第55回社会保障審議会 医療保険部会 報告

審議会

日本病院団体協議会第97回代表者会議

 平成24年6月21日に社会保障審議会 医療保険部会が開催され、当会会長 武久洋三先生が委員としてご出席になりました。

 本日の議題は、前回持ち越しとなっていた「医療費適正化計画」について議論されました。医療費適正化計画は、平成20年度を始期とする1期5年間の計画であり、国において「医療費適正化基本方針」を定め、これに即して各都道府県が都道府県医療費適正化計画を作成し、すすめていくことになっています。本医療保険部会では、都道府県からの意見等をふまえて、次期の医療費適正化基本方針について意見が交わされました。

 現行の医療費適正化計画が策定された時には、平均在院日数の短縮を目標に、療養病床の削減が強く打ち出されましたが、次期改正に向けては、療養病床の機械的な削減はしないという方針から、医療計画における基準病床数等と整合性のとれた一般病床、療養病床等の適正な病床数を各都道府県が設定できるという流れに変わってきています。

 武久会長は、平成15年に、床面積等のハードの基準のみで一般病床と療養病床に届出を出すことになった経緯を説明され、医療費の適正化には、それが大きく影響していることについて述べられました。たとえ長期入院の高齢患者が多く入院していても、4.3㎡の床面積しかない病院は、一般病床としての届出しか出すことができず、これまで、長期入院の患者を特定除外規定として平均在院日数に含めずに、一般病床として存在しています。同じ病態の患者でも、一般病床に入院する場合と療養病床に入院する場合とでは医療費が異なります。つまり、ハード上、療養病床に移行できない病院の方が、入院費は高く算定しているという矛盾した構造になっています。医療経済面からみても、一般病床と療養病床に分ける必要性があるとは思えません。

 また、平均在院日数が書かれているさまざまな資料をみれば、その計算には、すべての患者が含められているもの、特定除外患者を除いているものなど、まちまちであり、医療費適正化について検討するためには、計算の基準を示していただく必要があります。平均在院日数の短縮が地域連携や機能分化に効果があるとはいっても、その計算方法を明確にしなければ、意味のない議論をすることにもなりかねません。

 平均在院日数は、患者一人当たりからみれば、在院日数が短ければ一人当たりの医療費は少なくなります。しかし、病院側からみれば、一般的に在院日数の短い患者の1日当たりの単価は高いため、1か月に新規患者が4人入院する場合と、一人が1か月間入院する場合とでは、新規患者が4人入院する方が入院費の合計は高くなります。

 介護療養型医療施設は、本年4月の改定により、平成29年度末まで延長されました。現在の介護療養型医療施設は、死亡退院が約3分の1を占めるほど、ターミナルの機能を担っています。従来型の老健は在宅復帰の方向性に向かい、転換型老健も医師の配置人数から見れば、とてもターミナルをみることはできません。今、介護療養型医療施設で行っているような機能が、今後も維持できる仕組み作りを考えていかなければなりません。
 当会としても、十分な議論を持って、医療費の適正化を進めてまいりたいと思います。

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