医療と介護の同時改定にどう対処すべきか

官公庁・関係団体等

医療と介護の同時改定にどう対処

療養病床は老健施設との役割分担、
協働を重視していく (斉藤正身・厚労省介護保険部会委員)

 
  
 今日は社会保障審議会の介護保険部会の委員としてお呼びいただいたが、私としては、老人の専門医療を考える会(以下、考える会)の会長としての立場も含めて、お話ができればと思っている。

 老人病院の役割分担については、継続的な医学的管理と重介護を同時に必要とする高齢者をどう受け入れていくのか、広義のリハや質の高い生活をどう提供するのか、終末期や在宅ケア支援はどうするのか──。

 これはまさに、考える会の2代目会長の大塚先生がいわれている「キュアが大事なのではなく、その人の生活や人生が大事」、それが大もとにあって、ケアと必要な量のキュアがあればよいという考え方でずっと関わってきたのが考える会である。

 その中で大塚先生は、「特養、老健施設との機能の違いをさらに明確にしていく必要がある」といわれている。ということは、他の施設では対応できない重介護、重医療の高齢者の方を積極的に受け入れる、そういう姿勢が大事であるということである。

 今回関わらせていただいた介護保険部会で、特に地域包括ケアシステムを実現するのに重要なことは、今ある既存サービスが本当にこれでいいのか、そのサービスの有効活用や見直しがまず大前提にあるべきではないかと思っている。その上で、地域包括ケアシステムは老健施設が中心になり、医療機関がどのように関わっていくのかを考えていくことが重要だと考える。

 また連携、連携といっているが、うまくいかないのであれば、連携でない方法を考えることが必要だろう。その場合、介護保険と医療保険を同時に2本のレールで進め、お互いの専門性を活かし合う協働が大事である。療養病床に関しても老健施設との役割分担、協働を重視していくべきではないだろうか。全国老人保健施設協会と日本慢性期医療協会がもっと密に連携をとるべきだと考える。

 介護保険制度が導入されて10年が経過した。私も現場にいながら非常に感じることは、重介護、重度認知症の人たちが在宅に多くいらっしゃる現状がある。そういう人たちに対して、老健施設の通所リハで対応しきれるのか、今こそ療養病床がそういう役割を担うときではないかと思う。ぜひ重度対応の通所リハを併設していただきたい。

 東日本大震災後、私は毎週どこかに行って支援している。当院の職員は、埼玉県医師会の派遣ということで、3けたの数の人間が何らかのボランティア活動をしている。今回の震災は教訓だと思っている。

 いつも高齢者、介護保険ということで活動してきたが、もっと地域や社会のための活動を考えるべきではないか。そして、居場所、行く場所、座る場所をつくっていかなくてはいけない。利用者を選ばない、利用者が選ぶ。具体的に達成可能な目的があって、地域住民とともにやっていける場所をつくっていくことが大事である。
  
 
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