今後どうなる? 慢性期リハ、在宅リハ

役員メッセージ

リハの効果や必要性を客観的に検証する ─ 橋本康子氏
 

 第19回日本慢性期医療学会札幌大会で「慢性期リハビリテーション~現状と展望~」と題してシンポジウムが行われた。

 趣旨は「リハビリテーションは急性期、慢性期、終末期と継続的に必要である。現在広く行われている回復期リハビリテーションは、慢性期の選ばれた患者の短期集中的なリハビリテーションといえる。回復期リハの基準に入らない方、また、回復期リハ終了後の継続的なリハ等について提言し議論する」ことである。

 座長は石川誠先生、シンポジストは石川誠先生、横串算敏先生、原田拓哉先生、橋本康子で行った。

■ 講演
 
 1. 石川誠氏(全国回復期リハビリテーション連絡協議会会長)
 
 最初に石川誠先生から、次のような直近11年間のリハ医療の変化と今後の医療・介護分野の具体的な改革案の講演があった。

 2000年に介護保険制度が施行され、同時に医療保険では回復期リハ病棟入院料が新設された。その後11年が経過するが、この間のリハ医療は大きく変化した。

 20年前、入院リハ医療サービスを受けるには、生活圏から離れた郡部の温泉病院に転院するしかなかった。また、退院して自宅復帰しても、外来や訪問によるリハは極めて乏しく、退院後寝たきりとなる例は少なくなかった。入院・外来・訪問などによるリハの資源が乏しすぎたからである。

 2004年に高齢者リハ研究会からの提言として、急性期リハが不十分、長期にわたる効果のないリハ、医療から介護への不連続な仕組み、リハとケアとの境界が不明確、在宅リハが不十分などの問題点が指摘された。

 それらを解決するべく2006年の診療報酬改定では、医療保険では急性期の状態に対応し、主として身体機能の早期改善を目指したリハを行う。介護保険では、維持期の状態に対応し、主として身体機能の維持および生活機能の維持・向上を目指したリハを行う──という基本的な考え方が出された。そして、1日3時間(9単位)のPT・OT・STの評価が行われた。ただし、標準的算定日数上限の設定があった。

 2008年には、標準的算定日数上限の緩和があり、回復期リハに質の評価(成果指標)が導入された。

 2009年には、訪問リハの1日1回(20分)あたりの評価、短期集中リハの評価、認知症リハの評価がなされた。

 2010年には早期リハの評価、回復期リハには新たな質の評価(過程評価)が導入され、がん患者リハ料の新設があった。またこれに伴い、回復期リハ病棟により機能分化と連携が具現化された。

 次にリハ医療の基盤整備の現状を話された。

 この11年間で回復期リハ病床数は6万床を超える数となったが、都道府県格差は5倍ほどある。また、訪問リハの格差は10倍ほどである。セラピストの資格保持者数も年々増えているが、リハ医療の現場では、未だにPT・OT・STの配置は十分ではなく、しかも若いセラピストが過半数を占める。チームアプローチが十分とはいえない。

 慢性期リハ、特に在宅リハに関するサービスは極めて乏しい状況であり、今後、在宅リハ・生活期リハに十分なスタッフを配置し、教育・研修体制を強化することが必要である。

 2011年の社会保障改革に関する集中検討会議、医療・介護分野の具体的改革案では、医療・介護サービス提供体制の効率化、重点化と機能強化が打ち出されている。

 具体的に医療分野では、医師の確保・医師の偏在是正、病院・病床の機能分化・機能強化、在宅医療の強化、チーム医療の推進、精神保健医療の改革、介護分野では、24時間安心の在宅サービス、介護・重症化予防への重点化、介護人材の確保と質の向上などである。

 最後に、慢性期医療協会の会員病院は、医療・福祉・介護複合体に病院が多数存在し、スタッフ数も豊富なところが多い。ぜひ、地域包括ケアの拠点として、在宅療養支援病院や在宅総合ケアセンターとしての機能を発揮して、入院・入所リハから在宅リハに充実へと積極的に展開するべきではないか──との進言があった。
 

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