「特定看護師の活躍に介護報酬を」 ── 11月6日の定例会見で武久会長

会長メッセージ 協会の活動等 役員メッセージ

武久洋三会長_2020年11月6日の定例会見

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長は11月6日の定例記者会見で「特定看護師が在宅医療や特養、老健など介護保険の分野で活躍しているが、その報酬はゼロである」と指摘した上で、「介護分野における特定看護師の行為に対し、それなりの評価をしていただきたい」と訴えた。

 武久会長は「特定看護師の活躍が在宅分野に広がることで要介護者が改善したり、寝たきりが減るようになれば非常に良いことだ」と強調。「介護保険の訪問看護など、特定看護師が在宅分野で医療行為を実施することによって、医師の往診頻度が少なくて済むこともある」とメリットを説明した。

 その上で介護報酬上の評価に言及し、「厚労省に検討していただけたらありがたい。マスコミの皆さんも、介護分野における特定看護師の活躍に対してエールを送っていただきたい」と呼び掛けた。
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20201106記者会見写真
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第28回学会、「楽しく、みんなで学ぼう」

 この日の会見は、オンライン形式で開催。武久会長のほか、矢野諭副会長、田中志子常任理事が出席し、池端幸彦副会長が司会進行を務めた。

田中志子常任理事_2020年11月6日の定例会見 今回の主なテーマは、①第28回日本慢性期医療学会<オンライン開催>のご案内、②特定看護師を取り巻く状況が様変わりしてきた──の2項目。

 第28回日本慢性期医療学会については、学会長を務める田中志子常任理事(医療法人大誠会・内田病院理事長)がシンポジウムの内容などを紹介。「それぞれの立場のお考えをぶつけ合っていただき、面白い討論会になる。楽しく、みんなで学ぼうという姿勢で取り組みたい」と抱負を語った。

 第28回日本慢性期医療学会は12月2・3日の2日間にわたり、WEB上で開催する予定となっている。
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特定看護師、「在宅領域で実力を発揮」

 続いて武久会長が「特定看護師を取り巻く状況が様変わりしてきた」と題して、特定看護師の現状や今後の課題などを述べた。

 武久会長は、特定看護師が急性期の分野で多く活動している一方で、在宅分野での活躍が少ないことを指摘し、「今後は慢性期医療の分野にも広がることを期待している」との認識を示した。

 その上で武久会長は「医師や看護師が多く配置されている急性期病棟より、医師の関与の少ない在宅領域こそが、特定看護師の実力を十二分に発揮できる最適な領域である」と述べ、介護報酬などで評価する必要性を指摘した。
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在宅分野の特定看護師を増やす

矢野諭副会長_2020年11月6日の定例会見 この日の会見では、当会で実施している看護師特定行為研修の修了者を対象としたアンケート調査の結果を公表。同研修の責任者を務める矢野副会長が特定行為の実施率や今後の課題などを説明した。

 矢野副会長は「創傷管理における陰圧閉鎖療法は、特定行為研修が始まる前は慢性期医療の現場では導入されていなかった行為だが、この研修を機に急速に普及し、治癒率の向上に貢献している」と指摘し、「他にも在宅や特養、老健などの現場でさまざまな行為が実施されている」と評価した。

 その上で矢野副会長は「特定看護師は、医師の配置数が少ない慢性期病院や特養などの介護施設、何よりも訪問看護サービスで能力を発揮する」と強調。「今後は在宅分野の特定看護師をもっと増やす必要がある。慢性期病院、居住系施設、特養、老健などで従事していただける特定看護師が増えるとありがたい」と語った。

 この日の会見の模様は以下のとおり。なお、会見資料は日本慢性期医療協会のホームページをご覧いただきたい。
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02_日慢協記者会見資料_2020年11月6日

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■ 初めてのオンライン学会

[武久洋三会長]
 本日、定例の常任理事会を開いた。それらを踏まえて記者会見を行う。よろしくお願い申し上げる。

 まず、12月2日・3日にオンラインでWEB開催する「第28回日本慢性期医療学会」について、学会長の田中志子先生からご案内したい。
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[田中志子学会長(日慢協常任理事、医療法人大誠会・内田病院理事長)]
 今学会のテーマは、「2024へ向けた健康長寿と地域共生社会~ 慢性期医療の役割~」である。
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01_第28回日本慢性期医療学会ポスター

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 現在、施設登録が285、個人登録が70である。共催セミナーは6社6セミナー、展示が2社、そして広告が14社という形で、大変多くの方々のご支援をいただいている。

 今回は、初めてのオンライン学会であるので何か特長を出せないか、楽しいことができないかと考えた。

 当院は群馬県にあり、私は群馬県慢性期医療協会の会長も務めている。同協会は本学会の事務局でもある。そこで、学会の事務局として群馬の「WEB物産展」をしようと考えている。
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■ 楽しく、みんなで学ぼう

 学会のプログラムをご紹介する。目玉は、シンポジウム1の「ディベート」で、各団体の先生方にご出席いただく。コロナの影響も含め、これからどうなるのか、それぞれの立場のお考えや意見をぶつけ合っていただく。面白い討論会になるのではないかと期待している。
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01-1_第28回日本慢性期医療学会のプログラム

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 そして記念講演は、「夢は叶う」と題し、2040地球環境はどうなるか、持続可能な社会を皆さんと考えたい。現在、SDGs(持続可能な開発目標)が大変注目されている。環境を良くするために布やプラスチックなどのリサイクルに取り組まれている日本環境設計株式会社取締役会長の岩元美智彦先生にご登壇いただく。
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01-2_第28回日本慢性期医療学会のプログラム

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 シンポジウム2は、「外国人労働者の働き方の行方」と題し、当会常任理事の富家隆樹先生が座長を務める。介護人材の受入れの現状や地域共生社会を見据えた今後の取組みについて、厚労省のご担当者にもご登壇いただく。
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02-1_第28回日本慢性期医療学会のプログラム

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 シンポジウム3は、AI・ICTの実用化はどこまで推進されるのか、医療におけるデジタル化、生産性向上に有効な技術などを探る。
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02-2_第28回日本慢性期医療学会のプログラム

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 シンポジウム4は、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)について、当会副会長の中川翼先生と共に私も座長を務めさせていただく。ACP関係は今学会で3回目の討論となる。
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03-1_第28回日本慢性期医療学会のプログラム

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 シンポジウム5は認知症について。地域共生社会の中で認知症の人とどう生きるか。当会常任理事で京浜病院院長の熊谷頼佳先生に座長を務めていただく。
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03-2_第28回日本慢性期医療学会のプログラム

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 最後のシンポジウム6は「リハビリテーションで日本を改革できているか?」と題して、慢性期の立場からさまざまな先生方にご講演いただく予定である。
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04_第28回日本慢性期医療学会のプログラム

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 また、一般演題はおかげさまで426の演題となった。初めてのオンライン学会であるが、大変多くの演題発表者が集まっている。

 WEBサイトのQRコードもご用意したので、ぜひ活用していただきたい。
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05_QRコード_第28回日本慢性期医療学会HP

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 そのほか今回初めての試みとして、シンポジウムとシンポジウムの間の休憩時間に、各病院の紹介動画を配信する予定である。いろんな病院のいろんな良さがある。ぜひご覧いただきたい。現在、18施設からの手挙げがあるので、とても楽しみにしている。

 このような形で初めてづくしの学会である。感染症対策の大変な中で制約もあるが、何とか楽しく、みんなで学ぼうという姿勢で取り組みたいと考えている。ぜひ、記者の皆さんも注目してご参加いただければと思う。
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■ 在宅分野の特定看護師が少ない
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[池端幸彦副会長]
 続いて、武久会長から本日のプレゼンテーションをお願いしたい。
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06_日慢協記者会見資料_2020年11月6日

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[武久洋三会長]
 特定看護師を取り巻く状況が様変わりしてきた。特定看護師の制度は2015年から始まったが、しばらくニュース性はなかった。しかし最近、MEDIFAXに頻繁に掲載されている。

 われわれ日本慢性期医療協会は制度発足時から積極的に参加し、現在222名の修了者が特定行為に対応している。これは特定看護師全体の約1割を占めている。非常に大きなボリュームとなっている。

 MEDIFAXが7月3日に報じたところによると、規制改革推進会議が医療・介護職のタスクシフトとして看護師の特定行為研修制度や救急救命士の活用を盛り込んだ。
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07_日慢協記者会見資料_2020年11月6日

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 医療・介護分野は、「医療・介護関係職のタスクシフト」「介護サービスの生産性向上」などで、タスクシフトについては、まず看護師の特定行為研修制度の普及促進を挙げている。

 具体的な実施事項の1つに、「本研修制度の利用を十分に拡充するため、特定行為研修修了者の配置等に対する診療報酬上の評価を含めた促進策をさらに実施する」よう記載した。今年度に検討を開始して来年度に結論を出すよう求めたという。

 また厚労省の検討会では、特定看護師に業務移管している旨を広告することができるようになった。

 10月14日付けのMEDIFAXによれば、在宅領域版の特定行為に関する手順書例集を厚労省が公表した。

 それによると、主治医が手順書を作成する際の参考となるように、2015年度に作成した「特定行為に係る手順書例集」に掲載されている手順書例の中から、領域別パッケージ研修の「在宅・慢性期領域」の4行為の例を抽出し、19年度の看護職員確保対策特別事業「看護師の特定行為研修に係る実態調査・分析等事業」で作成されている。

 在宅領域版の手順書例集では、同領域で就業する修了者は全修了者のうち約7%であることを指摘している。在宅分野での特定看護師の活動が少ない。
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■ 主治医の理解が十分でない

 特定看護師は、2025年に向けて在宅医療等の推進を図っていくため、医師の手順書に従って診療行為を実施する特定看護師を養成するために創設された。

 しかしながら、在宅領域で就業する特定看護師は令和元年10月時点で、特定看護師全体のわずか7%にとどまっている。なぜか。

 在宅領域では、患者ごとに異なる医療機関の医師が主治医となって手順書を作成しなければならない。特定看護師制度に対する認知度が低く、主治医の理解が十分でない。このため、在宅領域で特定看護師として業務するのが困難となる場合がある。

 では、手順書とはどのようなものか。2019年4月に創設された領域別パッケージ研修の「在宅・慢性期領域」の4行為の手順書例がある。

 その4行為は、①気管カニューレの交換、②胃ろうカテーテルまたは胃ろうボタンの交換、③褥瘡または慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去、④脱水症状に対する輸液による補正──である。これら4行為を抽出し、実際に現場で用いられている手順書を参考に改変されたものである。

 このうち④は、次のとおりである。
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13_日慢協記者会見資料_2020年11月6日

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 高齢者は急性期病院で脱水になったりして、在宅療養中にも脱水や低栄養になることがある。これは1例であり、これほど詳しくなくても結構なので、医師にはこうした手順書を作成していただく。
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■ 急性期病院での活躍が多い

 看護師特定制度は、本来は医師しか行えない医療行為を、それぞれの特定行為研修を修了した看護師が医師の手順書に従って単独で実施することができる制度である。

 2015年に21区分38行為が設定され、指定研修機関は今年8月時点で222箇所ある。そのうちの1箇所である日本慢性期医療協会で研修し、特定看護師になったのは全特定看護師のうちの約1割である。

 特定看護師は近く3000人を超える見通しだが、2025年に10万人という当初の目標には程遠い。しかも在宅領域では7%しか対応できていない。

 現状はこのようになっている。今年7月現在、修了者総数は2,646人、修了者延べ人数は1万7,982人である。
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15_日慢協記者会見資料_2020年11月6日

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 現在、6つの領域の特定行為研修のパッケージ化が認められているが、このうち5つは急性期中心の領域である。
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16_日慢協記者会見資料_2020年11月6日

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 これを見ると、特定看護師は主として急性期の現場での活躍を期待されているようである。指定研修機関も大学や急性期病院が多い。

 2020年度から、総合入院体制加算の施設基準に特定看護師の複数名配置が評価された。また麻酔管理料(Ⅱ)では、麻酔を担当する医師の一部の行為を特定看護師が実施しても算定できるようになった。しかし、いずれも急性期医療の分野である。
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■ 在宅領域で実力を発揮できる

 今後は、慢性期医療の分野にも広がることを期待している。医師や看護師が多く配置されている急性期病棟より、医師の関与の少ない在宅領域こそが、特定看護師の実力を十二分に発揮できる最適な領域である。

 すなわち、医師が多い急性期病院よりも、医師が不足している領域において、特定看護師は有用であると思っている。

 当協会での受講者数の推移である。今年はコロナの影響で少なくなっている。
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18_日慢協記者会見資料_2020年11月6日

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 特定行為は21区分38行為である。このスライドの黄色い部分が当協会で研修を実施している。このような多くの行為について研修を受けていただき、慢性期の病棟や在宅の訪問看護などで役立てていただいている。
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19_日慢協記者会見資料_2020年11月6日

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 こうした中で、今年7月に看護師特定行為研修の修了者222人を対象にアンケート調査を実施した。「中心静脈カテーテルの抜去」は第4~8期生128人、「PICCの挿入」は第5~8期生102人となっている。このうち、約半数から回答を得た。

 このほど、アンケート調査の結果をまとめたので、ご担当の矢野先生からご説明していただく。
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■ 研修を機に普及し、治癒率向上に貢献
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[矢野諭副会長]
 私は特定行為研修の責任者をしている。今回のアンケート結果についてご報告したい。第1~8期生までを対象に実施し、回答率は44%だった。
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21_日慢協記者会見資料_2020年11月6日

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 修了者の所属施設を見ると、病院が非常に多い。そのほか特養、老健、訪問看護領域、診療所の方も入っている。

 在宅領域は先ほど7%と説明があったように、当協会でも十数名で7~8%となっている。
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22_日慢協記者会見資料_2020年11月6日

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 今年4月から7月までの3カ月間における実施状況を見ると、呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連のうち、侵襲的陽圧換気の設定の変更は1割程度あるが、ほかの行為は少ない。
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23_日慢協記者会見資料_2020年11月6日

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 実施率の高いものとして、呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連の気管カニューレの交換が最も多く56.1%。次いで、中心静脈カテーテルの抜去が53.7%、末梢留置型中心静脈注射用カテーテル(PICC)の挿入が48.9%となっている。

 創傷管理関連では、褥瘡または慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去も半数を占めている。創傷に対する陰圧閉鎖療法は約4分の1の実施率である。
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24_日慢協記者会見資料_2020年11月6日

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 実は、この創傷に関する行為は、特定行為研修が始まる前には慢性期医療の現場では導入されていなかったが、この研修を機に急速に普及し、褥瘡の治癒率の向上に貢献している。

 このほか、中心静脈栄養の管理も実施されている。感染に係る薬剤投与関連は行為によって難易度は異なるものの、一定程度は実施されている。

 血糖コントロールに係る薬剤投与関連はインスリンの投与量の調整で、23.5%。精神科領域では、抗けいれん剤の臨時の投与が多い。

 このように、在宅や特養、老健など、それぞれの現場でさまざまな行為が実施されている。
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■ 特定行為が生かされている

 多く実施されている特定行為をまとめると、最も多いのが「気管カニューレの交換」56.1%、次いで「中心静脈カテーテルの抜去」53.7%、「褥瘡または慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去」50.0%、「末梢留置静脈注射用カテーテルの挿入」48.9%──などだった。

 特定行為が実施されていない理由としては、「対象患者がいない」という回答が多くを占めた。

 特定行為研修修了者として新たに担うようになった業務内容や活動については、「知識を生かして、地域医療連携業務を担っている」「後輩育成や実習生への指導を行うようになった」「他病棟の患者の処置を行うようになり、医師との意見交換をする機会が増えた」などの回答があった。

 当院でも、特定看護師が病棟にいる時は、気管カニューレの交換や褥瘡処置をお願いする機会が増えている。

 このほか、褥瘡評価や感染対策、医療安全などの委員会活動でも、特定行為研修で得た知識は生かされている。
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■ 診療所医師の信頼が不十分

 一方、特定行為を実施する上での問題点や課題は何か。「病棟内に医師が常駐しているため、特定行為を実施する機会が得られにくい」との回答があった。タイムリーに実施しなければいけないケースもあるので、医師がやってしまう場合もある。

 「特定行為に対する医師や家族の理解が得られにくい」との声もあったが、当院ではご家族の理解はおおむね良好で、入院や入所の時にご家族に特定看護師の実施について承諾を得ている。ほとんどの方が「それは非常にありがたい」とお答えになる。

 そこで問題は、「周辺の診療所医師への浸透が不十分」という意見である。特定看護師に依頼する場合、診療所医師とは顔が見える関係にあるが、特定行為を任せていいと医師本人が思うだけの力量があるか、この信頼が不十分であるという。

 確かに、診療所医師の近くで常に仕事をしているわけではないので、特定行為の資格だけでは力量を把握できないということで、不安を感じておられる。一般的にクリニックの医師の理解はあまり良くないので、日本医師会の協力が得られるように推進する必要があると考えている。
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■「チーム在宅のすすめ」

 こうした状況を踏まえ、私たちは「チーム在宅のすすめ」を提唱したい。在宅医療も慢性期医療も、そして急性期医療もそうだが、チームで動いている。

 1人の開業医の肩に在宅療養患者の全てが乗ることは無理である。医師・特定看護師をはじめとする、さまざまな職種がサポートする。あるいは専門性を生かした「チーム活動」が重要になる。すなわち、チーム医療のキーパーソンとして特定看護師が関わる。在宅医療をチームで支えることが今後さらに求められる。

 また、今後は介護分野に医療がどんどん関与しなければならない。介護施設に看護師がいるか、いないかによって家族の信頼度がまるで異なる。特養では、夜間に医師が常駐しなければならないぐらいに医療必要度の高い入所者が増えている。そこで、特定看護師が24時間常駐すれば、より信頼度は増すだろう。
 
 特養で働く看護師には優秀な者が多い。1人で判断して1人で対応する。当協会の研修修了者でも、特養に勤務している特定看護師はかなり幅広い活動をしている。あとに続く者がどんどん増えて、特養の特定看護師が増えている。
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■ 在宅分野の特定看護師を増やす

 特定看護師は、インフルエンザの流行期などに感染症対策で非常に活躍してくれた。そのほか、精神科の薬の調整や比較的軽度の感染症の内服の治療、脱水の補正など、かなりの行為を担っている。特養の看護師こそ特定看護師であるべきだと思う。

 特定看護師は、医師の少ない慢性期病院や特養などの介護施設、何よりも訪問看護サービスで能力を発揮する。もちろん急性期病院にも特定看護師は必要だが、特に慢性期病院や居住系施設、特養、老健、在宅で、特定看護師がますます活動して力を発揮していただくことを期待している。

 看護師には、さまざまなキャリアがある。最初はやはり高度急性期を目指す看護師が多い。その後、結婚や出産などがあり、看護職との両立を図るために、次なる活躍の場として地域の多機能病院や在宅専門の医療機関などを選び、いろいろな領域で活躍する。

 そうした中で、特定看護師の資格を取ることは非常に活動の幅が広がるし、自らのキャリアアップ、スキルアップになることを強調したい。もちろん、高度急性期病院など最新医療の環境で活躍する特定看護師も必要である。すでに麻酔科領域では、診療報酬上で評価されている。

 今後はやはり在宅分野の特定看護師をもっと増やす必要がある。慢性期病院、居住系施設、特養、老健などで従事していただける特定看護師が増えるとありがたい。私からは以上である。
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■ 介護分野の特定看護師にエールを
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[武久洋三会長]
 これから冬を迎える。新型コロナの患者さんは一部の急性期病院だけでなく、診療所にも来るし、また当然のことながら地域の民間病院にもたくさん来る。そういう患者さんに対し分け隔てなく、きちんと診断をして、しかるべき地域の病院を紹介する。

 こうした現場の第一線で、日慢協の会員病院も頑張っている。できる限り、コロナ対策に努めていきたい。コロナへの対応では、特定看護師も非常に活躍している。

 特に在宅での活動、すなわち在宅医療や特養、老健など介護保険の分野で特定看護師が活躍しているが、これに対する報酬はゼロである。そのため、介護分野における特定看護師の行為に対し、それなりの評価をしていただきたい。特定看護師の活躍が在宅分野に広がることで要介護者が改善したり、寝たきりが減るようになれば非常に良いことだと思う。

 介護保険の訪問看護など、特定看護師が在宅分野で医療行為を実施することによって、お医者さんの往診頻度が少なくて済むこともあるので、ぜひ厚労省に検討していただけたらありがたいと思っている。また、マスコミの皆さんも、介護分野における特定看護師の活躍に対してエールを送っていただきたい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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