「本物しか残れない」 日米フォーラムで武久会長

会長メッセージ

日米フォーラム2012

 社会医療研究所(岡田玲一郎所長)は1月22日、東京都内で「U.S.A / JAPAN JOINT FORUM 2012 米国における3機能病院の変遷と日本の病院」と題するセミナーを日本慢性期医療協会(武久洋三会長、日慢協)などと共催し、米国で急増している長期急性期(LTAC)の現状や課題などについて米医師らが講演しました。日慢協の武久会長は「本物しか残れない。良質な慢性期医療がなければ日本の医療は成り立たない」と述べました。

 21日の大阪会場に続いて2日目となった東京会場には約120人の医療関係者らが詰め掛けました。冒頭、岡田所長が「社会があるから医療がある。医療機関があるから社会があるのではない」と挨拶、今後の病院経営の在り方を指南するセミナーとなりました。

 最初に岡田所長が「なぜLTACを採りあげたのか」と題して講演。「医師の自由裁量権とは患者のためのものであって収入のためのものではない。今後はここにメスが入るだろう」と指摘しました。 

 次いで、ケースウェスタンリザーブ大学理学療法リハビリテーション部教授のクラーク氏が短期急性期(STAC)後の様々なケア段階として、▽長期急性期(LTAC)病院、▽入院リハビリ施設(IRF)、▽スキルドナーシング施設(SNF)、▽在宅ケア(HHC)、▽外来リハ(OPT)──などを紹介。最近の傾向として、ACO(Accountable Care Organizations)への移行などを挙げ、「医師と病院が医療の質とコストに対し共同責任を担う」などの方向性を示しました。

 その後、米国のLTAC病院の最高責任者であるカーナ氏らが「LTAC」の概念やメリットなどを説明。STAC(短期急性期)病院に長期入院させるよりもLTACのほうが低コストであることや、STACの稼働率を高める効果があることなどを指摘しました。今後の課題として、▽規制環境の変化、▽償還額の低下、▽急性期基準の厳格化、▽難しい保険市場、▽医業利益率低下──を挙げました。

 米医師らの講演後、日慢協の武久会長(博愛記念病院理事長)が「日本の慢性期医療からみたLTAC」と題して講演。一般病床に90日以上入院している患者がいる状況について、「世界各国に比べて日本は平均在院日数が長いため実際より低く見せたい厚労省と、特定除外患者を平均在院日数に算定しないでいい救済措置を喜ぶ中小病院の利害が一致して、このような姑息な経過措置が続いている」として、「一般病床の社会的入院」を批判しました。

 その上で、急性期治療機能を持った慢性期病院の必要性を述べ、その「急性期機能」として、①緊急送迎、②緊急入院、③緊急画像診断、④緊急血液検査、⑤緊急処置──の5つを挙げました。そして最後に、「急性期も回復期も慢性期もそれぞれ本物しか残れない」と指摘、「良質な慢性期医療がなければ日本の医療は成り立たない」と締めくくりました。
 
 ※ 武久会長の講演について、詳しくは「日米ジョイントフォーラム 武久会長講演概要」をご覧ください。

日米フォーラム2012
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