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かかりつけ医の評価、「地域差も踏まえ検討を」 ── 中医協総会で池端副会長

Posted By araihiro On 2021年12月18日 @ 11:11 AM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 かかりつけ医の評価について「現行の要件では不十分」との声が上がった厚生労働省の会合で、診療側は「かかりつけ医の機能は幅広く多い」と反論した。日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「都会ではアクセスがいいが地方では家族を丸ごとみるケースもある。かかりつけ医の制度は地域差も踏まえて検討すべき」と指摘した。

 厚労省は12月17日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第506回会合をオンライン形式で開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。

 この日の主なテーマは、「外来(その4)」と「入院(その8)」。このうち外来では、かかりつけ医に関する調査結果などを示した上で最終ページに論点を提示。「かかりつけ医機能を有する医療機関の体制に係る評価の在り方について、どのように考えるか」と意見を求めた。

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01スライド_P29_【総-1】外来(その4)_2021年12月17日の中医協総会

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現在の評価方法は政策目的に合致

 質疑で、診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)は、かかりつけ機能に関する調査結果を評価。「機能強化加算の届出を行っている医療機関の方が、かかりつけ機能を発揮するための体制や、かかりつけ機能に関連する診療が行われている割合が高かったことが示されている」とし、「現在の評価方法は、かかりつけ機能を評価するという政策目的に合致したものと受け止めている」と現状維持を主張した。

 厚労省は同日の総会に、かかりつけ機能に関する令和3年度の調査結果を提示。「機能強化加算の届出をしている医療機関の方が、届出をしていない医療機関と比較して、かかりつけ医機能を有している割合が高かった」と指摘した。

 また、患者との関わりに関する調査結果も示し、「機能強化加算の届出ありの施設の方が、初診においても、他の医療機関の受診状況や処方された薬の内容を伝える等、かかりつけ医機能に係る診療が行われている割合がより高かった」と評価した。

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02スライド_P21_【総-1】外来(その4)_2021年12月17日の中医協総会

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「現状で十分と思っておられるのか」

 これに対し、支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は「機能強化加算については前回改定時に、かかりつけ医機能の普及を図る観点から、体制加算として院内掲示等の情報提供に係る要件が見直された。情報提供の方法の在り方について、かなりの議論があった」と振り返り、院内掲示に関する調査結果に言及。現行の要件を見直す必要があると強調した。

 安藤委員は、患者との関わりに関する調査結果として示された6項目のうち、院内掲示の調査結果について「届出あり施設の患者の方が、届出なし施設の患者よりも見たことがあると答えた割合が低い」とし、「加算の要件とされている情報提供の在り方について、現状で十分であると思っておられるのか、診療側のご認識を改めてお伺いしたい」と問題提起した。

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03スライド_P21【総-1】外来(その4)_2021年12月17日の中医協総会

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周知・広報に関して消極的である

 同じく支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)も資料21ページの調査結果に言及。「n数が少ないので正確な比較は難しいと思うが」と前置きした上で、「この差をもって、かかりつけ医機能に係る診療が行われていると判断するのは早計ではないか」と厚労省の分析を疑問視した。

 その上で、松本委員は「特に周知・広報に関しては消極的であるという印象を持たざるを得ない」と苦言を呈し、「かかりつけ医に関する周知は院内掲示や文書を置いておくだけではなく、直接、患者に文書を渡すとか説明をしていただかないと、患者側の理解は深まらないのではないか」と述べた。

 松本委員は「現行の要件では不十分」とし、次期改定で対応すべき項目として「病歴、受診歴、処方歴の確認」「かかりつけ医に関する情報の患者への周知」「かかりつけ医に関する適切な研修を受ける」「ベースとなる管理料・加算について一定の算定実績を求める」などを挙げた。

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患者にとって複雑でわかりにくい

 かかりつけ医の評価をめぐる議論では、安藤委員の発言を皮切りに、支払側委員の主張が続いた。眞田享委員(経団連社会保障委員会医療・介護改革部会長代理)は「かかりつけ医機能の診療報酬上の評価に当たっては、患者にとってわかりやすさ、納得感が得られやすいことが重要である」との考えを改めて示した。

 その上で、眞田委員は「かかりつけ医機能に関する評価は、診療報酬改定を経て複雑になっている部分もあり、患者にとってわかりにくいものになっているのではないか」と指摘。今回、厚労省が新たに示した資料P19に言及し、「現行の診療報酬項目との関係を整理していただくことも有効ではないか」と提案した。

 厚労省が同日の会合に示したのは、「外来診療の流れ(イメージ)と機能・役割について」と題する資料。かかりつけ医の役割を外来診療の流れの中に位置付けている。

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04スライド_P19_【総-1】外来(その4)_2021年12月17日の中医協総会

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かかりつけに関する診療報酬全般の再構築を

 支払側の松本委員は、現行の問題点を指摘した上で「かかりつけに関連する診療報酬全般について再構築が必要だ」との考えを示し、「外来管理加算、特定疾患療養管理料、地域包括診療加算の併算定は、計画的な管理はどこでやるべきなのか、どこで評価されるべきなのかが非常にわかりにくいので、やめるべき」と主張した。

その上で、松本委員は「かかりつけ医の報酬体系について患者目線で整理すべき」とし、「疾患を限定しない外来管理加算が基本としてまずあり、慢性疾患等を罹患した場合に特定疾患療養管理料に移り、さらに高血圧や糖尿病、高脂血症など複数の慢性疾患を罹患した場合に、地域包括診療料や地域包括診療加算に移行するということで、わかりやすくなる」と提案した。

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かかりつけ医の機能は幅広く多い

 こうした支払側の主張に対し、城守委員が反論。院内掲示について「診療所には多くの掲示物が貼られており、構造上、わかりやすい所に掲示しても見えにくいこともある」とし、患者への説明については「1日あっても言い切れないぐらいに時間がかかる。待合時間も多い中で全員に説明するのは不可能」と理解を求めた。

 その上で、城守委員は「かかりつけ医の機能は非常に幅広く多い。健診、学校保健、学校医、産業医、そのほか地域に根ざした活動も求められている」と説明。かかりつけ医の機能については医政局の検討会で議論すべきとし、「この中医協の場において、ミスリーディングになるような診療報酬上の要件設定や見直しなどを拙速にやるべきではない」と主張した。

 こうした議論を踏まえ、池端副会長が発言。「年齢差もある。地域差もある」と指摘、「それは診療報酬ではなくて、やはり医政局マターになってくるのではないか」と城守委員の意見に賛同した。

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2021年12月17日の中医協総会

■ かかりつけ医機能の評価について
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 安藤委員から診療側に質問があり、城守委員がお答えした。そのとおりだと思う。追加で私の意見も申し上げたい。 
 21ページに6つあるグラフについては、先ほど松本委員も少しおっしゃったように、nが44、43という数字である。私は統計の専門家ではないが、これで統計的有意差を見るのは、印象としてはかなり厳しいのではないか。 
 院内掲示に関する5番の回答がなぜ逆転しているのという質問があったが、この5番を見ると、無回答も機能強化加算ありの所が倍くらい多い。ということになると、ますます、この統計的有意差は出ないのではないか。あくまでも傾向としかみなせないのではないか。これについて有意差があるかどうか、事務局がもし確認できていれば教えていただきたい。
 資料によると、受診した医療機関の医師がかかりつけ医であるかどうかについては、機能強化加算の算定がなくても8割以上近くが「かかりつけ医である」と認識している。この結果から見れば、かかりつけ医が全く見つからなくて困っているという状況でもないという印象を持った。
 かかりつけ医の評価について、先ほど何人かの先生から見直しを求める発言があったが、地域差なども考慮する必要があるのではないか。私は福井だが、地方と都会では差があると感じている。医療機関も多い都会ではアクセスが良くて自由にどこでも行ける。診療科ごとに選んで行ける。しかし、地方は違う。都会のようにはいかないので、地域で、面で支える必要がある。かかりつけ医自身もそのように対応しなければいけない。
 私の感覚からすると地方では、かかりつけ医機能が良い場合もある。地域で頑張っているクリニックは、家族を丸ごとみている。そのため、たまにしか医療機関を受診しない若い人や子どもさんも、何かあるとそこにかかる。「家族丸ごとかかりつけ医」という所も地方では多いと思う。私は、それが本来のかかりつけ医の在り方の1つではないかという印象を持っている。
 もちろん、年齢差もある。地方と都会のような地域差もある。こうしたことも踏まえながら、かかりつけ医の制度を検討しなければならない。ただ、それは診療報酬ではなくて、やはり医政局マターになってくるのではないか。
 私からの意見は以上だが、統計学的有意差があるかどうかについて事務局にお答えがあれば、よろしくお願いしたい。

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【厚労省保険局医療課・井内努課長】
 21ページで、「n数が少ないが、有意差はあるのか」という質問があった。この資料については、個別に有意差の検定は行っていない。ここにある数字、そのままで評価をいただければと思っている。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


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