「人に近づいた医療へ」── 第2回慢性期リハビリテーション学会を開催

協会の活動等 官公庁・関係団体等

01_開会式

 第2回慢性期リハビリテーション学会が3月14、15日の2日間にわたり横浜市内で開催されました。テーマは、「人に近づいた医療へ」──。会場は、横浜市で初の市民参加型フルマラソンとなる「横浜マラソン2015」のゴール地点となるパシフィコ横浜。演題数は300を超え、来場者は約1,000人。会場の外は多くのランナーで賑わい、学会も大きな盛り上がりを見せました。
 
 学会長は慢性期リハビリテーション協会の橋本康子副会長が務めました。1日目は厚生労働省保険局医療課の宮嵜雅則課長の記念講演のほか、2つのシンポジウムを開催。平成27年度介護報酬改定を主導した厚労省老健局老人保健課の迫井正深課長も参加しました。
 
 2日目には、世界的な建築家である安藤忠雄氏が「Visionを持って生きる ──あきらめない生き方──」と題して特別講演したほか、3つのシンポジウムを開催しました。2万5,000人のランナーがパシフィコ横浜を目指して熱い闘いを繰り広げる中、会場内も熱気に包まれました。
 

■「新しいリハビリテーションを始めたい」── 武久会長
 
01_武久会長 開会のあいさつで、日本慢性期医療協会の武久洋三会長は「今までのリハビリテーションの考え方を一から覆して、新しいリハビリテーションを始めたい」と宣言。これまでのリハビリ提供体制を振り返り、「病院のため、リハ医のため、そして療法士のためのリハビリをしてきたのではないか。真剣に反省している」と述べ、単位数などに縛られたリハビリではなく、患者さんの尊厳を重視したリハビリの必要性を指摘しました。
 
 武久会長は、「1日9単位することに汲々となって、患者さんができるだけ早く退院して、社会に戻るという視点を忘れがちになる。この身勝手なリハビリ提供体制を大きく反省する時期が来たのではないか」と指摘。「まず人間らしい環境を回復させることからリハビリテーションは始まる。新しいリハビリ提供体制によって、世の中から後遺症の人をなくそう」と訴えました。
 

■「国民の願いを叶えることができるのは私たち」── 橋本学会長
 
03_橋本学会長 続いて橋本学会長は、慢性期リハビリテーションが急性期以降の幅広い領域をカバーするものであると説明したうえで、今学会のテーマに言及。「慢性期リハビリテーションとは、まさに人の生活に入り込んだものであり、それゆえ、人に近づいた医療でなければならない。このような思いから『人に近づいた医療へ』というテーマとした」と紹介し、今学会には医療・介護関係者だけでなく、大学や企業など幅広い分野から参加者が集まったことを伝えました。

 橋本学会長は、「良質な慢性期医療がなければ、日本の医療は成り立たない」という日本慢性期医療協会の理念を紹介したうえで、「この理念と同様に、『良質な慢性期リハビリテーションがなければ、日本のリハビリテーションは成り立たない」との考えを示し、「最期まで自立した生活を安心して送りたいという国民の願いを叶えることができるのは私たち。私たち1人ひとりがその思いを持ち、お互いに学び合い、慢性期リハビリテーションの質の向上に貢献できる学会にしたい」と呼びかけました。
 

■「慢性期医療の重要性が高まっている」── 日本医師会
 
04_医師会 開会式には、来賓として日本医師会の鈴木邦彦常任理事、全国老人保健施設協会の平川博之副会長、日本認知症グループホーム協会の河崎茂子代表理事がご出席されました。
 
 日本医師会の鈴木常任理事は、横倉義武会長が寄せた祝辞を代読。冒頭で急速な少子高齢化の進展に触れ、「慢性期医療の重要性が高まってきている」と指摘しました。そのうえで、「慢性期リハビリテーションの重要性や必要性を訴えるという貴協会の設立趣旨、ならびに発足以来の活動に心より敬意を表する」と評価しました。
 
 また、今学会のテーマに賛意を表し、「『人に近づいた医療』の実現はすなわち、患者や要介護者の方々にとって本当に必要で効果のあるサービスを提供し、尊厳を持って人生を送っていただくことにつながる」と述べました。
 

■「生活行為の向上を図るリハビリへの転換」── 全国老人保健施設協会
 
05_全国老人保健施設協会 全国老人保健施設協会の平川博之副会長は、東憲太郎会長の祝辞を代読し、「超高齢社会を乗り切るためには地域包括ケアシステムの構築が不可欠であり、特に要介護高齢者にとっては、まさに長期にわたり幅広く提供される慢性期リハビリテーションの充実がカギとなる」と述べました。
 
 今回の平成27年度介護報酬改定を振り返り、「これまでの急性期医療で行われる『身体機能の回復』という視点のリハビリテーションから、生活行為の向上を図るリハビリテーションへの転換がより重要視された」と指摘しました。
 
 介護報酬改定項目の中で、通所リハビリテーションに新設された「生活行為向上リハビリテーション実施加算」などを挙げ、「私たち介護老人保健施設は現在、在宅復帰、在宅生活支援としての機能がさらに求められている。その実現には、生活行為の向上を考えたリハビリテーションの提供が重要であり、貴協会の理想に大いに共感する」と賛同し、「今後とも貴協会と連携を強め、共に前進してまいりたい」と述べました。
 

■「共に手を携えて協力していきたい」── 日本認知症グループホーム協会
 
06_日本認知症グループホーム協会 日本認知症グループホーム協会の河崎代表理事は、満席の会場を見つめながら、「これからのリハビリを考えるテーマで、このように盛大に開催されることは大変素晴らしい。今日はわれわれにとっても嬉しい日である」とあいさつ。「ますますこの会が大きく広がり、全国の国民に『慢性期のリハビリテーションはこういうものである』ということが知られ、全国津々浦々まで浸透する日を楽しみにしている」と述べました。
 
 河崎代表理事は、日本認知症グループホーム協会が地域包括ケアシステムの実現に向けて日々取り組んでいることを紹介。「私たちの協会も頑張っている。地域包括ケア支援を旗頭にして医療と介護を進めていく社会において、私たちは慢性期リハビリテーション協会と共に手を携えて協力していきたい」との意向を示しました。

 最後に河崎代表理事は、急増する認知症患者や家族への支援が今後さらに必要となることを指摘。「来るべき700万人、800万人と言われる認知症の方々のために、家族の人のために、ぜひ友好団体として頑張っていきたい」と述べました。

 開会式の後、厚労省の宮嵜課長が「国民の幸せに寄与する医療を目指して ~わが国の医療を取り巻く現状と課題~」と題して記念講演。座長を慢性期リハビリテーション協会の木戸保秀副会長が務めました。

 その後、シンポジウム①「慢性期リハビリテーションの展望」、シンポジウム②「地域包括ケアを考えるリハビリテーション」を開催して1日目を終了。2日目の15日には、安藤氏の特別講演のほか、シンポジウム③~⑤を開催し、盛況裡に閉会しました。

 なお、厚生労働省の宮嵜課長の記念講演と、安藤忠雄氏の特別講演の模様は、日本慢性期医療協会誌(JMC)99号(2015.6)でご紹介する予定です。シンポジウム①~⑤の概要は、こちら(http://manseiki.net/?p=3195)をご覧ください。

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