社会保障審議会・医療保険部会(2012年11月16日)のご報告

審議会

中川翼副会長

1割維持か、2割に戻すか

 「1割維持」の主張に対しては、反対意見が相次ぎました。まず、全国後期高齢者医療広域連合協議会会長で多久市長の横尾俊彦委員は、「1割が2割に増えるのではない。現在1割の70~74歳は、75歳になってからそのまま1割に移行していく。69歳から新たに70歳になる人が3割から2割負担になる」と反論しました。

 NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」理事長の樋口恵子委員は、「高齢者の負担が増えるのは必ずしも喜んでいない」としながらも、「70代前半は1割が2割になるのではなく、3割だった人が順次2割になり、やがて1割になっていく。世代間公平という意味から、法律通り粛々とやっていただきたい」と述べました。日医の鈴木委員らが主張する「受診抑制」に対しては、「医学的、科学的知見をもって説得してほしい」と反論しました。

 東大大学院教授の岩本康志委員は、「1割と2割のどちらがいいのか、科学的に検証できる状況にはない」とした上で、「意見が集約された姿として、国会で議決された法律に書かれている2割負担がある。何年間も予算措置によって1割にしている現状は、手続的に問題があるので、2割負担に戻していくのが適切だ」と述べました。

 こうした議論に対し、日本労働組合総連合会副事務局長の菅谷功委員は、「確かに法律上は2割負担だが、政府が国会承認を得た予算で1割にしている」と指摘。「政府がそういう政策でやっているのだから、政府がけしからんという議論はここではなじまない。何を議論しろというのか。政府がけしからんという結論をこの審議会で出せるのか」と語気を強めました。
 

順次2割か、直ちに2割か
 

 健康保険組合連合会専務理事の白川修二委員は、「1割か2割か」という議論を「本質ではない」と否定。「平成18、19年ごろに国会で議論されて、現在は『2割負担』という法律が存在する。それを5年間実施してこなかったことこそ問題だ」と一喝しました。
 その上で、「ほかの世代や、70~74歳の現役並み所得の人は法律通り3割負担を続けている。なぜこの層だけに法律が適用されないのか。法治国家である以上、法律が成立すれば定められた手続きで施行するのはごく当たり前の話。5年かけて2割負担にするのではなく、来年度から早急に2割負担を実行すべきだ」と主張し、「順次2割」案に反対しました。

 全国健康保険協会理事長の小林剛委員も、「高齢者医療制度の見直しは喫緊の課題。国の財政が厳しい中で、いつまでもこのような臨時特例的な措置を続けることは全く理解できない。世代間負担の公平を考えれば、とっくに実現していなければならないことであり、これでは保険料負担が重い保険者の理解を得られない」として、2割負担の実施を要望しました。「順次2割」案については、「高齢者の負担に十分配慮した仕組みであるので、私はこの案でいい」と賛成しました。

 委員らの意見を受け遠藤部会長は、「この問題は継続してご意見を頂きたい」と述べ、継続審議となりました。そのほか、「後期高齢者支援金の総報酬割」についても賛否が分かれました。
 この日の議題は、(1)高齢者医療制度の見直し、(2)高額療養費の見直し、(3)調査権限・現金給付の見直し──の3点で、予定した審議2時間のうち約1時間半が(1)に割かれました。

                          (取材・執筆=新井裕充)

 

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