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コロナ患者の受入、「幅が広がっている」 ── 実調の議論で池端副会長

Posted By araihiro On 2022年11月17日 @ 11:11 AM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 令和6年度改定に向けた調査でコロナ患者の受入実績を廃止する提案に対し、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「第7波などで入院の幅が広がっている。一般病床だけではなく地域包括ケア病床や療養病床でも受入実績がかなり増えている」と指摘し、「受入実績の調査項目は残してもいい」と述べた。

 厚労省は11月16日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)をオンライン形式で開催した。この日の中医協は「4階建て」で、①薬価専門部会、②調査実施小委員会、③診療報酬改定結果検証部会、④総会が開かれ、池端副会長は②と④に出席した。

 最初に開かれた薬価専門部会では、令和5年度の中間年改定に向けた「論点整理」が示され、続く調査実施小委員会では、次期診療報酬改定の基礎資料となる医療経済実態調査(実調)の主な論点について議論した。

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01スライドP2_【実-1】主な論点_2022年11月16日の調査実施小委

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調査の簡素化の観点から一部を見直す

 回答率の向上が大きな課題となっている実調について、厚労省は同日の小委に単月調査の廃止を提案し、了承された。「損益」における介護収益の内訳などを廃止する提案も了承されたが、コロナの影響調査については議論があった。

 厚労省は前回10月26日の会合で「調査の簡素化の観点から一部を見直すこととしてはどうか」とし、コロナ患者の受入実績などを挙げた。

 同日の意見などを踏まえ、今回11月16日の会合では「以下の調査項目を廃止することとしてはどうか」とし、「これまでの新型コロナウイルス感染症入院患者等の受入実績」などを挙げた。

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02スライドP7_【実-1】主な論点_2022年11月16日の調査実施小委

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受入の有無のみでは全体への影響が見えにくい

 前回の会合で、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は「新型コロナ感染症の影響の把握は大変重要な調査項目であると理解している」とした上で、「(簡素化の観点から)一部を見直すとは、具体的にはどのような対応を考えておられるのか」と尋ねている。

 厚労省の担当者は「病院・診療所における新型コロナウイルス感染症入院患者もしくは疑い患者の受入の状況が1つ考えられる」と回答。その上で、前回の調査票の該当部分を示しながら「受入の有無のみを問う項目になっており、それが全体にどのような影響があったかが今ひとつ相関としては見えにくい部分があったのではないかと考えられる」と説明した。

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03スライドP8_【実-1】主な論点_2022年11月16日の調査実施小委

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 コロナ患者の受入実績について前回の調査では「令和3年5月31日現在、複数該当する場合は小さい番号を選んで記入してください」との設問があり、選択肢には「入院患者の受け入れ実績あり」「転院により受け入れた実績あり」などが挙げられている。

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定点観測で年度単位の状況を示していない

 前回会合で、厚労省担当者の説明に長島委員は「前回改定の影響なのかコロナの影響なのかという分析ができないかということでコロナ患者受入の有無について調査した経緯があると理解しているが、実際に調査を実施してみたけれども有用性が少なかったというものを簡素化することについては了承したい」と述べた。

 こうした議論を踏まえ、厚労省は今回の会合で受入実績の廃止などを提案。厚労省の担当者は「前回の調査では、令和3年5月31日現在における定点観測となっており、必ずしも年度単位での状況を示すものではない」と説明した。

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04スライドP7_【実-1】主な論点_2022年11月16日の調査実施小委

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クラスター発生の調査項目は設けるべき

 今回の質疑で、長島委員は「コロナ対応と通常診療が併走している状況においては、コロナ患者の受入実績で分けて調査してもデータ上、差異を見いだしにくくなりうることは理解できる」とし、厚労省の廃止案に賛成した。

 クラスター発生の有無に関する調査については、「クラスターが発生した場合は通常の保険診療が制限される一方で補助金が交付されるなど収益構造が大きく異なるので、クラスターの発生の有無に関する調査項目は設けるべき」と述べた。

 池端副会長もクラスター発生の調査については長島委員に賛同したが、受入実績の廃止については異を唱えた。詳しくは以下のとおり。
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2022年11月16日の調査実施小委員会

【池端幸彦副会長】
 単月調査はかなり手間のかかる調査であり、その割には評価するのが難しいので今回は外すという提案には賛成したい。それ以外の調査項目の変更点についても、おおむね賛成したいと思う。 
 新型コロナウイルス感染症の影響の把握については長島委員の意見と同様で、クラスターの発生の有無に関する調査項目を設けるべきと考える。
 一方、廃止する項目として「新型コロナウイルス感染症入院患者等の受入実績」が提案されている。私の聞き間違いかもしれないが、前回調査では令和3年5月31日時点の定点観測となっているので評価しにくいという説明だったように思う。
 しかし、この設問をよく読んでみると、過去の受入実績の有無についてチェックを入れて回答する形式になっている。クラスターの発生についても「あり」「なし」で答える調査になっている。つまり、定点ではなく、過去の受入も含めた「あり」「なし」の調査になっているように思う。その点について私の思い違いかどうか確認したい。

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【厚労省保険局保険医療企画調査室・荻原和宏室長】
 私の表現がやや悪かったと反省している。池端委員からご指摘いただいたポイントは、8ページの調査票の中に、例えば病院では11番の「これまでの新型コロナウイルス感染症入院患者等の受入実績」について令和3年5月31日現在での状況を記入していただく所で、受入実績はそれまでにあるかどうかをチェックしていただく。5月31日現在で受入実績があったかどうか、また複数該当する場合は番号を選んで記入していただき、その時点での状況を把握する。 
 いずれにせよ実績があれば「実績あり」ということで、それまでの間、実績あれば「実績あり」ということでご記入いただくことになるのだが、どうしても年度単位での状況についての面的な把握が難しいという課題があると考えており、先ほどのようにご説明した。

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【池端幸彦副会長】
 そうであれば、私の意見としては、このコロナ患者の受入実績は令和2年度までであり、令和3年度以降は第7波などで入院の幅が広がってきている。一般病床だけではなく地域包括ケア病床や療養病床でも受入実績がかなり増えている。そうした受入実績の増え方と実調の数字への影響度を見るために、受入実績の調査項目があってもいいと思う。チェックするかしないかだけの回答であり、それほど負担にもならない項目なので、これは残してもいいのではないか。意見として申し上げておく。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


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