「公平な介護保険制度を」 ── 11月14日の介護保険部会で武久会長
日本慢性期医療協会の武久洋三会長は11月14日、今後の医療・介護提供体制などをテーマにした厚生労働省の会議で「介護保険は公的な制度であるから公平でなければいけない。どこに住んでいても適切な医療・介護サービスを切れ目なく受けることができるように、今後もそのようなスタンスで介護保険制度を運営していただけるとありがたい」と述べた。
厚労省は同日、社会保障審議会(社保審)の介護保険部会(部会長=遠藤久夫・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第85回会合を開き、介護保険制度の見直しに向けて「医療と介護の連携の推進等」などを議題に挙げた。
厚労省はこの中で、医療と介護の連携の推進に関する「検討の視点」の視点として、「中重度の要介護者も含めどこに住んでいても適切な医療・介護サービスを切れ目なく受けることができる体制整備」を挙げた。
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質疑で武久会長は、「どこに住んでいても」の記述に着目。過疎地における医療・介護サービス不足などの問題に言及し、「民間事業者は往々にして利益が見込める地域にしか開設しない。資本主義のままに、公的介護保険を任せていいのか」と問題提起。「民間の一般事業者にはなるべく過疎地でサービスを提供していただくような対策ができないか。公的な介護保険事業者と、指定を受けずに開設する事業者との間に大きな格差ができてしまい、公平な介護保険制度ではなくなってしまう」と危惧した。
これに対し、厚労省老健局老人保健課の眞鍋馨課長は平成30年度の診療報酬・介護報酬同時改定を振り返り、「医療と介護のサービスが相互乗り入れできるように、そして医療と介護が切れ目のないように配慮した。高齢の患者さんが要介護者になっても医療・介護サービスを円滑に受けられるような改定がなされたと思っている」とコメント。改定効果の検証については、「介護給付費分科会での議論になろうかと思う。現在、前回改定の検証調査を実施している」と説明した上で、「現場にどのような影響を与えたかを調査し、次回改定に向けて引き続き検討していきたい」との考えを示した。
【武久会長の発言要旨】
介護保険は公的な制度であるから公平でなければいけないというのが原則である。従って、保険者と被保険者の関係については、保険料に見合ったサービスが提供されることがまず基本的なことであると思う。
そこで、資料2について質問したい。非常に重要なことが書いてある。すなわち、介護報酬について、「診療報酬と同時改定となった平成30年度改定では、中重度の要介護者も含めどこに住んでいても適切な医療・介護サービスを切れ目なく受けることができる体制整備等を行った」と書いてあるが、どのようなことを行ったかを教えていただきたい。また、その結果としてどのように変わったのかについてもお知らせいただきたい。
というのは、「どこに住んでいても適切な」という点について、現状を見る限り疑問を感じるからである。例えば、特養や老健や病院は都道府県等による許可がないとオープンできないのだが、民間の一般事業者は都市部で自由に開設できる。民間事業者が運営する介護施設は公的なものではないが、訪問や通所などのサービスにもどんどん参入している。
問題は、このような民間事業者は利益が見込める地域にしか開設しないことである。資本主義のままに、公的介護保険を任せていいのか。「どこに住んでいても適切な医療・介護サービス」ということにならないのではないか。民間事業者の中には、莫大な利益を出している所もある。社会福祉法人に関しても利益率の高いところがある。
こうしたことを考えると、民間の一般事業者にはなるべく過疎地でサービスを提供していただき、利益はあまり出ないけれども協力していただくとか、そのような対策ができないものだろうか。そうしなければ、公的に許可された介護保険事業者と、指定を受けずに開設する事業者との間に大きな格差ができてしまい、公平な介護保険制度ではなくなってしまうような気がする。私は医療・介護の現場に真っただ中にいる者なので、そのような印象を強く持っている。
資料に記載されている先ほどの内容について、どういうことを行ったから、どのようになったのか。もし分かれば教えていただきたい。どこに住んでいても適切な医療・介護サービスを切れ目なく受けることができるように、今後もそのようなスタンスで介護保険制度を運営していただけるとありがたい。
(取材・執筆=新井裕充)
この記事を印刷する2019年11月15日