社会保障審議会・医療保険部会(11月28日)のご報告

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11月28日の医療保険部会

 

(3) 70~74歳の患者負担特例措置について
 

 現行法上、高齢患者の自己負担は、65~69歳(3割)、70~74歳(2割、現役並み所得者は3割)、75歳以上(1割、同)──と設定されています。ただ、70~74歳の負担割合は2008年、後期高齢者医療制度の「円滑な施行」のため特例措置が設けられ、毎年約2,000億円の予算措置で1割負担に抑えられています。そのため、70~74歳に対する特例措置を今後も継続するか、それとも法定2割に戻すかが問題になっています。同部会では「法定2割」の意見が多数です。現在の主な焦点は、何らかの「激変緩和措置」を設けるか、すなわち新たに70歳になる人から順次実施する「段階的施行」にするか、という点です(資料は厚労省ホームページ)。

 厚労省は冒頭、11月16日の前回会合で鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)から質問があった「年齢階級別平均収入」について補足資料を示しました。厚労省によると、70~74歳(現役並み所得者を除く)1人当たりの平均年収は193万円で、患者負担額は年4万7,000円です。これに対し、75歳以上(同)1人当たりの平均年収は168万円で患者負担額は年7万7,000円、65~69歳1人当たりの平均年収は234万円で患者負担額は年8万8,000円です。70~74歳の負担が、他の年齢層と比べて軽いことを示す根拠になっています。

 しかし、こうした平均収入や患者負担額の算出根拠として使われた厚労省の「国民生活基礎調査」について、鈴木委員が「抽出調査なのでバラツキがあるのではないか」などと指摘し、厚労省側に詳しい説明を求めていました。鈴木委員は「1割維持」を主張しています。

 28日の会合で厚労省は、「国民生活基礎調査」の調査客体や集計方法などを説明しました。全国の国政調査区から無作為抽出した約3万6,000世帯(約9万5,000人)のうち、回答に応じた約2万6,000世帯(約7万5,000人)を対象に実施した調査との説明です。厚労省の担当者は、「世帯を構成する1人ひとりの収入はいろいろあることや、世帯人数にもバラツキがあるという限界はある」と補足しました。

 鈴木委員は、データの信頼性についておおむね理解を示しながらも、「現役並み所得者とそれ以外とを区分しておらず、医療費については入院と入院外の区別がないという課題は依然としてある」と指摘。「1割になると思っていた人が2割になると受診控えが起こり、症状や状態悪化などが懸念される」として、「1割維持」を改めて主張しました。堀憲郎委員(日本歯科医師会常務理事)も同様に「現状維持をお願いしたい」と求めましたが、他の委員からは前回と同様、「低所得者に配慮した上で、法定2割に戻すべき」との意見が相次ぎました。ただ、2割負担の実施方法については前回と同様に意見が分かれました。

 齊藤正憲委員(経団連社会保障委員会医療改革部会長)は、「高齢者も痛みを分かち合う必要がある」とした上で、「70歳から順次引き上げる経過措置は必要ない」と主張しました。これに対し、岩村正彦部会長代理(東大大学院法学政治学研究科教授)は、「1割から2割に上がると負担感が重いので、これから70歳になる人から引き上げる『段階的施行』と組み合わせるべきだ」と述べ、継続審議となりました。[→ 続きはこちら]
 

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