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医療と介護の連携、「賃金差があると難しい」 ── 介護保険部会で橋本副会長

Posted By araihiro On 2022年5月17日 @ 4:50 PM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 「地域包括ケアシステムの更なる深化・推進」をテーマに開かれた厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の橋本康子副会長は「医療と介護の連携強化について医療と介護の現場で賃金差があると現実にはなかなか難しい」との認識を示した上で、「両制度のつなぎ目を話し合えるような場が必要ではないか」と改めて提案した。

 介護保険制度の見直しに向け厚労省は5月16日、社会保障審議会(社保審)介護保険部会(部会長=菊池馨実・早稲田大学法学学術院教授)の第93回会合をオンライン形式で開催し、当会から橋本副会長が委員として出席した。

 厚労省は同日の会合に「地域包括ケアシステムの更なる深化・推進について」と題する236ページの資料を提示。厚労省の担当者が約20分にわたり説明した後、委員が意見を述べた。
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表紙_【資料2】地域包括ケアシステムの更なる深化 ・推進_2022年5月16日の介護保険部会

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 同資料は「当面検討を行う論点」に沿って5項目で整理されている。

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目次_【資料2】地域包括ケアシステムの更なる深化 ・推進_2022年5月16日の介護保険部会

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 橋本副会長はこのうち「医療と介護の連携強化」に関連して意見を述べた。詳しくは以下のとおり。

 私ども日本慢性期医療協会は、病院と施設、いわゆる医療と介護・福祉の両方の施設を運営している会員が多い協会である。その現場から悲痛な声があるので発言させていただきたい。
 今回の資料にも挙がっている「医療と介護の連携強化」は以前からの重点項目であるが、実際、処遇改善加算などで介護職との賃金差が現実にある。そこで何が起こっているかというと、病院などの医療の現場では介護士を募集してもほとんど来ない。実際に給与差がどれほどあるかはわからない。同じ経営者が経営している所ではそれほど差はつけていないと思われるが、処遇改善加算などで、やはり介護施設のほうが給与がいいとなってしまっているので、病院がいくら募集しても職員が集まらない。そのため、医療の現場では、介護士の代わりに看護師が人員配置されているというようなことが現実に起こっている。
 「医療と介護の連携強化」と言うが、医療と介護の現場で賃金差があると、それはなかなか現実には難しいことではないかと思う。患者や利用者は、それぞれの時期で分断されているわけではない。たとえが適切かはわからないが、いわゆる川の上流から下流に流れているようなものだと思う。その流れの中で分断するようなことが起きてくると、医療にしても介護にしてもうまく進んでいかないのではないかと思う。
 医療では、ADLを上げていくようなケア、拘縮を防ぐ、食事をちゃんと取れるようにする、トイレで排泄ができるようにするなど、そういったケアの部分が十分に行われていないと、そのまま医療から介護のほうに患者が移ると、要介護度が高くなる。それでは何をしているのかわからない。極論すれば、要介護者をどんどん病院でつくっている、医療の現場でつくられているということが現実に起きてしまっている。それを介護保険のところで何とかしようと一生懸命、躍起になっているというようなことで、何かそのあたりを見直さなければいけないのではないかと思う。
 確かに、ここに言われているように医療と介護・福祉の連携はとても大事で、そこがうまく流れていかなければ要介護者が今後もどんどん増えていく。その上、そのケアをする人たちがどんどん減っているので、何とかしなければいけないと思う。実際、そういう現場を持っておられる経営者の方々は、もうどうしていいかわからないような状態になっているのではないかと思う。
 前回も発言したが、医療保険と介護保険の制度が違うのはわかるのだが、その両方の制度のつなぎ目のところを話し合えるような場が、必要なのではないかと思う。介護保険だけ話す、医療保険だけ話すというふうにしていると、なかなかうまく進まなくて、要介護者が今後もどんどん増えていくのではないなと思う。それを考えていただきたい。
 また、処遇改善加算の効果について、介護士の希望者が増えたとか、人員不足が多少でも緩和されたとか、そういったデータがあれば教えていただきたい。

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【厚労省老健局老人保健課・平野課長補佐】
 賃金に関しては賃金構造統計基本調査や、われわれのほうで介護従事者処遇状況等調査を実施しているが、着実に上昇しているという効果が見られる。その後の人員不足がどれだけ解消されたかに関しては、今、手元にデータ等がないが、例えば分野ごとの有効求人倍率など、そういったものがあるかどうか確認していきたいと思う。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


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