認知症患者の人権と尊厳を守るには

4.西村敏子氏(北海道・北海道認知症の人を支える家族の会)
西村氏はまず、組織の概要を説明された。「北海道認知症の人を支える家族の会」は昭和62年に設立された民間団体で、認知症の介護相談、介護者が集う場の提供、認知症の理解を深める啓発等を行っている組織である。
創設当時は認知症の患者を抱えている家族は、できるだけ世間に知られないようにし、情報や社会資源の少ない中、孤軍奮闘していたようである。
平成12年に介護保険制度が創設され、16年には認知症と呼称が変わり、17年からは「認知症を知り地域をつくる10か年」と「認知症サポーター100万人キャラバン」、また医師を対象としてかかりつけ医研修が始まった。
平成16年10月に京都で「世界アルツハイマー協会の国際会議」が開かれ、「認知症の人は何もわからない人」ではないことをご本人の言葉で語られ、大きな反響を呼び認知症を取り巻く環境が少しずつ変わってきたようである。
平成18年4月からは「高齢者虐待防止法」が施行され、ようやく認知症の人の尊厳に焦点が当てられるようになってきた。とはいえ、認知症が疑われた時や、周辺症状が激しく入院が必要な時、あるいは終末期など医療と密接に関係がある状況になった場合、しばしば医療の現場で本人、家族が辛く感じる場面が少なくない。3症例を紹介された後、家族としての思いから次のようなことを述べられた。
○患者家族としての思いから
・ 心は揺れ動いている。
・ 身体拘束されている姿を見るのは辛いが、連れて帰ることはできない。
・ 胃ろうについては複雑な家族の思いがある。
・ 本人に言葉をかけてほしい。
○医療に望むこと
・ 認知症の理解を。
・ 家族・本人の思いを受け止めた関わりと個別ケアを。
・ 医療環境に配慮を。
・ 情報提供と丁寧な説明を。
・ 切れ目のない支援を。

2011年8月2日