認知症患者の人権と尊厳を守るには

役員メッセージ

認知症患者の人権と尊厳を守るには

2. 田中志子氏(群馬県・医療法人大誠会理事長)

 田中先生から各論として、現場からの提言の発表があった。

 まず、「あなたは縛られることを理解できない人を縛れますか?」「あなたは大事な人を縛ることができますか?」「あなたは大事な人が縛られている姿を見つめることができますか?」と問いかけ、さらに急性期、慢性期とその病態像は変わるものの、プロフェッショナルとして安易に縛ってはいけないという信念を持つよう教育するとのことであった。

 さらに、最近身体拘束を見たことがないという職員が増えてきたことから、何事も体験することで相手の立場で物事が見られるようになるのではとの考えで、新年度の新人職員入職に先駆けて、ベテランの職員に身体拘束体験をさせるようにしていると話された。介助されるつらさや、何もすることのない時間の長さに気づくそうである。

 さらに現場で車いすに縛り付けたり、4本柵のベッドで拘束しないといけないような人は、田中先生から見ればその人たちは、動こうとするだけの意欲と筋力があるので、床に下ろして自由にさせてあげれば、一種リハビリにもなるとコメントされた。さらに、抑制防止の工夫を紹介された。

 最初にベッドサイドにセンサーマットを敷いた例の紹介で、このマットの上に患者さんが乗ると、ナースコールが鳴る仕組みになっている。ベッドから落ちても衝撃が吸収されるようなマットの工夫をされたり、ナースステーションのすぐそばに患者さんを連れてきて、観察しやすいセッティングにされる様子も報告された。さらにベッド柵に付けるナースコールも紹介された。

 ついで視点を変え、楽な姿勢を取らせてあげれば無理やり下りようとしたり、立ち上がろうとしないとの考えから、シーティングポジションを楽な位置で取らせてあげられるように工夫されていた。特に車いすには力を入れておられ、車いすに乗せたからといって、乗せっぱなしにしてはいけないと強調された。

 点滴に関しては、以前は縛って行っていたが、これもさまざまな工夫を凝らし、たとえば、認知症の患者で徘徊される方には足に針を刺し、点滴パックを背中に貼り付けて実施されている様子が示された。酸素吸入も酸素シャワーで酸素投与し、クリーニングハンガーを利用し、チューブを固定する様子も紹介された。排泄体験でいかにおむつの中に排泄するのが不快であるか体験させておき、トイレ誘導されることもあると説明された。

 最後に、栄養状態を悪化させないための工夫として、冷蔵庫内のチェックが必要と語られた。

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