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「第20回日本慢性期医療学会福井大会」のご報告(5) ─ シンポ2(2012改定)

Posted By 日本慢性期医療協会 On 2013年1月10日 @ 2:41 AM In 協会の活動等,官公庁・関係団体等 | No Comments

 「第20回日本慢性期医療学会福井大会」のシンポジウム2は、「2012年診療・介護報酬同時改定の検証と今後の課題」をテーマに行われました。座長を日本慢性期医療協会(日慢協)副会長の松谷之義氏が務め、シンポジストとして厚生労働省保険局医療課長の宇都宮啓氏、慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授の田中滋氏、全日本病院協会会長の西澤寛俊氏、日慢協副会長の安藤高朗氏が参加しました。各シンポジストのご講演要旨と意見交換の模様をお伝えします。
 

■ 宇都宮啓氏(厚生労働省保険局医療課長)
 

「少子高齢化」に伴う3つの課題
 

 現在、少子高齢化が進んでいるとはいえ、社会を支える人口がまだたくさんいる。しかし、2025年には支える世代の割合が非常に減る。2055年には、高齢者1人を1.2人で支えることが予想されている。私は、こうした少子高齢化には3つの課題があると考えている。

宇都宮啓氏 まず1つ目は、数字上の話だけではなく、医療がかなり変わっていくのではないかということだ。高齢者の特性として、慢性疾患が多く、病気がすぐに治るようなことが少ないと言われる。「一病息災」「二病息災」で、いくつもの病気を抱える人が増える。さらによく言われるのは、代謝能力の低下。われわれが医学部で習ったような医療の常識では考えられないような身体の状態の患者さんを診る時代になる。

 ある在宅ホスピスに見学に行った際、「自分は世の中に未練がないから透析をやめるんだ」と言ってホスピスに入った患者さんがいた。われわれの常識で考えれば、透析をやめれば間もなくお亡くなりになる。しかし、その患者さんは透析をやめてから1年ぐらい元気に生きていたという。そうすると、「今までの透析は何なんだ」とも言いたくなる。こうした患者さんが、これからの医療の主流になる。これは非常に大きな問題ではないか。

 2つ目は、地域の重要性が増すこと。高齢者の移動可能な範囲を考える必要がある。年を取ると活動能力が衰える。独居老人も増えてくる。単独または高齢者のみの世帯も増加する。身近な地域の重要性が増してくる。

 3つ目は、保険制度における現役世代の負担が増加するということ。人口構造の変化を見ると、胴上げ型から騎馬戦型へ、そして肩車型へ変わる。1人が1人を支える人口構造になる。そうした状況で、従来からの医療、年金などの制度をどのように維持していくか。

 給付と負担のバランスも問題だ。現役の若い世代の負担が大きく、高齢者への給付が多い。今後、さらに高齢者の人口が非常に増加するため、どのように対応していくか。介護者がいない世帯も増える。認知症患者も大幅に増える。都市部の高齢化も深刻だ。従って、人口構造の問題だけではなく中身の問題も含め、非常に大きな課題をわれわれは抱えている。

 社会保障給付費は年々増加しているが、社会保険料の収入はあまり増えず、公費負担が増えている。お金は天から降ってくるものではなく、われわれ自身が納めている。そうしたことを含めて、負担の問題をどうしていくのかも大きな課題となっている。
 

ケア付き住宅のニーズはある
 

 内閣府の世論調査によると、介護を受けたい場所として、「現在の住まい」を選択する人が多い。病院に入院して介護を受けたい人は1割ぐらいしかいない。最近、介護付きの有料老人ホームなど、ケア付きの住宅が増えている。本来ならば自宅で介護を受けたいが家族の負担が増え、かといって施設や病院には入りたくないという人がいるため、自宅に近い環境のケア付き住宅に入りたいというニーズはある。

 諸外国に比べて、わが国の「介護保険3施設」の整備状況は見劣りしないが、ケア付き住宅が非常に薄い。死亡場所についても、わが国は8割ぐらいの人が病院で亡くなっているが、ケア付き住宅での死亡が非常に少ない。介護してくれる若い世代が自宅にいない高齢者世帯のため、いかにケア付きの住まいを確保していくかが重要な課題である。

 一方、「地域包括ケア」を進めるため、自助や互助の見直しがポイントとなる。まずは家族らが対応し、それが難しいものは専門職に助けてもらうことが必要だ。つい最近まで介護保険を担当していた立場から言えば、制度が充実してくると最初から制度に頼る傾向が見られる。自立できる能力があるのに安易にヘルパーさんに頼るようなことがある。そこで、「ちょっと待てよ」と、「あなたもう少し自分で頑張ってみたらどうか」と言いたい。

 医療の場合は、病気や障害が起きても、それを治そうという意識が本人にある。医療関係者や専門職にもそういう意識がある。しかし、介護の場合はどうしても、「やってもらったほうが楽になる」という発想がある。そこをもう一度見直す必要がある。高齢者夫婦のみの世帯、高齢者単独の世帯が増えていく中で、ここをもう一度見直すべきだ。「地域崩壊」と言われるが、地域をどのように再生させるかが課題であろう。
 

ケアマネと医療との連携も課題
 

 制度改正のたびに、「国はコロコロ変える」「どっちを向いているか分からない」というご批判を頂くが、「地域包括ケアシステム」の構築に関しては明確な目標であり、介護保険法改正の趣旨にも、社会保障と税一体改革にも明記されている。4月の同時改定も、「地域包括ケアシステム」の構築を目指す第一歩の改定である。今後の改定でいろいろな変化はあるにせよ、目指す方向性は変わらない。これを頭に入れていただければ、今後どのような改定があろうと、みなさんは理解しやすいのではないか。

 今回の同時改定は、在宅を充実する方向で行われた。先述の話を念頭に置いていただけば、なぜそのような点数が付いたのか、理解しやすいと思う。このシンポジウムのテーマには「検証」とあるが、それは私が検証するよりも、西澤先生ら当事者にやっていただいたほうが、厳しいお話も出るのではないか。私はむしろ、現在の話よりも将来の課題についてお話ししたい。

 今後、「地域包括ケアシステム」の構築に向けてどのようにしていくか。今回の改定で一定の手だては打ったが、やはりまだまだであり、今後数回の改定で実現を目指していくものだろう。先述したように、自助と互助。どこまで自分たちでやっていくかという問題。私は田中滋先生の「覚悟」という言葉が好きだが、地域に生きる人たちの「覚悟」も非常に重要な要素になる。

 それから、誰が地域でマネジメントするのかという問題もある。これは医療よりも介護に近い話かもしれない。ケアマネジャーが中心的な位置付けになっているが、ケアマネと医療との連携がなかなかうまくいかない。医療職をバックグラウンドにしているケアマネはいいが、そうでないケアマネだとうまくいかないという現実がある。

 こうした状況に対して医療側は、「ケアマネが訳分からないから駄目なんだよ」と突き放すような態度でいいのか。もっと医療側が、ケアマネや介護の側に入り込んでいく、一緒にやっていくということも必要ではないか。

 今回の改定では十分な手当てができなかったが、予想以上に増加している認知症への対応も考えていかなければならない。また、病床配分も問題だ。今後どのようにしていけば、地域のニーズに合った配分になるのか。現状は果たして地域のニーズに即しているかを考えて、われわれは対応していかなければならない。診療報酬だけでできることではないので、医政局とも連動しながら、対応策を検討していきたい。
 

■ 田中滋氏(慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授)
 

「中負担・中福祉」に戻す設計図
 

 診療報酬改定の検証について、少し大きな眺めから説明したい。今回の改定は、「社会保障・税一体改革」の中での動きである。まず、税金や社会保険料の負担と、社会保障給付との関係を考えたい。仮に、税金をたくさん取って王様がたくさん使い、福祉にあまり使わないとすると、これは長く続かないし、最後は革命が起こるだろう。

田中滋氏 これに対し、「低負担・高福祉」は理想だ。日本では戦後、自民党と社会党がこの世界をつくってきた。それは別財源である国際価格の10倍に及ぶ米価と、税金を使わず財政投融資を使った公共事業などを通じて、「低負担・高福祉」のまねごとかもしれないが、実現していた。東京から北九州に至る富を、東北や南九州に渡してきた。小泉内閣になり、「こういう姿ではいけない」ということで、新自由主義により「低負担・低福祉」に近い主張が一時、日本を支配した。

 その後、先送りの「低負担・高福祉」の議論があった。これは、夢想か欺瞞で、実際には続かない。本来は、ある程度の税金や社会保険料をきちんと負担し、社会的に連帯して自立を支える体制しか続かない。理論的に可能なのは、「低負担・低福祉」「中負担・中福祉」「高負担・高福祉」の3つで、これは選択の問題になる。わが国は「中福祉・中負担」を続けていたが、小泉内閣時代の2006年ごろ、「中福祉・中負担」のほころびに一度向かった。

 しかし、最近の動きとしては、国民がきちんと負担せず、まずは国債などを使ってなんとか「中福祉」にしようというのが、この2回の診療報酬改定であった。かなりのプラス改定で、とりわけ急性期医療を中心に付いた。つまり「高福祉」に動いたが、実際に国民の負担が増えたわけではない。「社会保障・税一体改革」では、きちんと「中負担・中福祉」に戻そうという設計図が描かれており、今回の診療報酬改定もそういう意味で読むことができる。
 

基本は自助と互助
 

 このシンポジウムにおける私の役割として、「地域包括ケアシステム」について述べたい。「地域包括ケアシステム」については、各地域でいろいろな理解があると思うが、改めて医療界の方々にお話ししたい。

 「地域包括ケアシステム」は、医療や介護を中心に、保健・予防や福祉・生活支援があると考えがちだが正しくない。これは、「地域包括ケアシステム」の部品を並べてはあるが、正しい構造ではない。「地域包括ケアシステム」のベースは、「すまい」である。「地域包括ケアシステム」の報告書を書いたのは2年前。その後、東日本大震災を見てから考え方が変わった。「すまい」のない所に、医療も介護もないということがよく分かった。

 「すまい」には、ニーズだけではなく需要が入る。医療はあまり需要が入らず、客観的なニーズに応じて給付されるが、「すまい」にはさまざまな需要が入る。その上で、大きな窓を描きたい。それが生活である。被災地のさまざまな報告を拝見して、やはりベースは生活だと思うようになった。生活が成り立たない所では、医療や介護は何の意味もない。生活が成り立った上で、「医療・看護」、「保健・予防」、「介護・リハ」などの専門的なサービスが乗っかる。基本は自助と互助。右まひになったら、お世話を受けるのではなく、左手でご飯を作るのは当然だ。その上ではじめて、専門的なサービスが乗っかるのが、「地域包括ケアシステム」の正しい理解であろう。
 

自治体が地域ニーズを把握
 

 自助を失った社会は続かない。国際競争に勝つどころか、社会として存在できるか分からない。年を取っていようといまいと、自己能力を活用する。応分の経済的負担もそうだ。保険料を払うのがイヤなのに良いサービスがほしいというのは夢である。中世でも近代でも、人々はそうして生きてきた。

 ただし、新自由主義者が言うように、すべてが自助であるという社会はぎくしゃくするし、これもまた続かない。助け合い(互助)が必要であり、それは友人間かもしれないし、米国社会のように多額の寄付かもしれないし、インフォーマルなサービス提供かもしれない。互助はプロフッショナルではないから、共助の世界がある。プロフッショナルのサービスを使う。共助だけでは救えない貧困や虐待、まちづくりというレベルについては公助。これら4つのヘルプを組み合わせていくという哲学が、「地域包括ケアシステム」の背景にある。

 共助は、医師や看護師ら専門家たちの世界であり、当然に質が事後的に評価される。互助の世界では質が問われない。近所の人たちが集まって食事会をする際に、おいしいかまずいかは問題ではないが、医師や看護師らの仕事は質が問われる。専門施設である慢性期医療機関も同様である。今回の報酬改定では、機能に応じた点数設定だった。

 公助には、弱者のためのサービスという視点があるが、私はもう少し広くとらえたい。地元の自治体の巻き込みがないと、「地域包括ケアシステム」はできない。「地域包括ケアシステム」は自治体の仕事でもある。ここで、圏域調査が重要となる。一般の財では、需要調査をする。冬にどのようなおでんを売るか、夏にどのようなビールを売ろうか、アンケート調査をする。アンケートに食らいついてきた人がお客さんだ。ところが、介護や障害者ケアなど、特に高齢者ケアの世界では、アンケートに答えない人にニーズがある。元気に帰ってくる人には、さほどニーズがなかったりする。だからこそ、自治体しかできない調査がある。

 日常生活圏域ごとのニーズ調査をして、それに基づいて地域診断を下し、その一方で事業側の存在も調べ、事業者のサービス目標などを設定する。これまでのような保険料算定計画から脱却して、地域づくりの計画に移る必要がある。例えば、高齢者宅への配食ニーズを把握して、お弁当を届けたいと考えているスーパーやコンビニなどをマッチングさせるような機能は、自治体しかできない場合がある。市場経済のメカニズムだけではマッチしない。

 何よりも、「地域包括ケアシステム」の意義を伝えて勉強会を開催し、住民自身を講師に巻き込んでいくような作業も自治体が行うべきだ。2000年4月、介護保険制度により年金から保険料を天引きしたにもかかわらず、なぜ支持率が高かったのか。1997年、いやもっと前から、厚生労働省の担当者らが県庁所在地に行って講演会を開催した。市町村の方々は、地元の高齢者クラブの方々と膝詰めで、介護保険の意義を論じる会を開いた。

 こうした住民の理解促進なしに政策を打つと、2008年の後期高齢者医療制度の時のように、テレビが「年金から天引きとはけしからん」という間違った誘導をする。そんなものは2000年からとっくにやっていた。「年齢による差別はけしからん」と言うが、介護保険は年齢による差別をしている。64歳では交通事故で要介護になっても介護保険を給付しないという、すごい年齢差別をしている。にもかかわらず文句が出ない。なぜならば、理解促進のための努力をしてきたからだ。これを自治体がすべきである。

 さらに生活圏域まで下ろすと、「地域ケア会議」になる。これをぜひ活用していきたいし、地元の薬局なども手伝うべきだろう。処遇困難事例に対するケースカンファレンスなどを通じて、ケアマネジャーを育成、支援する機能を持ち得る。地域の課題を導き出し、保険給付外の「互助」も構築していく。何よりも、資質を問われているケアマネジャーに対する学びの場を与える。

 地域の課題や資源は、地域ごとに違う。しばしば、「『地域包括ケアシステム』とは、どのような形になりそうですか?」という質問を受ける。「100通りあるでしょう」というのが答えだ。医師会中心型、市役所中心型、社会福祉法人主導型、老健主導型、慢性期医療機関主導型など、何でもある。地域課題、地域資源がそれぞれ異なるので、地域ごとにネットワーク化していく。これは、個別利用者のケアマネジメントとは違うやり方になる。第一層は個別利用者のケアマネジメント、第二層は生活圏域マネジメントで、一番上に地域レベルのマネジメントがある。
 

各地域に在宅医療の司令塔を
 

 わが国では、ロングタームで人々にケアをする仕組みはそれなりにある。北欧の人が見学に来ても、「日本はなかなかすごいね」と言うようになった。しかし、国際ランキングがまだ低いのは、エンド・オブ・ライフケアだ。「地域包括ケアシステム」は介護保険だけのビジョンではなく、介護保険を越えたビジョンであると考えている。

 地域医療拠点を市役所ごとにつくり、地域の医師会と市役所が組んで、在宅医療の司令塔をつくる。医師会とけんかして在宅医療をしている地域が目立つ。医師会は、「在宅医療をしている医師たちの裏には企業が付いているのでけしからん」と言う。逆に、在宅医療の医師らは、「在宅医療をしようとすると、『客を取る』と言って怒られる」と言う。こういう非常に次元の低い話を時々聞く。そうならないように、地域ごとの拠点を市ごとにつくる。

 とりわけ、団塊の世代に「覚悟」がなくてはいけない。75歳、80歳になったら老夫婦2人で住む覚悟だし、どちらかが死んでしまったら、1人で死ぬ覚悟。これは、「孤独死」ではない。「孤独死」とは、死後半年ぐらい見つからないことを言う。前日にヘルパーと会って「おやすみ」と言って、朝に亡くなっていたら、幸せな死に方である。今後は、こうした覚悟が必要となる。

 家族に囲まれて死ぬ場合もあるかもしれないが、独り暮らしで自立できている人が、ある日1人で自然に死んでいるという覚悟がなければ、「地域包括ケアシステム」はできない。甘えてはいけない。外部の方に向かってこう言うと、すごく失礼だと思うが、私は自分のことだと思っている。

 今後、クオリティ・オブ・デスに慢性期医療機関がどう関わるかが重要な課題である。これについては、西澤先生、安藤先生が答えるという宿題にして、私の話を終わりたい。[→ 続きはこちら]
 


 

 

■ 西澤寛俊氏(全日本病院協会会長)
 

点数は低くても意味がある
 

 「検証」と言っても、調査がほとんどされていない。収入だけを見れば、急性期病院を中心に増えているが、個別に話を聞くと、「それ以上に経費がかなり掛かっている」という声がかなりある。「収支」という意味では、なかなかデータがない。全日本病院協会で実施している調査結果は今月末に出るので、このシンポジウムには間に合わなかった。

西澤寛俊氏 ただ、病院が個別に行っている自院の調査データはあると思う。そういう意味での「検証」は、宇都宮先生、田中先生が後ろに回したので、私も安藤先生にお任せしたい(笑)。私は中央社会保険医療協議会(中医協)の委員という立場で、今回の改定にどう絡んだか、その考え方などを説明したい。

 今回の改定は、2025年の姿を見据えた上での改定だった。今後の改定も、こうした流れの中で行われていくだろう。今改定のキーワードは、役割分担、在宅医療など。がん治療や認知症にも点数を付けた。今後は2025年に向けて、同時改定2回、診療報酬改定6回の中でやっていくので、今改定ですべて変わるということではない。

 今改定では、救急医療の連携について一方通行だったが、前方病院と後方病院のいずれからも受け入れられるようになり、療養病床などの救急受け入れも評価されたことから、連携に関してはかなり思い切った策が取られたと思う。特に、二次救急に点数が付いた。二次救急は多くの民間病院が取り組んでいるため長年要望してきた。今回の評価により、全国の二次救急の数がつかめるようになる。従って、後で検証すれば、民間病院が二次救急の中心であるというデータが出るのではないか。そう考えれば、点数は低くても意味がある。

 複数科受診に点数が付いたことも評価したい。医者の立場からすれば、最初の診療科は点数が取れるのに、次の診療科ではタダ働きということになると、「私の働きはゼロなんですか」という気持ちがある。そういう気持ちに応えるという意味があるので、点数が低くても評価したい。今後は、医師の技術料などを通じて、さらなる評価を求めていきたい。
 

制度のつくり方に問題がある
 

 今改定では、「7対1入院基本料」を算定している病床数が「盃型」になっているため、平均在院日数を短縮し、看護必要度の患者割合を増やした。診療報酬改定に限らず、ほかの制度についても言えることだが、一度決めた制度がおかしいから、医療機関に規制をかける。それで右往左往するのは私たちだ。従って、制度改定は本当に慎重にやらなければいけない。

 近年、「医療崩壊」と言われる。しかし、私たちは国がつくった制度に則って運営している。なぜかわれわればかりに責任があるように言われているが、制度をつくった側にも責任がある。いわば「共同責任」だと思う。これからは双方が責任を感じながら、よりよい医療提供体制、質の高い医療に努めていく必要がある。

 私の病院は北海道にある。「7対1入院基本料」が導入された当時、まさか東大病院が、北海道の看護学校まで募集に来るとは思ってもいなかった。本当にびっくりした。そういうことが「7対1」導入時にあった。非常にショックだった。導入する際に、「7対1」を算定できる病院の要件を決めておけばよかったのではないか。しかし、それをしなかった。そして、今ごろになって縛る。せっかく看護師を集めて「7対1」でやっているのに厳しくされて、「要件に合わない病院はやめなさい」というのはおかしいのではないか。「7対1」という制度の賛否は別にして、制度のつくり方に問題があると思っている。
 

現場が声を出して変えていく
 

 2012年度改定の答申書には18項目の付帯意見がある。これらについて、中医協の検証部会などで調査する予定になっている。そのうち、「入院医療等の調査・評価分科会」が担当する事項が非常に多い。武久洋三会長が、この分科会に委員として参加している。入院医療についてかなり細かく議論するので、この分科会に注目してほしい。

 「社会保障・税一体改革」で示された2025年の医療・介護モデルでは、慢性期医療が問題となる。「医療区分1」は介護で、「医療区分2、3」は医療となっている。現在の「医療区分1」すなわち、療養病床の25対1は介護に移行することがサラッと書かれている。この点について、私たちは真剣に考える必要がある。国が1つのモデルとして書いているだけであり、この通りにやれと言っているわけではない。やはり現場のわれわれが声を出して変えていくべきではないか。

 マンパワーについては、高度急性期は2倍、一般急性期は6割増、亜急性期は3割増。そうすると、看護師の数を高度急性期で2倍、一般急性期で6割増やすということになる。そうすると、現在「7対1」を算定している病院をいったん落として、将来再び増やすということだろうか。それはどういうことなのか。この辺りも改めて議論していく必要がある。

 2025年モデルについてはさまざまな問題がある。「この通りに進む」と認めるのではなく、これをたたき台にして、われわれ病院団体や医師会などが意見を述べ、厚労省などと対話しながら将来に向かっていく必要がある。

 2025年モデルの「亜急性期・回復期」の部分は、武久会長のお立場から言えば、「長期急性期」というイメージだろう。これに対し、私たち全日本病院協会は、「地域一般病棟」という概念で考えている。これはわれわれの団体が10年前から主張しており、日慢協の初代会長である天本宏先生が全日本病院協会の副会長の時に、天本先生がご提唱された。「地域一般病棟」は、民間病院の1つの形であると考えているので、今後さらに主張を進めていきたい。
 

■ 安藤高朗氏(日慢協副会長)
 

キャッシュフローを考える必要がある
 

 諸先輩方から、「細かい検証はおまえがやれ」と言われたので、現場のデータなどを出しながら話したい。今改定のポイントは、13対1と15対1の特定除外制度の見直し、救急搬送患者の受入加算の拡充、在宅からの救急受け入れを評価する加算の拡充、機能強化型の在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院の創設などが挙げられる。看取りについては、ターミナルケア加算を分割して取れるようになった。認知症関連にも新しい点数が付いた。

安藤高朗氏 特に、今回の診療報酬改定で慢性期医療にとって重要なことは、「25対1が廃止されるのではないか」という話があったが、交渉して存続できたことだ。療養病床の療養環境加算3と4が廃止される問題があったが、全日本病院協会の西澤会長にお願いしたり、大会長の池端先生に深夜に相談させていただいたり、武久会長にも助けていただき、さまざまな根回しをした結果、「療養病棟療養環境改善加算」として存続することができた。介護療養型医療施設の廃止に関しては、政治家の先生方にきちんとお話をして、その重要性を理解していただき、延長することができた。

 残念だったことは、厚生労働省の「介護事業経営実態調査」で、介護療養型医療施設の収支差が9.7%で、前年比プラス6.5%と良かったのだが、協会の調査では3.7%しかなかった。武久会長を中心に交渉したが、時間がなかったこともあり今回はうまくいかなかった。次回に向け、データを詳細に積み上げていきたい。「これだけのプラスがあるからいいではないか」ということがよく言われるが、キャッシュフローを考える必要がある。「拡大再生産のため」とまでは言わないが、借入金や税金などを考慮すると、健全経営のためには、13%の収支差が必要との指摘もある。「9.7%あるからいいではないか」ということにはならない。
 

2025年モデルでは8億6,800万円の赤字
 

 急性期病院と慢性期病院の連携が進んでいる。大阪型と東京型があるが、東京型は、三次だけではなく二次救急も含め、さらに受け入れ側は慢性期病院だけでなくケアミックス病院も含めた連携が進んでいる。東京の多摩地域には療養病床が多いが、23区内には少ないのが大きな悩みの種になっている。

 当院のある南多摩医療圏は、今後も高齢者人口が増え続ける。特に、75歳以上に対する医療・介護のニーズが増大する。高度急性期、一般急性期、亜急性期、回復期がまだまだ必要であり、特養や老健も足りない状況にある。

 「社会保障・税一体改革」で示された2025年モデルに従って、当院でシミュレーションしてみると、亜急性期や回復期病床が減り、長期療養病床が増える。収支については、一般急性期で1.6倍の人件費が必要になるので、7,300万円の赤字。亜急性期・回復期は人件費が1.3倍増えるので、1億8,500万円の赤字で、老健も4,700万円赤字になる。

 一方、療養病床だけは1億9,000万円のプラスになるが、他がマイナスなので全体的には8億6,800万円のマイナスになるという厳しいシミュレーション結果となっている。ぜひ宇都宮先生には、地域の民間病院が潰れないような報酬体系をつくっていただきたい。
 

グランドデザインを職員と共有する
 

 日慢協も質の評価に取り組んでいる。現在の診療報酬でも、看護必要度や回復期リハビリの要件、褥瘡の治癒などを通じて評価されている。永生会でも、クリニカル・インディケーター(CI)などを活用して質向上に取り組んでいる。かつて慢性期医療の分野にはCIがなかったので、自分たちでつくろうということで、口腔の清潔度や新規褥瘡発生率、在宅復帰率などを考え、「老人の専門医療を考える会」をはじめみんなで検討を進め、さらに日慢協で武久先生や矢野先生がブラッシュアップした。

 日慢協には、「慢性期医療認定病院」など質を評価するシステムがある。一方、海外では慢性期医療のCIをあまり見ない。CIに関する世界的な学会でも、慢性期のCIがない。来週、IQIPでワシントンの学会に行く。「LTAC」(長期急性期)のCIが出るらしく、非常に楽しみにしている。こうした海外の知見なども積極的に取り入れていきたい。

 今後は、高齢化に対応する街づくりに向けて、サービス付き高齢者向け住宅の充実をはじめ、認知症の学習ができるサービスや定期巡回サービス、サテライトの特養、子育て支援センターなどにも頑張って取り組んでいきたい。最終的には、在宅医療連携拠点事業にも手を挙げていきたい。当院のある八王子では認知症患者が増えていくので、認知症と身体合併症の両方に対応できるような医療にチャレンジしていきたい。

 永生病院では、将来のグランドデザインをつくっている。今後も、リハビリテーションを中心に頑張っていくつもりだ。グランドデザインを職員と共有することにより、未来に向かって進んでいける。今、特に注力したいと考えているのは、高齢者救急だ。しばしば急性期病院の方々から、「なんでこんな軽症を二次救急で診なきゃいけないんだ」「慢性期病院の救急でやってくれ」と言われる。ぜひ、高齢者救急も充実していきたい。

 今後の診療報酬、介護報酬体系については、質を高めるために注力している分野への評価や、一生懸命やった人たちが報われるような評価、標準化や看護必要度などを加味した評価が必要だろう。さらに、キャピタルコストやランニングコストをきちんと評価することが重要ではないかと考えている。[→ 続きはこちら]
 


 

 

■ パネルディスカッション
 

「経費を見込んだ点数設定を」 ─ 西澤氏
 

[松谷氏]
松谷之義座長 今改定の後、人件費が上がっているという指摘がある。「お金は後から付いてくる」という考え方もあるが、この点についてご教示いただきたい。安藤先生、いかがだろうか。
 
[安藤氏]
 「後からお金が付いてこなかったら」と考えると非常に怖い。2025年モデルに基づくと、生まれてくる女の子の8人に1人が看護師にならないと足りない数字になっている。看護師を大幅に増やすことが現実的でないならば、看護師でなくてもいい仕事は、質の担保をしながら他職種に移していく必要がある。
 
[西澤氏]
 今回の点数は誘導的であり、何もせずに黙っていては点数が取れないという診療報酬改定だった。これまでと何も変わらずに点数が取れるのは手術料ぐらいで、急性期医療には点数が付いた。

 一方、在宅医療や退院調整などは、スタッフを揃えなくてはならないし、教育したり、場所を確保したりする必要があるため、かなり費用が掛かる。将来のわれわれの病院機能に対する投資だと考えているが、中小病院に関しては基盤が元々弱いので、投資がなかなかできない面もある。

 従って、診療報酬で評価した場合には、人件費などの経費が掛かるということを見込んだ点数設定をお願いしたい。
 
[松谷氏]
 田中先生、病院を経営していないお立場からお答えにくいかもしれないが、このように経費が掛かる結果になっている改定について、どのようにご考察されるだろうか。
 
[田中氏]
 一般企業では、「業務に対して何人」という割り当てだけではなく、業務の中身を細かく分析し、生産性を上げるためにコストの高い人材をどの時間帯に使うかを割り当てて、トータルの生産を上げる。例えば、医師の業務について、どの業務は医師でなくてもいいのかということを、看護師の業務なども含めて振り分けていく作業が必要になる。

 また、固定費に相当する教育費について、病院単位での教育がなかなか難しいならば、地域の自治体や病院団体などが行う負担を、診療報酬や介護報酬以外にも求めていかざるを得ないだろう。
 
[松谷氏]
 必ずしも医師でなくてもいい業務、看護師でなくてもいい業務について、何らかの緩和政策を視野に入れているだろうか。
 
[宇都宮氏]
 その点については私の担当ではなく、医政局の範囲になるので、あまり答えられないが、「どこまでを医者がやるのか」ということは、よく出る話題であり、介護の分野では痰の吸引や経管栄養などの制度改正も行われた。

 高齢者が増えていく中で、今まで「医療が必要だ」と言っていたけれども、その「医療」自体の中身や考え方が少しずつ変わってきて、それに応じて職種ごとの役割分担も変わっていく可能性は十分あるだろう。
 

「療養病床には濃淡がある」 ─ 安藤氏
 

[松谷氏]
 高齢の救急患者さんの中には、肺炎など療養病床でも十分対応できる疾患もある。療養病床でも救急を告示できればいいと考えるが、いかがだろうか。
 
[宇都宮氏]
 救急に対する考え方による。何をもって「救急」と言うのか。今回の介護報酬改定では、老健施設でも軽い肺炎を診られるようにした。そのような軽度なものであれば十分可能性はあるが、二次救急の告示は単にそのような患者さんにとどまるものなのか、あるいは重度の患者さんも受け入れるということも想定するのかということ。それと、療養病床がどのような機能を果たしているのかということ。これらの整合性の問題ではないか。
 
[安藤氏]
 療養病床にもいろいろな種類があり、医療内容も異なる。長期の患者さんを中心として、看取りやターミナルをやっている療養病床もあれば、一般急性期のような病院もあり、いろいろな濃淡がある。

 従って、救急受け入れができる病院はやっていただければいいと思うし、ケアミックス病院のほうがより取り組みやすいだろう。その辺りは、千差万別ではないか。すべての療養病床ができるわけではないが、ちょっと具合が悪くなった患者さんを診られるようにするほうが、地域にとって必要ではないかと思っている。
 
[西澤氏]
 流れは機能分化と連携であり、地域ごとに望まれるものが違う。地域のニーズをきちんと描いて、その中で各医療機関がどのような機能を選択していくかということになる。

 そうした中で、民間病院の強みは、ほとんどの医療法人が何らかの介護事業を運営していることだ。従って、1つの病院を基準に見るのか、医療法人や関連法人を含めて考えるかによって違う。そうしたことも考えて、各地域で納得のいく医療提供体制をつくっていく必要がある。われわれ全日本病院協会も日本慢性期医療協会も、会員の半分ぐらいは同じなので互いに協力し、医師会とも協力しながら進めていくことが大事だろう。
 
[松谷氏]
 経営母体によって、さまざまな事情があると思う。連携や地域包括ケアシステムを運用していく中で、経営に対する影響は否めない。今回の改定で、さまざまな加算が付いたが、それは将来的な人件費を加味してのことだと思うが、連携に関する経費について評価していただけるスタンスはあるのだろうか。
 
[宇都宮氏]
 連携を進めることは重要なことであると考えている。
 
[松谷氏]
 2025年モデルに示された病床数などは、きちんとした根拠に基づいて想定されたのだろうか。
 
[宇都宮氏]
 誰かの気分で決めたわけではなく、「社会保障国民会議」での内閣府の推計を踏まえている。現状投影した場合の推計に対し、一定の機能分化などを進めればこうなる、という数字だ。
 
 平均在院日数と1病床当たりの職員数を見ると、日本は1病床当たり1人ちょっとで、平均在院日数が30日弱になっている。これによると、1病床当たり2人から2.5人ぐらいまで増やせば、平均在院日数は10日弱ぐらいまで減るが、それ以上職員数を増やしても、平均在院日数はもうほとんど減らないことが分かる。

 こうした推計を踏まえて、高度急性期については現在の職員数を2倍にして、平均在院日数を9~10日にしている。病床数などもこのようにして出しているので、決して根拠のない話ではない。
 

「社会全体に納得してもらう」 ─ 田中氏
 

[松谷氏]
 ケアマネジャーの質が問題になっている。資質を向上させるために、どのような方策が考えられるか。
 
[田中氏]
 ケアマネジメントの一連のプロセスの中で、ケアマネジャーが固有に担当するのはどこかという見分けが必要だ。特養や老健で、ケアマネジャーが1人でアセスメントしているわけではない。従って、在宅でケアマネジャーが1人でアセスメントするのはおかしい。

 例えば、ケア会議の招集やケアプラン原案の作成などはケアマネジャー固有の業務だが、アセスメントやケアプラン全体の作成には、多職種が関わる。どこについて資質があり、どこについては無理なのかを分けておかないといけない。ケアマネジメント全体のプロセスについて、非常に高いレベルを要求しておいて、「現在のケアマネはできない」という対応をしたら、たぶんスーパー・ケアマネしかできないだろう。もちろん、ケアマネジメントのプロセスを後から評価する指標は必要であり、これから検討する。

 もう1つ言いたいことがある。みなさんは厚労省に対し、「こういう点数を付けてほしい」という要望をするが、厚労省は相対的に業務を判断して、点数を上げるとか下げるとか、相対的な振り分けはできるが、全体の報酬改定がプラスなのかマイナスなのかを決めるのは厚労省ではない。そこは厚労省に言っても駄目だ。

 この業界が地域で果たしている役割が高いとか、地域の雇用を生んでいるとか、人々が安心して暮らせるというプラスを厚労省ではなく、財務省かもしれないし、社会全体、財界や労働界に納得してもらう必要がある。今後は、機能に応じた点数という傾向が強まるだろう。「療養病床だからこういう点数」ということではなく、「こういう機能を果たしている療養病床のこういうサービスにはこの点数」という細かい点数がこれから増えるだろう。
 

「いろいろな提言や助言を頂きたい」 ─ 宇都宮氏
 

[安藤氏]
 日本という国には資源がないので、ある程度の年齢になっても働き続けなくてはならない。そうすると、「自宅」という意味での在宅医療が伸びてくることへの不安がある。本来の「自宅」と、介護施設や療養病床との間に多くの選択肢を考えていく必要があると思う。「医療と高齢者住宅」、「医療と介護施設」、「医療と本当の自宅」という部分が臨機応変にやりやすいようなシステムをつくることが非常に重要になると考える。
 
[西澤氏]
 2025年、30年、55年に向け高齢者がどんどん増えていく。2055年には1.2人で1人の高齢者を支える。われわれ団塊の世代は自分たちでなんとかして死んでいくが、私たちの息子世代の30代、40代は大変だと思う。彼らが後期高齢者になった時、彼らの子ども世代はもっとひどい。将来そうならないように、今の30代、40代の方々に頑張ってもらいたい。
 
[田中氏]
 ヨーロッパ人に会っても、アジア人に会っても、北米人に会っても、「日本人はなぜ2025年のことをこんなに細かく考えてきちんと制度設計しているのか」と褒められる。20年前に比べて、急性期医療も慢性期医療も在宅ケアも素晴らしい進化を遂げている。これは誇りを持っていい。

 将来不安があるかもしれないが、将来を真面目に考え続けていることはすごいことだ。この力を生かして、高齢化を乗り切る。2025年から後期高齢者は増えないので、そこまでにつくっておけば乗り切るのは簡単で、あとは質を向上させていけばいい。よく、「2025年以降はどうなるのか?」ときかれるが、「それは団塊の世代の責任ではない」と言いたい(笑)。
 
[宇都宮氏]
 最後に私からは、「7対1入院基本料」などについて述べたい。「盃型」と言われるが、地域のニーズに合った医療提供を考えたとき、この形が本当に地域のニーズに合っているのか。また、医療機関もそういうことを考えて「7対1」を取っているのかという問題がある。

 これは、「医療機関が悪い」という問題だけではなく、西澤先生が指摘されたように、そういう報酬をつくったわれわれ自身の問題も当然あると思う。そういう中で、こういう形を続けていっていいのかと言ったときに、「では、こうしましょう」という案はあるか。

 ちょっと刺激的な言い方をすると、先生方から「どうするのか?」という声は聞けるが、「こうしてはどうか」という意見もぜひ聴きたい。問題点を指摘するのは誰でもできる。われわれもそれは感じているが、ではどうしたらもっと良い形に、ニーズに合う形に変えていけるのか。先生方のお考えもあるだろう。それに合うように、われわれも報酬をつくっていくことではないか。ぜひご提言いただきたい。単に、「今度はこういう報酬になったから儲かった、損した」ということだけではないと思う。

 今回の介護報酬改定では、リハビリの関係にすごく点数を付けた。例えば、自宅にリハ職が行って自宅の状況をよく見て、「自宅に帰ったらこういうリハビリをしなきゃいけないね」という計画を作ってもらうことなどを評価する加算をつくった。そうしたら、いろいろな所からすごく喜ばれて、「今まで報酬が付かないけれど私たちはやってきたので、それが認められた」という声や、「今まで外に出たかったが、施設の許可がなくて出られなかった。今回の報酬でやっと出られるようになったので、地域の自立支援ができるようになった」という声を聞いて嬉しく思った。

 恐らく、こうしたことが慢性期医療の分野でもいろいろあるのではないか。高齢者医療が変わってきている中で、どんなニーズがあり、どうしなければいけないのか、そこのところをわれわれは知りたい。ぜひ、いろいろなご提言や助言を頂きたいと思っている。「支える医療」をどのようにやったらいいのか、そういうことを先生方からお聞きできれば、われわれもありがたく思う。
 
[松谷氏]
 どうもありがとうございました。そろそろ時間になったので、このシンポジウムを終わりたい。座長として1つお願いしたいのは、さまざまな調査依頼が病院や施設に届いていると思う。この調査結果が、次回の診療報酬、介護報酬改定で点数設定の1つの根拠になるので、できるだけ速やかに回答していただきたい。[→(6)はこちら]
 



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