療養病床でも重症患者の治療
■ 転換型老健施設から医療機関への「逆戻り現象」が発生
われわれ医療法人錦秀会では、全病床数3,200余床のうち約2,800床が療養病床で、その約半分の介護療養病床すべてを医療療養病床に転換した。
また、転換型老健施設の利用者の53%が、入所中に容態に変化を来たし、医療機関に入院する「逆戻り現象」が生じており、同施設では診られない高齢者が多く存在している実態が明らかになっている。
錦秀会グループにおいても、すべての介護療養病床が医療療養病床に転換した後の医療区分2・3の患者の割合は94%であり、医療療養病棟(20:1)の全国平均の87%を大幅に上回っている。
医療療養病床を運営する医療機関にとって、医療区分2・3の患者をなるべく多く確保することが絶対条件であり、医療区分を重くする方向にインセンティブが働くことは自明のことである。
医療費削減の方策として国が政策決定した介護療養型医療施設廃止の結果として、転換先がより平均単価の高い医療療養型施設が圧倒的に多かったことは、実に皮肉な話である。
■ 「長期急性期病床」の制度化は理に適った提言
今回、日本慢性期医療協会が、急性期医療を提供できる機能を併せ持つ長期入院の受け皿として「長期急性期病床」の制度化を提言した。
武久会長は「結局、重度の後遺症を持った患者を診るのはわれわれ慢性期医療の現場だ。長期だけれども急性期的な機能を持った病床をつくらなければならない」と、その必要性を訴えている。
錦秀会グループの医療療養病床においても、悪性腫瘍から神経難病まで幅広く対応しており、現在DPCが広く適用されている急性期病院からの受け皿として、かなり重症の患者の治療に当たっている。
同協会では、長期急性期病床のほかに、従来の「長期慢性期病床」、医療と介護サービスを同時に提供する「介護療養病床」の3類型に分類すべきと提言している。非常に理に適った提言である。
また、高齢化が進む状況の中で認知症問題が深刻化していくのは必至である。当然、BPSDが顕著な患者を精神科病院だけで対応するのは困難であり、医療療養病床においてもその受け皿として対応が迫られ、それに対する評価も必要であると考える。
今後とも、日本慢性期医療協会の現実に即した提言を期待する。
この記事を印刷する2011年7月22日