「どこまでを診療報酬でやるか」 ── コロナ対応で池端副会長

協会の活動等 審議会 役員メッセージ

池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)_2021年7月7日の中医協総会

 令和4年度の診療報酬改定に向けて「コロナ・感染症対応」がテーマとなった厚生労働省の会合で日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「どこまでを診療報酬でやるか、どこまでを補助金・交付金でやるか」との問題意識を表した上で、「現時点で診療報酬で対応したものは、状況に応じてきちんと維持できるような議論が必要ではないか」と述べた。

 厚労省は7月7日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)の第482回総会をオンライン形式で開催し、当会からは池端副会長が診療側委員として参加した。

 この日の中医協は総会のみが開かれた。主な議題は、①次期診療報酬改定に向けた主な検討内容について、②コロナ・感染症対応(その1)について、③外来(その1)について──の3項目。

 このうち①では、今後の検討項目やスケジュールを確認。②と③では、厚労省が示した「論点」を踏まえ、診療側・支払側の委員が意見を述べた。

 池端副会長の発言要旨は以下のとおり。

■「コロナ・感染症対応」について
.
 「経済財政運営の基本方針2021」の閣議決定では、コロナの影響を踏まえた整備等の支援に関して、「診療報酬や補助金・交付金による今後の対応の在り方を検討し」となっている。どこまでを診療報酬でやるか、どこまでを補助金・交付金でやるか。ここの大きな枠が決まらないと、中医協の議論がなかなか進まないのではないかと思う。この辺の考え方を並行して、にらみながらの対応になるかと思う。少なくとも、現時点において診療報酬で対応したものは、それが状況に応じてきちんと維持できるような形での議論が必要ではないかと思っている。
 また、医療経済実態調査がこれから行われる。1年前からコロナ禍の入院医療体制の脆弱性が盛んに言われた。やはり入院基本料も含めて日本の病院のいろいろな余裕のなさ、有事に対する余裕のなさに起因するものではないか。日本の医療体制の脆弱性という面があると思う。
 特に、毎年行われている医療経済実態調査によって数パーセントの利益率を認められる、認めないという中で、診療報酬を厳しく制限され、病院経営としては公立・私立を問わず内部留保がほとんどない状況。数カ月の診療報酬のダウンで賞与が払えないということが実際に起きているので、この辺を抜本的にどう考えるか。そして、有事に対する対応に関して、診療報酬上、どこまでを見るのかについても議論が必要ではないかと思っている。
 そもそも診療報酬とは何か。幸野委員から、それで補てんするのはおかしいというご意見もあった。私は「報酬」という言葉はあまり好きではないが、一方で、医療機関というのは、この診療報酬の公定価格によって経営を成り立たせるように努力している。
 一時的なパンデミックによる減収であれば補てんということがあるが、それが継続的に必要、例えば、新興・再興感染症を医療計画の6事業目に入れて継続的に必要なこととなれば、これは当然ながら報酬として、しっかり継続的に見ていくほうに回すべきである。
 もちろん検証は必要だと思うが、そういう報酬で経営を維持していただかなかったら、病院・診療所とも成り立たなくなるだろう。今の日本は、そういう体制であると感じているので、ご理解をいただきたい。

.
■ 経過措置等の取扱いについて
.
 経過措置等の取扱いについて意見を述べる。現在のコロナの状況を鑑みれば、令和3年9月30日で打ち切られるとかなり厳しい状況になると思うので、延長を含めて慎重な対応をお願いしたい。
.
■ 感染防止対策加算について
.
 感染症対策を進めるため、院内における感染防止対策の評価として「感染防止対策加算」がある。同加算1は400点数、2は100点である。
 これらの加算は今回のようなパンデミックを想定して設定されたものではないが、現在ではほとんどの病院や診療所等がこの感染対策を広くやらなければいけない状況になっている。そのため、この加算の基準をいかに広げていくかということも大事ではないか。
 すなわち、同加算1・2を取っている所だけではなくて、2は1に、2も取れてない所は2を取れるようにするため、3段階ぐらいを設けて、感染対策をできる医療機関をさらに増やしていくべきである。薄くてもいいから点数付けて感染対策を広げていくような対応も診療報酬上では必要ではないか。

.
■ 紹介状なし受診時の定額負担について
.
 紹介状なしで受診する場合等の定額負担について、「紹介患者への外来を基本とする医療機関」のうち一般病床200床以上の病院にも対象範囲が拡大される。その際、「保険給付の範囲から一定額(例:初診の場合、2,000円程度)を控除し、それと同額以上の定額負担を追加的に求めるよう仕組みを拡充する」とされている。
 私は、保険診療から一定額を控除するという手法がどうしても理解できなくて、医療保険部会でも意見を述べた。これは選定療養というものの本筋から離れてしまうのではないかという気がしている。
 もし、この手法を選定療養ということで、こういうことが可能だということになると、その病院における入院料の権利を奪ってしまうことになるのではないか。選定療養というのは基本的に患者の希望に応じて、選定療養を受けるか、受けないかを決めるはずだが、今回の場合、一定の200床以上に全て広げる。これは、その病院の権利を奪ってしまうことになるという考え方もできるのではないか。私は医療保険部会で、こういう手法はあくまでも特例であることを強調したので、改めてここでも述べておく。

.
■ オンライン診療の今後の検討について
.
 オンライン診療に関しては、城守委員、島委員がおっしゃったとおり、私もあくまでも例外的な措置であると考える。オンライン診療の間口を開けることに対しては一定程度、理解している。
 1つ質問だが、オンライン診療について、例えば、高齢者医療に関わる日本老年医学会等から提言等がなされると聞いているが、その辺についてスケジュール感を教えていただきたい。そういう提言を受けた形で議論が始まるのか、もし分かっていることがあったらお願いしたい。

.
【厚労省保険局医療課・井内努課長】
 オンライン診療について、いわゆる学会等で何らかの提言等がされる、ということがあると思うが、われわれのところでは個別の学会の動きは承知していない。こちらでもしっかり、専門家がどういった議論をされて、どういった取りまとめがなされているのかということをしっかりと見た上で、必要に応じて中医協の場に持ってくるということをしたいと思う。
 また、オンラインについて、医政局で行っている「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」との関係であったり、そのスケジュール感であったり、という質問があった。これについては、まさにこちらの検討会は行っている最中と聞いている。
 この中で、本日も議論していただいているが、オンライン診療の在り方、利便性などの良さと、いわゆる安全性のところをどう配慮するかというようなところが議論されていると承知している。
 これらの方向性が取りまとめられた場合に中医協にその結果をお持ちして、その方向性を踏まえた上で、基本的にはそれに沿った形になるとは考えているが、中医協でも適切な議論をしていただきたいと思っている。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

この記事を印刷する この記事を印刷する
.


« »