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看護の処遇改善、「フレキシブルにしないと格差」 ── 中医協分科会で井川常任理事

Posted By araihiro On 2022年4月14日 @ 5:17 PM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 10月から診療報酬で対応する看護師らの処遇改善について具体的な検討を開始した厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の井川誠一郎常任理事は「第6波では慢性期病院や介護施設の看護師もかなり疲弊した」とし、「今後の改定でフレキシブルに変えていけるようにしておかないと看護師同士(勤務施設による)の中で給与面での格差ができてしまう」と指摘した。

 厚労省は4月13日、中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織である「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(分科会長=尾形裕也・九州大学名誉教授)の令和4年度第1回会合をオンライン形式で開催し、当会から井川常任理事が委員として出席した。

 厚労省は同日の分科会に、看護の処遇改善について活用できるデータとしてNDBや病床機能報告のデータを挙げたが、2月から開始した補助金については、「現時点で入手可能なデータは無い」とした。

 委員からは補助金のデータをできるだけ活用すべきとの意見があったが、現時点で入手できる範囲で簡易な設計を目指すべきとの声もあった。井川委員は、処遇改善を幅広く実施できる柔軟な制度設計の必要性を指摘し、補助金のデータも活用すべきとの意見に理解を示した。

■ 今後のデータ分析に向けて
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 補助金というかたちで看護師1人当たりを対象に出している金額を今度は診療報酬で患者1人当たりで取るのは非常に齟齬があって、なかなか難しいところもある。そうした中で現在、対象者については急性期の中でも非常に特化した所だけに支給されることが決まっている。確かに、デルタ株の第5波では重症病床がかなり逼迫したこともあって、その時に急性期の看護師たちもかなり疲弊した。しかし、第6波では慢性期病院や介護施設等からの急性期の入院について、呼吸不全を有する中等症Ⅱ以上でなければ入院できない状況に追い込まれた。大阪では医療緊急事態宣言が2月8日に出たが、その時、実は重症病床ではなく軽症・中等症の逼迫であった。軽症・中等症病床の使用率が100%を超える状況になり、結果的に重症病床に中等症・軽症でも入らなければいけなくなった。
 そういう状況下で、どうなったか。慢性期病院や介護施設は自分のところで軽症・中等症Ⅰレベルの患者さんを診なければならなくなった。その時に、慢性期等の看護師等もかなり疲弊したという事実がある。特に看護師たちの数が少ないので、ゾーニングなど感染管理という意味でもかなり厳しい状況に追い込まれた。 
 こうした「縛り」というか、対象となる看護師が施設によって決まるのは10月の改定においては致し方ないと思うが、今後の改定でもっとフレキシブルに変えていけるように、事務連絡などで変えられるようにしておかないと、ずっと格差ができてしまう。看護師同士の格差と言うか、給与面での格差ができてしまう。また、特に介護施設の場合には介護職員もかなり疲弊したので、そういうところにも分配してあげたいのだが、今回の措置ではなかなかそういうところにまで回ってこない。できるだけシンプルな調査票にすべきとの意見も理解できるが、こうしたところもしっかりと踏まえた上で、どういう調査票を作るかをしっかりと考えていかなければいけない。
 今後の検討に向けては補助金のデータ活用も考えられるが、資料では「補助金の支給状況」について「現時点で入手可能なデータは無い」としている。しかし、この資料に掲げてあるということは、補助金のデータが取れるのであれば取るつもりがあったのだろうと思う。補助金に関しては、申請しない医療機関もある。申請した所でも、それぞれいろんな職種にわたって配布する所もあれば看護職員にしか支給しない所もある。
 つまり、今回の補助金に関するデータというのは、今後、どの程度の金額が必要かというデータであり、何をもって整合性をとるか、今回の補助金との金額を合わせるかというデータであるとは思うが、そういうデータを取るつもりはないのだろうか。補助金の使われ方をいったん各病院でつくってしまうと、その後、診療報酬に変わったからといって変えるわけにはいかないと思う。そうすると、これは今後に全部つながってしまうので、そこは一度とらえておくべきと私は思っている。

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【厚労省保険局医療課・金光一瑛課長補佐】
 井川委員からご指摘いただいた内容は、分析的に見ると2つの視点があると思っている。
1つは整合性と言うか、補助金でどういうふうに支給がされているのかということと、診療報酬点数で計上した場合にどうなるのか。それは4,000円と1万2,000円と違って上がるので、そこは補正するとして、その辺がどのように整合的であるのかということ。
 それからもう1つはスケジュールの観点かと思う。補助金の支給状況について、実績報告書の提出は賃金改善実施期間(令和4年2月~9月)の終了後となっているので、同期間の終了後はこの診療報酬改定が行われ、すでに制度が走っている頃であり、スケジュールがちょっと合わないというところがある。
 そういった意味から、前者について、どのようにするのかということからすれば、しうる部分もあるのかと思うが、ある意味、この制度設計自体が、それぞれの医療機関における「看護職員×1万2,000円相当」というところは決まっている部分でもある。補助金によってその辺が大きく変わっているのであれば、補助金の考え方と診療報酬の総額の考え方が大きく変わっているのであれば、別途、それを把握する必要が出てくるかと思う。今回、その辺が大きく変わっていないのであれば、「1万2,000円相当×看護職員の数」という考え方に則って整合的に見ていくというのは、補助金によらず行えるのではないかなと思う。
 その上で、補助金の状況について、さらにとらえられるように事務局として努力すべきというご意見をいただくのであれば、そこは補助金の担当部局ともよく相談をしていくことになると思う。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


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