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看護の処遇改善、「稼働率で左右される」 ── 中医協分科会で井川常任理事

Posted By araihiro On 2022年5月20日 @ 11:10 AM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 看護の処遇改善に関わるデータなどが示された厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の井川誠一郎常任理事は「稼働率によって看護師の必要数が左右され、これが患者数、診療報酬の請求数と相関するのではないか」と指摘し、「相関をきちんと見た上で判定することが必要だ」と述べた。

 厚労省は5月19日、中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織である「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(分科会長=尾形裕也・九州大学名誉教授)の令和4年度第2回会合をオンライン形式で開催し、当会から井川常任理事が委員として出席した。

 厚労省は同日の分科会に「看護の処遇改善について(技術的検討において必要な調査・分析 その2)」と題する60ページの資料を提示。「同じ入院料を算定している病院の中でも、ばらつきが見られていた」「同じ入院料を算定している病棟の中でも、実際の配置数にはばらつきが見られた」などの分析結果をまとめ、委員の意見を聴いた。

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看護の処遇改善に係る診療報酬上の対応に向けた技術的検討において必要な調査・分析について その2_ページ_60

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データの紐付けは「鋭意、作業中」

 質疑の冒頭で池田俊也委員(国際医療福祉大医学部公衆衛生学教授)は「入院料の算定回数のデータと病床機能報告での看護職員数等のデータを病院ごとに紐付けることは可能か」と尋ねた。

 池田委員は「もし可能だとすれば、例えば病棟に配属されている看護職員の数と、その入院料の算定回数に相関があれば、例えば入院料でそれを評価することの一定の妥当性も示されるかもしれない」と指摘した。

 厚労省保険局医療課の金光一瑛課長補佐は「ご指摘いただいた点は可能」としながらも、「データ量が膨大で紐付けに時間がかかっており、鋭意、作業中」と説明した。

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1床当たりの看護師数がなぜ変化するのか

 金光補佐の回答を受け、田宮菜奈子委員(筑波大医学医療系教授)は「1個1個が突合できるのであれば、例えば入院料の算定回数と全体のナースの数の分布を見れば、相関がどのぐらいで外れ値がどこにあるかもわかる」と指摘。「ばらつきが大きければ、そのばらつきに何か別の対処をする必要がある」との考えを示した。

 こうした意見を踏まえ、井川常任理事が発言。「1床当たりの看護師数がなぜ、これほど大きく変化するのか。その理由を考えた上でなければ診療報酬とすり合わせることはできないのだろう」との認識を示し、「池田委員がおっしゃったように、相関をちんと見た上で、どういうかたちになるのかを判定することが必要だ」と述べた。

【井川常任理事の発言要旨】
 今、田宮先生がおっしゃった全体的な話というのは非常に重要かと思うが、私はどちらかというと、入院に関して言えば、1床当たりの看護師数というのがなぜ、これほど大きく変化するのかを、まずその理由を考えた上でなければ、これを例えば診療報酬とすり合わせることはできないのだろうと思って、ちょっと考えてみた。 
 例えば、地域包括ケア病棟のデータ(病床1床当たりの看護職員数の分布)が58ページに出ている。そこで、1床当たりの看護師の分布数が極端に少ない0.2以下は、ちょっと異常だが、0.23あたりぐらいから0.7ぐらいまで分布している。
 この分布の仕方というのは、一体何が起こっているか。地域包括ケア病棟なので、13対1というのは法定基準が決まっているので、本来であれば、ある程度、そこに集中してくるはずなのだが、皆さん、ご存知のように看護師の法定必要数は前年度の1年間の稼働率によって左右される。つまり、100%の稼働率があった所と70%での稼働率があった所では、その必要法定数が変わってくることになる。したがって、70%の稼働率の所が、そのまま70%のままで満たしていれば、そこはそれで成り立つということが言える。 
 例えば、50床の地域包括ケア病棟で看護職員配置加算というのがあるが、この場合は10対1にしなければいけないが、10対1の看護配置が必要になって、満床であれば25人の看護職員の配置が必要であるが、これが稼働率70%では18人で基準を満たす。したがって、基準上18人しか配置していない病院と、満床の25人を配置している病院というように配置数が変わる。
 さらに、看護職員の配置加算を取得していない地域包括ケア病棟の場合では、もともとの13対1となるから、常勤換算で言えば、2.6対1になるので、満床でも20名、70%を超える稼働率がなければ14名で基準を満たすことになる。そうすると、それを単純に50床当たり25人という計算で割ると、0.5となるし、看護職員配置加算もなく稼働率が70%程度という病棟であれば、50床当たり14人ということで、0.28まで下がってしまう。その差がかなりここに出てきているのではないかと私は考えている。 
 そうすると、ここの部分は実は何に効いてくるかというと、患者数に関わってくる。患者数に関わるということは、診療報酬の請求数そのものと、ひょっとすると相関するのではないかと思っている。
 冒頭で池田委員がおっしゃったように、やはり、その辺の相関というものをきっちりと見た上で、どういうかたちになるのか判定することが必要だと思っている。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


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