「第2回高齢者医薬品適正使用検討会」 出席のご報告

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「第2回高齢者医薬品適正使用検討会」 出席のご報告

 平成29年6月23日、「第2回高齢者医薬品適正使用検討会」が開催され、池端幸彦副会長が出席いたしました。厚生労働省医薬・生活衛生局安全対策課主管の同検討会は、高齢者の薬物療法に関する安全性確保の推進を目的としております。

 今回の検討会では、「高齢者における薬物動態及び副作用」「高齢者医薬品の処方実態」「患者との関わり」の3つのテーマについて、6名の構成員ならびに参考人によるプレゼンテーションが行われました。

1.高齢者で特徴的な薬物有害事象について

池端幸彦副会長平成29年6月23日 池端幸彦副会長はまず、溝神文博構成員(国立長寿医療研究センター薬剤部)から報告された「薬疹の疑いがある83歳女性の持参薬9剤をすべて中止した症例」について、「臨床上、皮膚科医から薬疹が疑われる外来患者の内服薬をすべて中止するよう求められることがあるが、実際にはそう簡単にはいかない。どうしても中止する必要がある場合は、患者を入院させ、全身管理ができる中で慎重に減らしていくことになる」と述べました。その上で、「薬剤の副作用が疑われる患者の全員を入院させるというのもまた現実的ではないので、入院させてでも内服薬をすべて中止した方がよい、と考える分岐点があれば教えていただきたい」と溝神文博構成員に質問いたしました。

 池端幸彦会長の質問について、溝神文博構成員は、「たしかに余程の重症な薬疹でなければ外来で対応することになるので、いつでもすべての内服薬を中止できるわけではないというのはご指摘のとおりだと思う。発症直前の内服薬が特定できるときはよいが、ポリファーマシー(多剤投与)でかつ服薬開始から期間が経っているような場合は、文献を調べ、疑わしい薬剤から一つ一つ減らしていくしかない」と述べています。

 池端幸彦副会長が言及した内服薬をすべて中止した症例について、他の構成員からは、「症状の程度にもよるが、高血圧や糖尿病の内服薬は中止しにくいので、薬疹の原因となった薬の飲み合わせなどを究明していくことが大切だと思う」(松本純一構成員・日本医師会常任理事)、「高血圧症や糖尿病、骨粗鬆症などそれぞれの専門医の立場からすればどの薬剤も結局は中止できないことになり、この連鎖がポリファーマシー(多剤投与)に他ならない。この検討会では、高齢者にどの段階まで薬剤を投与するのが適切なのかということこそ議論するべきなのではないか」(美原盤構成員・全日本病院協会副会長)、「とくに中止しづらいとされる循環器系の薬剤であっても、循環器科医を交えてチームで検討する体制があれば、ポリファーマシー(多剤投与)の問題はある程度改善できるのではないか。池端幸彦構成員が言われたように、高齢患者の薬剤をすべて中止するには入院の必要があり、同系統の他の薬剤を試しつつ、徐々に減らしていくということも行われている」(秋下雅弘構成員・日本老年医学会理事、東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座教授)、などがありました。
 

2.呉市多剤併用対策について

 池端幸彦副会長はまた、前野尚子参考人(呉市福祉保健部福祉保健課)および森山美知子参考人(広島大学大学院医歯薬保健学研究科看護開発科学講座教授)から報告された広島県呉市における多剤併用対策に関心を示し、以下①②③の照会をいたしました。この呉市の多剤併用対策は、保健事業の一環として、レセプト分析により、使用禁忌・回避医薬品の情報を関係医療機関に提供するものです。

①国保のレセプトデータを利用した取り組みは、全国どの市町村でも条件さえ整えば実施できるのか。

⇒(前野尚子参考人の回答)
国保データベースシステム(KDB)が整備されているので、レセプトデータはどこの市町村でも利用は可能。ただし、調査等の実施にあたっては、データの抽出と集計にかなりのクレンジングとカスタマイズを要する。

②平成30年度から国民健康保険の運営主体が市町村から都道府県に移るが、その後も、市町村が国保データベース(KDB)を利用して事業や調査を行うことに支障はないのか。また、レセプトデータは、都道府県が地域医療構想の課題を抽出するために利用することとされているが、市町村が利用することにとくに制約はないのか。

⇒(内海良夫参考人・株式会社データホライズンの回答)
国民健康保険が広域化されても保健事業は市町村単位で行われるので、市町村は引き続きレセプトデータを利用することができ、地域医療構想との兼ね合いにおいても、都道府県からの委託事業であれば問題はない。

③レセプトデータから対象となる多剤併用者等をあらかじめ抽出し、看護師である在宅医療介護連携推進員が家庭を訪問して観察やヒアリングを行っているとのことであるが、個人情報保護上の問題は生じないのか。また、自宅訪問による服薬管理の支援は、薬剤師による訪問薬剤指導管理で行うこともできるのではないか。

⇒(森山美和子参考人の回答)
すべての健康保険組合は、レセプト等のデータ分析に基づいて「データヘルス計画」を作成することが国から求められており、呉市では、広島大学との共同研究というかたちで「在宅医療・介護連携推進事業」を実施している。したがって、個人情報の保護については、呉市個人情報保護条例に則っているところである。
自宅訪問による服薬管理は訪問薬剤指導管理でも行えるのではないかというご指摘については、保険者から薬局にレセプトデータを提供することができないこと、薬に対する依存やこだわりからお薬手帳を薬局に見せない患者がいることなどの理由から、今回の取り組みでは、まずレセプトデータを分析し、対象となる患者の同意を得る方法を採用した。

 最後に、佐藤大作・厚生労働省医薬・生活衛生局安全対策課長より、「高齢者の薬物療法の現状と分析」「高齢者の多剤服用(ポリファーマシー)対策のためのガイドライン等」「多様な医療現場の多職種連携」を柱とした次回以降の検討課題が提示され、多剤服用対策ガイドラインを作成するにあたり、ワーキンググループを組織することが示唆されました。

○第2回高齢者医薬品適正使用検討会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
 ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000169161.html
 

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