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マイナ保険証の普及へ、「痛み分けで頑張ろう」 ── 中医協総会で池端副会長

Posted By araihiro On 2022年8月4日 @ 11:11 AM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 マイナンバーカードの保険証利用の普及に向けて議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「基盤整備の途中段階で、それぞれがメリットを主張しても共有できない」と指摘し、「お互いに汗を出し、痛み分けをして、三位一体、四位一体で頑張ろう」と呼び掛けた。

 厚労省は8月3日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第526回会合をオンライン形式で開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。

 厚労省は同日の総会に「医療DX対応(その1)」と題する資料を提示。令和5年4月から始まるオンライン資格確認の原則義務化に向けて2項目の論点(①義務化の例外、②加算の取扱い)を示し、委員の意見を聴いた。

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19_【総-3】医療DX対応について(その1)_2022年8月3日の中医協総会

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やむを得ない事情で対応できない場合も

 論点①について厚労省保険局医療介護連携政策課の水谷忠由課長は「来年4月からの原則義務化は、いわゆる療担規則等において義務づけることとしてはどうかということで、ご議論をいただきたい」と提案した。

 質疑で、長島公之委員(日本医師会常任理事)は「やむを得ない事情により義務化に対応できなかった場合、療担違反ということで即座に保険医療機関の取消にも至るような厳格な意味であれば、医療を提供する医療機関だけでなく、医療を受ける国民、患者さんも含めて地域医療の現場に大混乱をきたす」とし、「そのようなことにならないよう、丁寧かつ適切な対応をお願いしたい」と求めた。

 また、紙レセプトの請求が認められている医療機関のみを例外とする提案については、「それ以外の場合も来年4月に向けて導入することに憂いが残る部分がある」とし、「例えば離島やへき地、都心でも建物の構造によっては光回線が普及していない所」を挙げた。

 その上で、長島委員は「医療機関の責任とは言えない、やむを得ない事情により来年4月に間に合わない事態が生じてしまう懸念がどうしても払拭できない」と重ねて強調。「今後の導入状況を把握し、その結果によっては必要な対応を講ずることがありうることを中医協で共有することが必要」と述べた。

 論点②については、「この点数を単に廃止するなどということは診療報酬の基本的な考えに照らせば、あり得ない」とし、今改定で新設された「電子的保健医療情報活用加算」の継続を求めた。

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患者にとって納得できない加算

 一方、支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は論点①について、「例外規定はこの考え方でよろしい」と了承した上で、「ただし、これをいつまでもずっと続けるということではなく、ある一定程度の期限は切ったほうがいい」と述べた。

 同じく支払側の佐保昌一委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)もこれに賛同し、「今回例外とするにしても今後は極力、電子レセプトの移行が進むよう、道のりを示して年度を区切って確実にオンライン化に向けた取組を推進すべき」と主張した。

 また、論点②について安藤委員は「加算を設けるならば、オンライン資格確認システムを活用して診療を受けた患者が対価を支払うのにふさわしいメリットを感じられることが大前提」と主張。マイナンバーカードを持参しない場合や、持参しても情報取得に同意しなかったケースを挙げ、「こんな場合でも加算される仕組みは患者にとって納得できない」と述べた。

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医療機関も頑張らなければ

 支払側の鈴木順三委員(全日本海員組合)は「事務コストなどが非常に軽減される」として医療機関側のメリットを強調。「事務コストが下がるのに、なぜ患者側の負担が多くなるのか」と疑問を呈した。

 松本真人委員(健康保険組合連合会理事)はシステム運用を開始している施設が少ないことを挙げ、「岩盤のように、どうしても申し込みたくない一定の医療機関がある」と苦言。「今後は確実に申し込みするという決意表明をぜひ伺いたい」と医療側の協力を求めた。

 こうした意見を踏まえ、池端副会長は「現在、患者さんのほとんどがマイナンバーカードの保険証を持っていない状況」とし、「ランニングコストなども考えると現時点ではまだ医療機関の事務コストは減らず、むしろ増える」と理解を求めた。

その上で、池端副会長は「普及に向けて、医療機関も行政も保険者もみんなが少しずつ痛み分けをしようというのが、この立て付けではないか。もちろん医療機関もしっかり頑張らなければいけない。私自身もお役に立ちたいと思っている」と述べた。池端副会長の発言要旨は以下のとおり。

■ オンライン資格確認の原則義務化について
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 支払側、診療側の意見を踏まえて述べる。まず冒頭、長島委員がおっしゃったことに対しては私も全面的に賛成したい。私が述べたいことをほぼ網羅していただいている。そういう理解の上で、皆さんのご意見に対して述べたい。私自身も医療DXのための基盤となるのがオンライン資格確認であると考えており、皆さんと共有している認識だと思う。 
 そのために大事なことは、いかに普及するかである。オンライン資格確認をめぐっては、そのメリットやデメリットなど今までいろいろな議論があった。今回の資料にもお示しいただいたように、このメリットを皆さんが共有できるために何が必要か。それはオンライン資格確認システムの普及であろう。まず端末が普及する。そして国民の皆さんがマイナンバーカードを持つ。医療機関にマイナンバーカードを持ってきていただく。これらが全て揃って、普及率が100%になれば素晴らしいメリットが生まれる。そして、それが基盤になって、さらに医療DXが進む。ただし、こうした基盤整備の途中段階で、それぞれがメリットを主張しようとしても、なかなかこれは共有できないのが現実であると思う。
 先ほど鈴木委員から、オンライン資格確認システムによって医療機関はコストが下がるのになぜ報酬を要求するのかという疑問が示された。現在、患者さんのほとんどがマイナンバーカードの保険証を持っていない状況である。システムを維持するためのランニングコストなども考えると、現時点ではまだ医療機関の事務コストは減らず、むしろ増える。負担も増える。今後、大幅に普及していけば、コストがかなり減る可能性もあるとは思うが、現在はその前段階であるということをご理解いただきたい。 
 オンライン資格確認システムの普及に向けて、医療機関も行政も保険者も、そして国民みんなが少しずつ痛み分けをしようというのが、この立て付けではないかと思っている。そのためには、もちろん医療機関もしっかり頑張らなければいけない。私自身もお役に立ちたいと思っている。こうした途中段階で原則義務化に踏み出したのだから、ぜひその辺もご理解いただきたいと思う。
 支払側から「原則義務化の具体的な説明がないのに、なぜいきなり例外の話が出てくるのか」との意見があった。原則義務化については、「療担規則等において義務づける」との方針であるが、療担規則はわれわれ医療機関にとってはものすごく重い。ペナルティを要求される罰則規定のようなものなので、療担規則に入ることは医療機関にとって非常に大きい。先ほど長島委員もおっしゃったように、場合によっては即、指導監査の対象になり、医療機関の業務停止まで起こりうる。来年4月から義務化ということになれば、とんでもない混乱が起きる。だからこそ、一定の医療機関は外すという例外規定を設けないと大混乱に陥る。特に小規模の医療機関や薬局などに対する例外規定を設けることをぜひお願いしたい。

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■ 診療報酬上の加算の取扱いについて
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 2つ目の論点については、オンライン資格確認の普及がまだ不十分であるため慎重に考えたい。端末の普及も必要であるし、マイナンバーカードの保険証を持っている人がもっと増える必要がある。普及が進んでいない段階で診療報酬の見直し等々を行うことは、医療機関・薬局における導入加速化プランに途中でブレーキをかけることになるので、時期的にはまだ難しいのではないかと思う。ぜひご理解いただきたい。
 なぜ、いまだに手を挙げない医療機関や薬局があるのか。支払側から発言があった。県医師会の立場から申し上げると、費用負担の問題があると思う。加速化プランで「システム事業者導入促進協議会」が設置されているが、その協議会に参加していない中小のベンダーから高額な費用を要求されていると聞いている。端末とレセコンをつなぐ場合に100万円、200万円という単位で、かなり高額な費用である。しかし、補助金の対象にならないケースもある。しかも利用者がほとんどいない。このような状況では、なかなか踏み出せない。ぜひ丁寧に聞き取りをしていただいて、場合によっては、中小規模の医療機関や薬局に対して、いろいろな補助金をさらに上乗せすることも考えていただけるとありがたい。
 本日、皆さんのご意見をお聞きして、方向性としては共有していると思うので、もうひと頑張り、お互いに汗を出し、そして痛み分けをして、三位一体、四位一体で頑張ろうということで、ぜひご理解いただきたいと思う。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


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