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看護職員、「高度急性期以外にもいる」 ── 看護の処遇改善で池端副会長

Posted By araihiro On 2021年12月24日 @ 11:11 AM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 令和4年度の診療報酬改定率などが報告された厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は看護の処遇改善について「看護職員は高度急性期以外にもいる」と指摘し、看護補助者などへの見解を求めた。厚労省の担当者は「中医協で当然、議論の対象となる」と述べた。

 厚労省は12月23日、社会保障審議会(社保審)医療保険部会(部会長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第149回会合を一部オンライン形式で開き、当会から池端副会長が委員として出席した。

 厚労省は同日の部会に、22日の大臣折衝を踏まえて決定した診療報酬や薬価の改定率などを提示。厚労省の担当者は「現在の状況ということで、ご報告を申し上げたい」と前置きした上で、7項目の制度改革事項のほか、看護の処遇改善について大臣折衝の内容を伝えた。

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P2-2【その他】令和4年度診療報酬改定率等_2021年12月23日の医療保険部会_ページ_2

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国において十分な財源確保を

 質疑で、内堀雅雄委員(全国知事会社会保障常任委員会委員長、福島県知事)は「看護、介護、保育など、現場で働く皆さんの収入を引き上げていくことは、各分野の人材確保の後押しにつながるもので極めて重要」との認識を示した。

 その上で、内堀委員は自治体や事業者などの意見も踏まえた制度設計を要望。令和4年10月以降の対応について、「地方自治体、事業者、被保険者等に過度な負担が生じることのないよう、国において十分な財源確保も含め、必要な措置を講じていただくとともに、引き続きさらなる処遇改善に取り組んでいただきたい」と求めた。

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詳細は中医協で改めて議論

 安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は「看護職員の処遇改善について令和4年10月以降は診療報酬で対応する方針が決められたものと理解した」とし、「詳細は中医協における改めての議論が必要」との認識を示した。

 その上で、安藤委員は「対象となる個人の給与が確実に引き上がるような仕組みとなること、また、効果検証の仕組みも併せて検討することが必要」と述べた。

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「その他」は中医協で議論

 池端副会長は看護職員の処遇改善について、三次救急など一部の医療機関に限定されている点を指摘。「10月以降も救急搬送件数が年200台以上の医療機関、三次医療機関に所属する看護職員または看護補助者等だけが対象になることは明記されているのか」と質問した。

 池端副会長は「介護保険施設で働く介護職員との給与差が大幅に開いている現状を是正するために、医療機関で働く介護職員の処遇改善があるべき」と主張した。

 厚労省保険局総務課の榊原毅課長は「対象範囲は経済対策における範囲と同じで、救急医療管理加算を算定する救急搬送件数年200台等」とした上で、「その他について、全体的にどうするかは中医協で当然、議論の対象となる」と答えた。

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なぜ看護師か、介護はいいのか

 この日の部会は、改定率等について委員の意見を聴いた後で議事に入った。今回の主な議題は、①公的価格評価検討委員会 中間整理、②オンライン資格確認等システムについて──の2項目。

 このうち①では、看護の処遇改善をめぐる議論があった。質疑で、袖井孝子委員(高齢社会をよくする女性の会副理事長)は、報告書に示された「管理的立場にある看護師の賃金が相対的に低い」との記載に言及し、「何と比べて低いのか。看護師さんの賃金自体は全産業平均よりも高い」との認識を示した。

 その上で、袖井委員は「なぜ看護師さんだけをここで取り上げているのか。保育や介護はいいのか」と疑問を呈した。

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看護師のキャリアアップのため

 袖井委員の発言を受け、池端副会長も「医療機関に勤務している介護職員が一定数いることが抜け落ちている。この中間報告には、そこがきちんと書き込まれていない」と苦言を呈した。

 その上で、池端副会長は看護師のキャリアアップに関する記載を指摘。医療機関で「看護補助者」として働く介護職員について「あくまでも看護師のキャリアアップのために介護職員の配置ということが出ているだけで、看護補助者としての介護職員に対する処遇改善は謳われていない。非常に大きな問題点」と指摘した。

 池端副会長は先ほどの回答を再確認し、「中医協等の議論で処遇改善をすることが可能なのか」と改めて尋ねた。榊原課長は「看護補助者や理学療法士などのコメディカルにその費用を充てることもできるとされている。その外側について、どうやっていくのかは中医協で全体的に議論していくことになろうかと思う」と回答した。

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オンライン資格確認、「医療団体の協力も」

 この日の会合では、オンライン資格確認等システムについて10月20日の本格運用開始後2カ月後の状況について報告があった。それによると、顔認証付きカードリーダーを申し込んでいるのは、約23万の医療機関・薬局のうち12月19日時点で約13万施設(56.6%)だった。

これに対し、委員から「医療機関等に対する働きかけをお願いしたい」「医療機関等の導入状況は厳しい状況」などの声が相次いだ。

 協会けんぽ理事長の安藤委員は「患者側がマイナンバーカードを保険証として利用しようとしても、実際に医療機関等で利用できないことが多い状況では、患者側の心情としては、利用できないと困るから保険証を持参することになり、利用がなかなか進まないのではないか」と指摘した。

 池端副会長は、ベンダーからの請求が依然として高額であることを改めて指摘した上で、医療機関や薬局へのアンケート調査やヒアリングなどの対応に期待を寄せた。

 厚労省保険局医療介護連携政策課・水谷忠由課長は、オンライン資格確認のためのポータルサイトを通じて引き続き医療機関等の意見聴取を進めていく考えを示し、「医療関係団体の協力もいただけると大変ありがたい」と要請した。

■ 看護における処遇改善について
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 診療報酬改定率はプラス0.43と小幅な引上げとなっているが、このうち看護職員の処遇改善に0.2%、不妊治療に0.2%ということを考えると、コロナ禍でまだまだ傷んでいる医療機関にとっては極めて厳しい改定と言わざるを得ないと思う。少しでもそういうことを是正できるような診療報酬改定であることを中医協でお願いしたい。
 看護職員における処遇改善について質問したい。大臣折衝の決定によると、「地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関(注1)に勤務する看護職員を対象に、10月以降収入を3%程度引き上げるための処遇改善の仕組み(注2)を創設する」となっている。そうすると、2月からだけではなく10月以降も救急搬送件数が年200台以上の医療機関と三次医療機関に所属する看護職員または看護補助者等だけが対象になるということを明記されているのかどうか。それについて事務局に確認させていただきたい。
 もしそうならば、看護職員はもちろん高度急性期以外にもいる。「看護補助者」と言われる医療機関で働く介護職員もいる。この看護補助者と、介護保険施設で働く介護職員との給与差が大幅に開いている現状で、何とかそこを是正するために、この処遇改善があるべきだと思っている。それとは反対の方向になってしまうのではないかと非常に危惧している。

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【厚労省保険局総務課・榊原毅課長】
 今回、大臣折衝で決まった事項は、お話にあったとおり、対象範囲は経済対策における範囲と同じで、救急医療管理加算を算定する救急搬送件数年200台等である。
 その他については、全体的にどうするかというのは当然、中医協での議論の対象になるということであろうと思っている。

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■「公的価格評価検討委員会」中間整理について
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 先ほどの診療報酬改定での意見とも一部重なる内容になるが、看護職員の処遇改善について述べたい。介護職員、保育士、看護職員等の処遇改善について、中間報告の内容には一定の理解を示すものであるし、ぜひそういう方向で進めていただきたいとは思う。
 ただ、介護職員の処遇改善は、介護保険の処遇改善加算による積み上げがある一方で、実は医療機関に勤務している介護職員が一定数いるということが抜け落ちている気がする。この中間報告には、そこがきちんと書き込まれていない。
 看護補助者の中には、特に慢性期等では施設基準に入っているような介護職員の配置基準が決まっていて、そこで働いている介護職員には、これまで積み上げてきた資料5ページのグラフ(介護保険、介護職員の処遇改善)で示されているような処遇改善がない。以前は交付金、今は加算だが、病院の看護補助者にはそれが一切認められていない。その格差が、医療機関等々で簡単に集計すると6万円以上も付いてしまっている。介護施設と病院を運営している法人は、自腹を切って穴埋めをしているのが現状である。
 今後、この処遇改善をさらにしっかりやっていこうということは理解しているが、医療機関で働く介護職員に対する手当ての仕方がきちんと書き込まれていないことは非常に不公平ではないか。現場の方々の意見からも、そう感じている。
 医療機関の場合は「介護職員」という言い方をせず、「看護補助者」に入ると思う。しかし、ここに書き込まれている看護補助者というのは、中間報告の10ページに示されているように、あくまでも看護師のキャリアアップのための介護職員の配置が出ているだけで、看護補助者としての介護職員に対する処遇改善は謳われていないので、それが非常に気になる。
 そこで質問だが、この中間報告を踏まえて、医療機関に勤務する介護職員の処遇改善も議論できると考えていいのか。もし、この中間報告でそれを謳っていないのであれば非常に大きな問題点ではないかと思う。この中間報告から読み取って、以降の中医協等の議論の中で、処遇改善をすることが可能なのかどうか、それをもう一度確認させていただきたい。

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【厚労省保険局総務課・榊原毅課長】
 先ほど、大臣合意のところで申し上げたように、基本的に10月以降の対応についても、対象となる医療機関については、経済対策と同じように救急医療管理加算で年間200台等となっている。それ以外の職種については、看護補助者あるいは理学療法士などのコメディカルにその費用を充てることもできるとされている。その外側については、どういうふうにやっていくのかというのは、中医協のほうで全体的に議論していくことになろうかと思う。
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■ オンライン資格確認等について
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 オンライン資格確認の本格運用開始後に検知されたシステム上の問題などは、おそらくヒューマンエラーがほとんどではないかと思うので、善処できることは善処していただいたほうがいいと思う。このために進まないということにならないことを望む。われわれ医療機関もそういう思いで取り組んでいきたい。
 先ほど医療機関の整備が十分でないという意見があった。また、患者さんの認知度もまだ低いという指摘もあった。これは鶏が先か卵が先かという議論になってしまうかもしれない。医療機関側の問題点をいろいろ挙げていただいたが、県医師会という立場で情報を収集すると、作業工程の短縮支援という面では、ベンダーの方々の費用の請求が本来の想定よりも高額である所も散見される。そういった情報をしっかり集めていただいて、善処できるところは善処していただきたい。
 現在の取り組み状況について、医療機関・薬局への働きかけについて報告があった。「アンケート調査やヒアリング等を通じて、その準備状況や導入に係る課題等を把握していく」としている。これも非常に重要な視点だと思うが、全国津々浦々でアンケート調査やヒアリングを行うことは難しいだろうと思う。現状で結構なので、調査や抽出の方法など、調査の具体的な実施工程等が決められていたら教えていただきたい。
 県の医師会という立場で言わせていただくと、そういういろいろな案件をいただくのだが、私もどこにお伝えしていいか分からない。窓口みたいなものがあれば、ぜひ公表していただけると、よりスムーズに進む一助になるのではないか。

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【厚労省保険局医療介護連携政策課・水谷忠由課長】
 医療機関等に対するアンケート調査については、社会保険診療報酬支払基金でオンライン資格確認のためのポータルサイトがある。今、ここにアカウント登録をしていただいている医療機関等が約13万施設ある。こうしたポータルサイトを通じて、医療機関が今どういった進捗状況にあるのか、あるいは例えば申込みはしたけれども、その次に、システム事業者との話がどうなっているかなど、そうした次のステップに進むに当たり、どういった課題があると認識されているのか、そうしたことについて、ポータルサイト上でアンケート調査を行っている最中である。
 こうした内容を踏まえ、ヒアリングについては、それを踏まえた取り組みをしていく予定である。こうしたものを実効あるように進めていくためにも、医療関係団体等の協力もいただければ大変ありがたいと思っているので、引き続きよろしくお願い申し上げる。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


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