認知症患者の人権と尊厳を守るには

役員メッセージ

認知症患者の人権と尊厳を守るには

■ 討論 
 

 4名の発表後、まず座長から有吉先生、田中先生に質問が投げかけられた。

 現在、介護施設においては3要件を満たさないと抑制は禁止されているが、医療の世界ではこのルールはないということに関してだが、有吉先生は、「医療必要度に若干の差があるものの、医療療養だからといって抑制は許されるものではない」と述べられた。

 田中先生も、「どちらであれ倫理観に変わりがあるはずはなく、身体拘束しないように対応している」とのことであった。

 池元さんには、看護師として認知症の患者を看護をするうえで、家族の力に特にこだわられる理由を問われた。

 「まず、看護師として患者に関する情報をできるだけ多く持ちたい。その情報源は家族であり、家族と親密になることにより患者の性格だけでなく、趣味嗜好にまで踏み込んで、そのあたりから患者の心の安定をもたらす方法を模索する。さらに、看護を行う上で患者の病態を同じように観察させ、場合により病状が悪化する場合、一緒にどうしたらいいかを考え、回復させるよう努力する。そうすれば、結果は別として納得のいく看護ができるようになるだろう」と述べられた。

 続いて家族の会の西村さんに意見を求められた。

 彼女はこのシンポジウムに出てこられた先生方に感動された様子で、今後このような考え方が広められることを期待された。会場からも否定的な意見はなく、今後も楽しく工夫しながらやっていただきたいとの意見があった。

 最後に有吉先生から、「認知症の患者で一番問題なのは摂食と排泄だ」と発言、これがまさに人としての尊厳に関わるのではないかと指摘された。最後まで口から食べていただくよう努力すべきであり、そうすれば必ずご家族から「不必要な延命は結構です」といわれる時代が来るであろう。

 さらに、排泄ケアもおむつ替えもスタッフには大変な仕事の一つだが、しかし排泄ケアも創意工夫によっては、そこに楽しみも出てくる。さらに、経費をかけないよう工夫をすることにも喜びを感じるようになる。

 今、さまざまな種類のおむつがたくさん出ている。それをその時々に応じて使い分けるという時期でもある。有吉先生は最後に、「摂食と排泄ケアが今や最重点課題だ」と述べられた。

 このシンポジウムを終えるにあたって、認知症患者の人権と尊厳を守るには、さまざまな職種が認知症患者への人としての思いやりを持つことと、その人に不快感を持たせないようにするための創意工夫が必要と考えられた。

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