介護情報、「医療との連携が希薄」── 橋本会長、介護保険部会の委員会で

会長メッセージ 協会の活動等 審議会

20250911_介護文書委員会

 介護DXの推進に向け、介護分野の文書をめぐる課題などを議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の橋本康子会長は介護情報について「医療との連携が希薄な感じがする」と指摘し、今後の方針を尋ねた。厚労省の担当者は「接続できる情報を段階的に広げていく」との意向を示した。

 厚労省は9月11日、社会保障審議会・介護保険部会「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」(委員長=野口晴子・早稲田大学政治経済学術院教授)の第15回会合を開催し、当会から橋本会長が委員として出席した。
.

01スライド_P3抜粋

.

 今回の会合は令和5年4月以来、約2年半ぶりの開催。厚労省はこの日の委員会に「介護分野の文書に係る負担軽減の取組の進捗等について」と題する資料を提示。令和4年11月の「取りまとめ」に示された5項目の方向性、その後の進捗状況などを報告した上で、今後の課題などについて委員の意見を聴いた。

.

デジタル化や負担軽減を進めていく

 厚労省老健局高齢者支援課の濵本健司課長は冒頭、「(電子申請・届出システムの利用状況などの)フォローアップ等が必要なので、本委員会を随時または定期的に開催することが有益とされている。今回はこのフォローアップのため開催させていただく」と伝えた上で、取りまとめの方向性を改めて確認した。
.

02スライド_今後の進め方

.

 取りまとめでは、「処遇改善加算や事故報告、ケアプラン、介護DX等に関して示された意見についても、厚生労働省として十分に受け止め、関係審議会における検討の中で積極的に活かし、デジタル化や負担軽減を進めていく」としている。
.

03スライド_その他の課題

.

 これらの項目は、「主な負担軽減策の方向性」のうち、5番目の「その他の課題」に位置付けられている。

.

簡素化や利便性向上、ローカルルール改善

 主な負担軽減策の方向性①(標準様式)について濵本課長は、ローカルルールの実態等の調査結果を令和7年3月に厚労省ホームページに掲載したことなどを報告した。
.

04スライド_P7

.

 また、②(専用の窓口)については、これまでの要望件数や対応などを報告。「窓口を設置した令和4年度に要望が集中したが、5年度以降は減少している」とし、その要因について「積極的な周知が不足していた点もある。厚労省ホームページ等で周知するほか、機会を捉えて関係者の皆さまにも周知し、実効性のある取組を図ってまいりたい」と述べた。
.

05スライド_P10

.

 質疑で、清原慶子委員長代理(杏林大学客員教授)は「簡素化や利便性向上、とりわけローカルルールへの対応について一定の改善が見られることの1つの証左」と評価した上で、「窓口の周知については引き続きのご努力をお願いしたい」と述べた。
.

06スライド_P11

.

 厚労省によると、これまでに寄せられた要望の件数は累計682件。今年4月から7月末は12件にとどまっている。このうち「対応済み」などを除く8件は、「申請書類・手続きの簡素化」(3件)、「電子申請届出システム」(3件)など。

.

伴走支援やフォローアップを重点的に

 ③(電子申請・届出システム)については、自治体向け「手引き骨子」の作成や改定状況などを報告。濵本課長は「自治体におけるシステムの普及に向けた伴走支援を実施している」と説明。自治体の準備完了は令和8年3月31日までとされており、「伴走支援やフォローアップを重点的に行っていくことが必要と考えている」と述べた。
.

07スライド_P17

.

 ④(地域による独自ルール)については、「実態調査の結果を厚労省ホームページに掲載している」と紹介したほか、「窓口の周知や、寄せられた要望への個別の的確な対応を引き続き進めていくことが重要と考えている」と伝えた。

.

電子カルテと介護保険情報がつながれば

 ⑤(その他の課題)については、来年4月から本格運用を開始する「介護情報基盤」の稼働後のイメージを紹介した上で、「ケアプランデータ連携システム」について説明した。
.

08スライド_P24

.
 
 濵本課長は「介護情報基盤とケアプランデータ連携システムの2つを統合することにより、事業所はケアプラン情報の一元的な管理が可能となることや、ランニングコストの軽減が見込まれること、また普及促進策を一体的に行うことで相互利用が促進されるといったメリットが考えられる」と期待を込めた。
.

09スライド_P24抜粋

.

 質疑で、橋本会長は「基盤稼働後」に示された「主治医意見書電送」「介護情報の参照」に関連して質問。「電子カルテと介護保険情報がつながれば有用だが、手書きのままでは負担軽減にならない」と指摘した。橋本会長の発言要旨は以下のとおり。

【橋本康子会長の発言要旨】
 介護保険分野の中での文書負担軽減は、説明いただいたように大きな効果を上げていると思う。そこで、24ページ(介護情報基盤の活用イメージ)について質問する。 
 「現在」と「基盤整備後」という図式があり、右側の「基盤整備後」の真ん中に「全国医療情報プラットフォーム」がある。「介護情報基盤」については、今までも説明していただいており、そういうプラットフォームができるということは理解しているが、「医療機関等」との連携のところには「主治医意見書電送」や「介護情報の参照」などが書かれている。ここには、例えば医療機関側が有している薬剤情報や患者の手術・入院歴など、そういった情報、医療内容も含まれるのだろうか。
 このような情報は、主治医意見書から引っ張ってくるということもあるかもしれないが、現在、多くの医療機関がケアミックスのような形で、介護施設等を併設している。そのため、電子カルテと介護保険の情報がつながればいいが、現在はつながっていない状況が多いように思う。医療機関側としては、患者の介護情報が知りたいときに、こういうプラットフォームができて、そこで見ることが今後、可能になってくれば非常に便利だし、有用であると思う。
 この図では、「医療機関等」との情報のやり取りが書かれているが、26ページ(介護情報基盤とケアプランデータ連携機能の統合のメリット)や、27ページ(連携機能の統合イメージ)、そして28ページ(事故情報の活用)の「目指したい方向性」などを見る限りでは、介護情報と医療との連携がやや希薄な感じがしている。文書負担の軽減とは直接の関係はないかもしれないが、こうした医療・介護の情報がつながっていないと、書類を手書きで作成しなければいけないことになる。そうすると、また手間がかかってしまって負担軽減につながらないのではないかと思う。24ページの図で、医療との連携はどれぐらいのボリュームなのか、質問させていただきたい。

.
【厚労省老健局老人保健課・堀裕行課長の発言要旨】
 ご質問いただいた医療側との情報の共有というのが、どういうふうに進められる予定なのかということだが、24ページの資料をご覧いただきたい。まず来年4月から稼働を予定している介護情報基盤については、左側の「現行」で、介護保険の中で紙ベースでやり取りをされているさまざまな情報について、まずは電子的なやり取りをできる基盤としてスタートするということであり、その中に主治医意見書も1つのものとして含まれている。
 ご指摘いただいた医療側と介護側との間でやり取りされる情報には、さまざまある。例えば訪問看護の指示書、訪問看護の報告書、診療情報の提供書等については、今後さらに標準化に向けて詰めていって、さらに、ここでどういうふうに取り組んでいくかということを検討していくということなので、段階的に、医療との間の接続について、やり取りをできる情報については引き続き検討した上で広げていくことを考えている。

.
この記事を印刷する この記事を印刷する


« »