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賃上げルールに「現場の裁量を」 ── 処遇改善の議論で池端副会長

Posted By araihiro On 2022年6月16日 @ 11:11 AM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 診療報酬による賃上げルールの要件設定などを議論した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「他職種への配分など、それぞれの医療機関の現場感覚で多少の違いが出る」と指摘した上で、「現場の裁量を少しでも認めていただく方向の議論をお願いしたい」と求めた。

 厚労省は6月15日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第523回会合をオンライン形式で開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。

 厚労省は同日の会合に「処遇改善(その2)」と題する48ページの資料を提示。介護の処遇改善加算や看護補助金の要件などを示した上で、賃上げに関するルールについて「どのような点に留意することが必要か」と意見を求めた。

 委員からは、現在の看護補助金について「病棟薬剤師が対象になっていないので、他のコメディカルとの不公平感が増す」との指摘や、今後に向けて「歯科衛生士などコメディカルの賃金改善が可能となる柔軟な運用を」との声もあった。池端副会長は「病棟薬剤師も対象になりうる」との考えを示し、「現場の裁量をしっかりとらえたほうがいい」と述べた。
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中小病院や診療所も頑張っている

 この日の総会は、小委員会と検証部会の後に開かれた。最初の小委員会では、看護の処遇改善について入院外来分科会での議論を踏まえて委員の意見を聴いた。続く検証部会では、令和4年度改定の影響調査についてスケジュールなどを決めた。小委員会、部会の内容は総会に報告された。

 総会の議題は、①医療機器及び臨床検査の保険適用、②診療報酬改定結果検証部会からの報告、③診療報酬基本問題小委員会からの報告、処遇改善(その2)──の3項目。

 このうち③は2項目に分かれており、前段は入院外来分科会での議論を引き継ぐ内容で、後段は賃上げルールの要件設定など。これにあわせるかたちで、論点も前段と後段の2項目となっている。
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論点_【総-3-3】処遇改善(その2)_2022年6月15日の総会

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 前段の「点数設定に当たっての考え方」について、池端副会長は「発熱外来をやっている中小病院や診療所等で頑張っている看護師がたくさんいる」と指摘し、「外来を入れて整合性が保てるのかどうか」と述べた。
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2022年6月15日の中医協総会

■ 点数設定に当たっての考え方について
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 「総-3-3」の24ページ(医療機関ごとの必要額と収入見込み額の乖離の状況)については、先ほどの基本問題小委員会でもいろいろな意見があった。モデル①-2か、③-2か。基本診療料の項目について「入院料」だけでいくのか、「初再診料」を入れるのか。
 私は患者負担を考える視点も非常に重要だと思うが、中小の医療機関や診療所等との整合性も重要であると思う。今回の看護補助金で対象になったのは、救急車200台以上、三次救急の医療機関である。すなわち、コロナの重症患者を受け入れるために、しっかり汗をかいて対応している看護師の処遇改善という意味づけではないかと思う。 
 そういう点から考えると、そこに「外来」を入れて整合性が保てるのかどうか。発熱外来をやっている中小の医療機関、あるいは診療所等で頑張っている看護師がたくさんいる。それとの整合性が保てるかという懸念も少しある。 
 今回の措置は、重点医療機関を中心とした高機能の病院の看護師が対象になるということを考えると、外来を入れることに対して慎重な考え方も必要ではないか。 
 もちろん、これを制限するつもりはない。今回の対象は絞られているが、可能であれば、さらに広げていただけるときに、「初再診料」も含めたシミュレーションは非常に重要になる。そういうことも含めて、さらに議論を深めていただきたい。

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■ 賃上げに関するルールについて
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 介護職員の処遇改善や看護補助金を比較する資料を示していただいた。介護職員の処遇改善はもともと補助金だったものが加算に移ったものであり、非常に参考になるのではないかと思う。これをもとに、しっかり議論していただきたい。 
 他職種への配分などについては、ほかの委員から意見があったように、それぞれの医療機関の現場感覚で多少の違いが出てくると思うので、どこまで配分するかについては、ある程度、現場の裁量をしっかりとらえたほうがいいと思う。 
 例えば、病棟薬剤師に関しては、十分、その対象になりうるのではないかと私自身も思っているので、そういう現場の裁量を少しでも認めていただく方向の議論をお願いしたい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


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