定山渓病院の療養病床の特徴は、急性期・回復期を終えて継続しての入院が多いが、急性期病院からの受け入れや、自宅や施設での生活が困難になり入院される方もいる。患者さんの疾患は多岐にわたり、年齢層に幅がある。
また、ADL介助量が多い重度な方を対象にしているため死亡退院される方が多く、終末期リハを実践している。そして、包括病棟である特殊疾患病棟でも個別訓練を多く実施している──などである。
取り組みとして、生活機能低下につながる進行性疾患などに対しても、継続した個別訓練が重要と考え、実践している。集団訓練では慢性期は社会的交流が重要で、患者同士の活動の中からその人らしい生活を送ることができるようになることを目的としている。
摂食・嚥下訓練は、経口摂取の可能性を見落とさずに対応し、誤嚥性肺炎による全身状態悪化の防止を目的に取り組んでいる。終末期リハは、最後まで人としての尊厳を維持できる支援、ご家族に対して予期悲嘆の軽減を含めた心理的支援をチームの一員として行っている。そして、発表ではこれらの事例を示した。
まとめとして、療養病床のニーズは高く、そこで生活されている患者の機能改善と能力低下の防止や、社会的交流を支えるための継続したリハサービスは大変重要である。
そして、入院におけるリハサービスは在宅生活の継続を支援する介護保険リハサービスと同様に大切な医療サービスの一つと捉え、その人らしい生活を最後まで送れるように支援していくことが必要であると話された。
■ まとめ
全員の発表終了後に、会場からの質問に答えながらの討論となった。
在宅リハの重要性は認識されているが、まだまだ不足していてリハスタッフの配置数も問題であるとされた。通所リハでもリハスタッフ数も評価されるべきとの意見があった。
また、個別リハだけでなく、集団リハも評価すべきとの意見も出た。今後は、慢性期・維持期リハでの効果や必要性を客観的に検証することが重要であると確認された。
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2011年10月1日
