チームケアでその人らしさを ~ 認知症ケア研修会
日本慢性期医療協会(日慢協)の「認知症ケア研修会」の2日目が12月4日に開かれ、具体的な事例に基づいたグループディスカッションが行われました。
各グループからは「その人らしさを尊重する」「安心・安楽で家庭のように穏やかに過ごせる環境づくり」「笑顔を取り戻せるようにする」などの方針が示され、チームケアの重要性を確認しました。
この日は、富家病院の臨床心理士・高橋祐子氏が認知症高齢者の心理について講義した後、総泉病院の病棟師長・宮木由貴子氏と、光風園病院・看護主任の竹中佳子氏がそれぞれ事例を示しました。
高橋氏は、チームで行う認知症ケアの重要性を指摘した上で、「意思の確認をしてからケアが提供されているか?」「やらないという主張を大切にしているか?」「職員の行動が利用者の行動を制約していないか?」と問い掛けました。
宮木氏はグループディスカッションの資料として、アルツハイマー型認知症で高血圧、高脂血症などで入院している71歳男性の事例を報告。竹中氏は、アルツハイマー型認知症に伴うBPSD(周辺症状)のある83歳女性のケースを紹介しました。
その後、参加者は6人1グループで全12グループに分かれ、偶数番号のグループは宮木氏の事例について、奇数グループは竹中氏の事例について具体的な対応策やケアの方針などを話し合い、午前のプログラムを終えました。
午後は、各グループが事例検討の結果を発表しました。宮木氏の事例を検討したグループからは、「その人らしく生きる」、「相手の立場になって行動する」、「患者・家族の意志を確認し、安全・安楽な生活を提供する」、「患者様の目線、立場に立って笑顔をひき出せる様なケアを提供する」、「安心、なごやか、穏やか」、「統一された『個々に合ったケア』」といった方針が示されました。
竹中氏の事例を検討したグループは、「その人らしさを尊重し、相手の立場にたった安全・安楽な療養生活の援助」、「その人らしい生活が出来る」、「個人を尊重・尊厳し、安心・安楽で家庭のように穏やかに過ごせる環境づくり」、「日常生活を穏やかに過ごしてほしい」、「『その人らしさ』をとりもどすためのケア」、「笑顔を取り戻せて、その人らしく穏やかな生活が送れるよう援助する」というケアの方針を示しました。
2日間にわたり研修会の司会、進行などを務めた日慢協認知症委員会副委員長の阿部邦彦氏(医療法人社団・和恵会リハビリテーション部課長補佐)は研修会終了後、次のように感想を話してくれました。
「現場で経験していることを互いに情報交換できたことがとてもよかったと思います。互いの経験を共有して、さらに良いケアに結びつけていくことがグループディスカッションの狙いですが、今回も非常に良いディスカッションができました。ランチの時間には、お弁当を自分のグループのテーブルに持って行く姿が昨年と同様に見られ、それぞれ1つのチームができていると実感しました。事例について話し合う中で1つのチームができる。こうした経験を現場に持ち帰り、このような話し合いがとても大事だということに気づいてもらって、現場のケアがさらに良くなっていけばいいなと思います」
【新井裕充】
2011年12月5日