平成25年度第3回入院医療等の調査・評価分科会 報告

会長メッセージ 審議会

平成25年度第3回入院医療等の調査・評価分科会

 平成25年6月13日に今年度第3回の入院医療等の調査・評価分科会が開催され、武久洋三会長が委員として出席されました。
 第3回では、重症度・看護必要度の調査結果と、特殊疾患・障害者施設等の経過措置の状況について審議されました。
 
 重症度・看護必要度とは、A項目(モニタリング及び処置等)とB項目(患者の状況等)の評価からなっています。その評価方法は、院内研修を受けた者が毎日、記録と観察に基づいた評価を行い、推測での記入は行わない、という判断基準が定められています。平成24年度に本分科会が主体となって実施した「入院医療等における一般病棟、療養病棟等における長期入院等の実態調査」では、現在用いられている重症度・看護必要度の項目に、厚生労働科学研究の特別研究で検討された項目が追加され、調査が実施されました。
 
 調査結果をみると、重症度・看護必要度基準(A項目2点かつB項目3点)の該当患者の割合は、一般病床7:1から療養病床まで、すべての対象病棟を並べてみたところ、15:1が約18%と最も高く、7:1が高いわけではありません。また、亜急性期や回復期リハ病棟の該当患者は、それぞれ4%、2%に満たない状況でした。
 
 A項目について、7:1と療養病床を比較すれば、創傷処置、血圧測定、心電図モニター、免疫抑制剤の使用など、概ね7:1の方が高い割合となっていましたが、時間尿測定、呼吸ケア、スキンケア、降圧剤の使用など、療養病床の方が高いという項目も多くみられました。
 
 B項目については、現在の基準に用いられている項目はすべて、7:1より療養病床の方が該当患者の割合が高くなっています。ただし、今回の調査で追加された項目10項目のうち、身体的な症状の訴え、計画に基づいた10分間以上の指導、計画に基づいた10分間以上の意思決定支援、その他(緊急入院、個室管理)の4項目については、療養病床より7:1の方が該当患者の割合が高くなっています。
 A項目、B項目の中では、相関する項目もいくつかみられました。
 
 この調査結果について、安藤委員、石川委員から、重症度・看護必要度は行っている行為に対しての評価であり、患者の重症度を表していると言えるのかどうか。また、例えば呼吸ケアという項目からだけでは、重症者の呼吸ケアなのか軽症者の呼吸ケアなのかわからない、という意見が出されました。
 
 武久会長は、患者の病態によって処置が行われており、行為自体は看護であっても、必ず医師の指示がでている。刻々と変化する患者の状態に対しての処置等の行為である。医師と看護の連動であり、行為自体が患者の状態と関連している。
また、療養病床20:1の重症度・看護必要度基準の該当患者の割合は15%に及ぶ。しかし、このデータで示されている療養病床は、一般病床とのケアミックス型もあれば、療養病床単独の病院も一緒に集計されたもの。ケアミックス型の療養病床であれば、当然、重症度が高くなれば一般病床に転棟させ、状態が安定すれば療養病床に戻すということが行われているはず。療養病床単独の病院は、重症化しても療養病床の中で患者を診ている。もし、療養病床20:1単独で運営している病院だけのデータにすれば、重症度・看護必要度基準の該当患者の割合は、一番高いのではないだろうか。
 そして、重症度・看護必要度のデータからみても、亜急性期での該当患者の割合は非常に低く、該当患者が多い療養病床とは大きな開きがあることもわかる。
 患者が重症化した場合、一般病床でも、療養病床でも、患者の命を守ろうとする医師としての使命は同じである。診療報酬に関係なく、あらゆる医療技術を駆使して救命に心血を注ぐ。そして、お亡くなりになる時も、一般病床でも療養病床でも、その医療行為は同じである。医療の水準は、どこにいても同じでなければならない。
 現在の療養病床では医療区分を用いているが、医療区分の使命は終え、重症度・看護必要度のように、どの病床にも適用できる新たな基準を用いて、すべての病床を一連の流れとしてとらえることができるようにするべきではないか、と発言されました。

 筒井委員からは、今後に向けた重症度・看護必要度の項目の整理について、血圧測定、心電図モニターなど、機械が行っているものについては見直してもよいのではないか、という意見もだされました。

 分科会の後半は、特殊疾患、障害者施設等の経過措置についての議論に入りました。特殊疾患は、平成6年に新設され、療養病床にも算定が認められておりましたが、平成18年の改定で一般、精神のみ算定可となり、療養病床は外されました。その後、経過措置が3回にわたり延長され、対象患者を療養病床で診た場合は、平成26年3月末まで医療区分3が適用されることになっています。同じく、障害者施設等の経過措置では、対象患者を療養病床で診た場合は、平成26年3月末まで医療区分3が適用されることになっています。
 療養病床、障害者施設等、特殊疾患の患者の主病名を調査した結果、特殊疾患2は脳性麻痺、知的障害など、明らかに違った病態となっていますが、特殊疾患2を除く病床では、どれも、脳梗塞、脳内出血、肺炎、パーキンソン病など、ほぼ似かよった病名となっています。
 今回の調査では、特殊疾患と障害者施設等の経過措置がどの程度の患者に利用されているかが初めて調査されました。その結果、今回の調査で回答のあった病床からは、特殊疾患、障害者施設等について、ともに利用実績のないことが把握されました。

 武久会長は、一部の神経難病などを除き、療養病床と障害者施設等、特殊疾患(2を除く)はほとんど同じ病態である。療養病床とこれらの病床の関係を今後どうしていくのか。特殊疾患や障害者施設等は、超慢性期の病床と言ってもよく、看護師というよりは、臨床心理士などまで含む多職種でケアするべき患者が多い。そもそも、そういった患者を療養から外し、療養よりも環境の悪い一般病床に移したことが理解できない。今回のデータを見ても、療養病床と分ける必要はないと考える。これまでいろいろな病床種別が新設されてきたが、似ているものは一つにまとめ、診療報酬をシンプルにすることが行政的にもよいのではないか、と発言されました。

 石川委員からは、病名だけで判断するのではなく、それらの病床での重症度・看護必要度などの状況がどうなっているのかが知りたい、とのご意見がだされましたが、高智委員、嶋森委員、筒井委員から、経過措置は実態として利用されておらず廃止するべきであるとの声が挙がりました。

 日本では、基本的に同じ病態の人は、どの病床種別においても同じ医療が受けられるように、医療が平準化されています。病床種別の違いによって、例えば肺炎の治療のような医療行為が異なるわけではありません。そうであるならば、これからの社会情勢に対応するために、機能別の病床分化を行い、制度をもっと簡素化して国民にもわかりやすくし、同じ病態に対する医療行為は同じ評価とするべきではないでしょうか。

 本分科会は、平成24年度に実施された「入院医療等における一般病床、療養病床等に関する長期入院等の実態調査」の結果についての議論を進めています。8つのテーマのうち、本日の分科会で5つまでの議論が行われました。今後の分科会で、残る3つを議論し、その後、全体的な総括審議に入り、最終的に中医協に報告されることになっております。
 

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