第1回高齢者医薬品適正使用検討会 出席のご報告

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第1回高齢者医薬品適正使用検討会 出席のご報告

 平成29年4月17日、「第1回高齢者医薬品適正使用検討会」が開催され、池端幸彦副会長が出席いたしました。同検討会は、厚生労働省医薬・生活衛生局安全対策課主管の会議で、高齢者の薬物療法に関する安全対策を推進する上で、必要となる事項について調査・検討することを目的としております。

 武田俊彦・厚生労働省医薬・生活衛生局長は、会議冒頭の挨拶において、「高齢化の急速な進展に伴い、平成28年度からは診療報酬上も減薬が評価され、高齢者に対する医薬品の適正使用はまさに喫緊の課題となっている。構成員の皆様には、安全対策、情報の提供、地域における多職種連携など、幅広い視点からのご議論をお願いしたい」旨を述べました。

 検討会の構成員は、学識経験者や関係団体の代表者19名で構成され、座長には、印南一路構成員(慶應義塾大学総合政策学部教授)が選任されました。

 池端幸彦副会長は、秋下雅弘構成員(一般社団法人日本老年医学会理事、東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座教授)と平井みどり構成員(神戸大学名誉教授)による「ポリファーマシー対策の現状と取組み」をテーマとしたプレゼンテーションを受けた意見交換の中で、次の意見を述べています。
 

〔池端幸彦副会長の発言〕
池端幸彦副会長平成29年4月17日◇ 慢性期医療の立場からすると、ポリファーマシー(多剤投与)の発生源は急性期医療にあることが多いと捉えている。もちろん、急性期病院において各臓器別専門医の先生方が一生懸命に治療されているのは疑うべくもないが、その治療はいきおい足し算の処方となるため、全科横断的な調整がなされないまま患者が慢性期医療や在宅に移ってくることになる。患者は一般的に、急性期病院で処方された薬を減らすことに不安感を示すため、その後の調整がスムーズに進まない場合もある。この点について平井みどり構成員にお尋ねしたいのだが、神戸大学医学部附属病院における取り組みでは、全科横断的なアプローチをされていたのか。講じられた対策などがあればご教示いただきたい。

⇒(平井みどり構成員からの回答)
薬剤師が介入し、入院患者の持参薬をチェックするようにしているが、循環器内科の治療ではどうしても処方薬が増えがちであった。今後は、多職種の意思をさらに統一し、地域連携をより一層徹底しなければ、対応は難しいと思う。

◇ 秋下雅弘構成員が「連携の取れた地域医療」を図示された中で、「病院」が一括りとなっているが、病院の機能分化を踏まえた病病連携、病診連携を示すべきではないか。実際、急性期病院の平均在院日数は2週間前後であり、そこでポリファーマシー対策に取り組むというのはあまり現実的ではない。目の前の治療に専念するだけでおそらく精一杯であると思う。また、せいぜいわずか2週間から1か月の投与日数である外来診療では、減薬を進めるのはさらに難しい。ポリファーマシーの問題には、急性期後を受ける慢性期や回復期の入院機能においてこそ重点的に取り組むべきであろう。

20170417秋下雅弘構成員プレゼン資料
                     秋下雅弘構成員のプレゼンテーション資料より

◇ 美原盤構成員(全日本病院協会副会長)から、「DPC入院患者への持参薬の使用は特別の理由がある場合以外は原則禁止されているので、通常、急性期病院の医師が薬を増やすことは考えられず、ポリファーマシーの原因は急性期病院に入院する以前の段階にある」とのご指摘があった。では、その「急性期病院に入院する以前の段階」がどこなのかと言えば、実は、急性期病院の外来診療なのである。それぞれの専門外来の処方薬を合わせると、あっという間に20剤以上になってしまうという実態がある。責任の所在を突きとめようというのではない。診療所のかかりつけ医も共に、専門外来の処方のあり方を今一度見つめ直す必要があるということを申し上げたい。

◇ 北澤京子構成員(京都薬科大学客員教授)が述べられたとおり、病気や薬の副作用について患者の不安を煽るような情報が溢れているにもかかわらず、ポリファーマシーに関する情報の提供はやや遅れているように思う。ジェネリックや残薬の問題が徐々に周知され、患者側の理解が深まってきたことからすれば、ポリファーマシーに関する情報提供についても積極的に行っていくべきであろう。

◇ 処方権は、医師法に基づいて医師にのみ認められた権限である。したがって、ポリファーマシー対策は、高度急性期医療に携わる医師から在宅医療に携わる医師まで、すべての医師がしっかりと問題意識を持って取り組むべき課題ある。そうであるとすれば、高齢者に対する安全な薬物療法について、医学部や研修医の時点から学ぶことができる教育体制の構築が求められよう。

◇ ポリファーマシーの問題には、多職種がチームでかかわっていくことが不可欠であり、私の考えでは、多職種がチームとなったかかわりの成功例として、栄養サポートチーム(NST)がある。処方権を持った医師が一員となる一定の権限を有したチーム作りをポリファーマシー対策にも取り入れてはどうか。

 他の構成員からは、「ポリファーマシーの問題は、報酬や財源との関連で考えられがちであるが、私自身は医療者として、日本の医療の質を上げるために取り組んでいきたい」(秋下雅弘構成員)、「慢性的な症状を多く抱える高齢者の適切な服薬については、医療用医薬品以外のOTC薬品(一般用医薬品)やサプリメントの使用状況も把握しておく必要性がある」(大井一弥構成員・日本老年薬学会理事)、「服薬による転倒・骨折の問題も視野に入れて安全対策や多職種連携も検討課題に含めているのだろうが、本検討会では、高齢者への医薬品の適正使用に焦点を絞って議論するべきではないか」(松本純一構成員・日本医師会常任理事)、「在宅医療・介護が国を挙げて推進されている。しかし、ファミレス社会(ファミリー[家族]がレス[ない])が本格化し、老老介護、さらには認認介護が進む中で、自分自身や配偶者の服薬管理ができる高齢者がはたしてどれくらいいるのか」(樋口恵子構成員・高齢社会をよくする女性の会理事長)などの意見がありました。

 検討会の最終取りまとめは平成30年度末を目途としておりますが、まずは、本年夏頃の中間取りまとめ(検討課題の整理と検討の方向性に関する取りまとめ)に向けて、2か月に1回のペースで開催される予定となっています。

○第1回高齢者医薬品適正使用検討会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
 ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000162483.html
 

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