介護職員の新加算の要件、「あいまいだから、いい」 ── 社保審・分科会で武久会長

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武久洋三会長_20190306介護給付費分科会

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長は3月6日、介護職員の新たな処遇改善加算(新加算)の運用に向けた対応案が示された厚生労働省の会議で、新加算の要件について「老健局は『あいまいでいい』と言っている」との認識を示した上で、「あいまいにしてくれているからこそ、うまくいく」と厚労省案に賛同しました。
 
 厚労省は同日、社会保障審議会(社保審)の介護給付費分科会(分科会長=田中滋・埼玉県立大理事長)の第169回会合を開き、当協会から武久会長が委員として出席しました。

 厚労省は同分科会で、「経験・技能のある介護職員」について「勤続10年以上の介護福祉士を基本とし、介護福祉士の資格を有することを要件としつつ、勤続10年の考え方については、事業所の裁量で設定できること」を確認。その上で、「10年以上の勤続年数を有しない者であっても、業務や技能等を勘案し対象とできること等、事業所の裁量を認めることを検討してはどうか」と提案しました。

 これに対して委員からは、「『業務や技能等』があまりにも漠然としているので、ガイドラインで示すべき」「Q&Aなどで方向性をちゃんと示していただきたい」「何らかの事例を挙げてほしい」などと明確化を求める意見が相次ぎました。
 
20190306介護給付費分科会

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全国が一律といいながら、現状は全然一律ではない

 
 こうした意見を受け、武久会長は「全国が一律といいながら、現状は全然一律ではない。キチッとクリアカットにしたら、あとちょっとで残念だなということになる」と指摘。「びしびしと落として、落ちた所は一切考慮しないとなると、本来の目的に合っているだろうか」と問いかけました。

【武久洋三会長】
 私はこの論点、素晴らしいと思っています。どうして老健局がこういうことをおっしゃっているのか、皆さん、お分かりでしょうか。「あいまいでいい」と言われています。これはどういう意味でしょうか。10年といっても、クリアに10年でなくてもいいということです。
 地方へ行けば、非常に厳しい現場があるでしょう。人もいない。勤務はまだ8年だけれども、「この人がうちの事業所のトップだ」ということであれば、「賃金を上げてあげたいな」って思いますよね。
 全国が一律といいながら、現状は全く一律ではない。だから、このへんのところをあいまいにしてくれているからこそ、うまくいく。あまりキチッとクリアカットにしたら、都会ではできるかもしれなくても、あとちょっとで残念だなとなってしまうところも多いと思います。老健局の親心かどうかわかりませんが、この10年の経験も医療機関とか、ほかの所でもいいとおっしゃっていただいて、非常にブロードになっているからこそ、過疎地とかいろんな厳しい事業所でも、何とかなるように仕向けてくれていると考えればどうでしょう。
 明確にクリアカットにして、びしびしと落として、落ちた所は一切考慮しないとなると、そもそもの目的が違ってくるでしょう。もうちょっとクリアカットにしてほしいというご意見は不思議ですね。
 私は介護保険制度を維持して、地方の過疎地にもちゃんとサービスが行き届いて、介護職員にもきちんと給料が出せて、要介護者が非常にいい介護を受けるというためには、この考え方は素晴らしいと思います。事業者の裁量をある程度認めていただけるということは、行政のやり方としては珍しいなと思います。
 また、医療保険から介護保険に移り、また医療保険に移る個人が、その保険によって差を受けるというのはよくありません。介護保険も医療保険も保険ですよね。同じ保険なのに、どうも介護保険は措置制度のなごりがあるように思います。
 介護保険の事業所としては、措置制度のなごりがあるほうが非常にありがたいわけですけども、逆に言うと医療保険は、同じ保険制度といいながら、介護保険のやり方と違うわけです。この分科会は介護保険のことについて論じる所でございますので、あんまり細かなことは申しませんけれども、私はこの新たな処遇改善加算の論点は素晴らしいの一言に尽きると思います。

                          (取材・執筆=新井裕充) 

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