- 日慢協BLOG —- 日本慢性期医療協会(JMC)の公式ブログサイト - http://manseiki.net -

「本当に正しい処遇改善の在り方か」 ── 池端副会長、今後の課題を提示

Posted By araihiro On 2022年4月28日 @ 11:11 AM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 コロナ対応や三次救急などを担う急性期病院に勤務する看護師らの処遇改善に向けた調査内容などを審議した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「本当に正しい処遇改善の在り方か、ゆくゆくは検討してほしい」と提案した。支払側の委員は「将来的なテーマとしては承るが、今回はあくまでも限られた中の範囲で粛々と議論する」と返した。

 厚労省は4月27日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第520回会合をオンライン形式で開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。

 厚労省は同日の小委員会と総会に、10月から診療報酬で対応する看護師らの処遇改善に向けた調査内容などを示し、了承された。

.

論点【診-4】看護の処遇改善に係る特別調査について_2022年4月27日の中医協小委

.

 調査対象は「今回の診療報酬による看護の処遇改善の対象となり得る医療機関」とし、「救急搬送件数200台/年以上の医療機関」などを挙げている。

.

【診-2】看護の処遇改善に係る特別調査実施の検討について(案)_2022年4月27日の中医協小委

.

ばらつきが出た場合の対応をどうするのか

 総会に先立ち開かれた小委員会では、4月13日の中医協分科会での検討内容などを尾形裕也分科会長が報告した上で、制度設計のための調査について井内努課長が説明し、委員の意見を聴いた。

 質疑では、補てん不足などの「ばらつき」が出た場合について診療側と支払側の意見が分かれた。

 城守国斗委員(日本医師会常任理事)は「実際の必要額と診療報酬のぶれを最小限にする方式を模索することが重要」との考えを示し、「医療現場で発生した実際の過不足についてどのように対応するのか。医療機関経営にとって極めて重要な問題になるので今後、検討していくべき」と述べた。

 その上で、城守委員は「補助金であれば、後ほど支給調整をする仕組みがあるが、診療報酬ではそのような調整機能がない。ばらつきが出た場合の対応をどうするのか。中医協の所掌ではない案件になるかもしれないが、中医協として提言は必要と考えている」と述べた。

.

過不足を受け入れながら修正していく

 これに対し、支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は「処遇改善に必要な額と診療報酬で得られる額とのずれ」を問題にした。安藤委員は、「その病院が診療報酬で得た金額との差がしっかりとわかるようなデータも当然、必要になってくる。医療機関には大変お手数をかけるが、そのような仕組みもつくっていく必要がある」と提案した。

 同じく支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「制度設計について分科会では『ある程度は割り切りをしないといけない』という指摘もあったようだ」とした上で、「さまざまな要素を考慮すればするほど複雑になり、今後の検証や修正等も難しくなるので、できるだけシンプルな仕組みにすべき」との考えを示した。

 その上で、松本委員は「診療報酬で対応する限り、患者数や看護職員数などの変動によって個々の医療機関で見ると必ず過不足は生じる」とし、「ある程度は過不足を受け入れながら、例えば、ベースアップ、一時金、どういったかたちで支払われたのかなどを含めて、今後、実態を検証して、必要に応じて修正していくことが現実的な対応だろう」と述べた。

.

賃金が上がったかどうかは次の段階

 こうした議論を踏まえ、公益委員から補てん状況調査を視野に入れた発言があった。飯塚敏晃委員(東京大学大学院経済学研究科教授)は「現状の賃金の支払いについてのデータも当然必要だが、今回の調査には含まれていない」と指摘。「これは既存のデータで把握可能と理解してよろしいか」と質問した。

 厚労省の井内課長は「賃金が上がったかどうかの調査内容が含まれていないというご指摘」と受け止めた上で、「今般は、まず診療報酬でどのような対応を行うかというために個々の病院の実態を調査するもので、端的に言えば、必要な資金が各病院でどれぐらい要るのかの調査」と説明した。

 その上で、井内課長は「資金が入ったあと賃金がどのように上がったのかは、その次の段階。まずは病院の実態調査をするために、この特別調査が組まれている」との認識を示した。

.

その先に進むことも想定しながら検討を

 続いて開かれた総会で、井内課長は「小委員会では制度設計について調整機能のようなこと、報酬と処遇間の差についてわかる必要があるというようなこと、シンプルな仕組みにというようなこと、さまざまなご意見をいただいた」と伝え、委員の意見を聴いた。

 池端副会長は「公定価格の医療従事者に対する処遇改善という大きな目標があり、今回はその第一歩として、例えば救急車200台以上の病院に限った看護職員等の処遇改善となったことを考えると、その先に進むことも想定しながら、ぜひ検討していただきたい」と述べた。詳しくは以下のとおり。
.
2022年4月27日の中医協総会

 今ほど城守委員からもあったように、私としても今回の「総-3-4」(看護の処遇改善に係る特別調査)にある論点に沿った取り組みに賛同させていただきたい。 
 その上で、少し意見を言わせていただく。今回、中医協に求められたものは、処遇改善に関する診療報酬上の対応を正しく、より正確に、その対象となる看護師等に届けるための仕組みとしてどういう立て付けがいいかということ。そして、そのためには調査が必要だということだと思うが、もう少し原点に戻ると、そもそも公定価格の医療従事者に対する処遇改善という大きな目標があって、今回はその第一歩として、例えば救急車200台以上の病院に限った看護職員等の処遇改善となったと考えると、その先に進むことも想定しながら、ぜひ、ご検討いただきたい。 
 今回、その調査の対象になる医療機関に勤務されている看護職員等に関して一定程度の調査の結果が出て、それに対して方法を決めて加算を行って、そして、それが正しく届けられているかということが第一歩だと思うが、その次には、それ以外、今回の立て付けでは対象にならない看護師等との格差が適格なものなのか検討していただきたい。勤務先によって対象になる看護師等と、そうでない看護師等が出てくる。 
 もちろん、就業の危険度や難易度などによって、今回はこういうかたちになったということは理解しているつもりだが、それが本当に正しい処遇改善の在り方かどうかということも、ゆくゆくは検討していただいて、その次のステップのときに、どこまでそれを広げるべきなのか、広げるべきではないのかということも議論できるような、そういうことを今後、検討できることも意識しながら今回の処遇改善の対応をしていただきたい。

.
【松本真人委員(健康保険組合連合会理事)】
 今、池端先生からコメントがあった件については、将来的なテーマとしては承るが、今回はあくまでも限られた中の範囲で粛々と議論することを考えている。よろしくお願いしたい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


.



Article printed from 日慢協BLOG —- 日本慢性期医療協会(JMC)の公式ブログサイト: http://manseiki.net

URL to article: http://manseiki.net/?p=8337

Copyright © 2011 Japan association of medical and care facilities. All rights reserved.