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アウトカム指標できちんと評価を ── 池端副会長、救急実施に異論

Posted By araihiro On 2021年12月11日 @ 11:11 AM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 地域包括ケア病棟の救急実施について、厚生労働省保険局医療課の井内努課長は12月10日の会合で、「救急を実施しているかどうかを聞いたときに、イエスと答えたものはあり、ノーと答えたものはなし」と述べた。これに対し、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「アウトカム指標できちんと評価を」と求めた。

 厚労省は同日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)総会の第504回会合をオンライン形式で開催し、当会から池端副会長が診療側委員として出席した。

 厚労省は同日の会合に「入院(その7)」と題する資料を提示。その中で地域包括ケア病棟をテーマの1つに挙げ、「これまでの議論(ポイントの振り返り)」を示した。3つの役割のうち、いわゆるサブアキュートについては「救急の受け入れ体制」を挙げている。
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01スライド_P32_【総-2】入院(その7)_2021年12月10日の中医協総会

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療養病床の救急実施、「4分の1であった」

 資料24ページでは、「実施ありの割合は、一般病床の地域包括ケア病棟を有する医療機関では約9割、療養病床の地域包括ケア病棟を有する医療機関では約4分の1であった」との認識を示している。

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02スライド_P24_【総-2】入院(その7)_2021年12月10日の中医協総会

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 こうしたデータを踏まえ厚労省は、地域包括ケア病棟の課題について「救急を実施していない医療機関が一定程度存在した」と指摘した。

 論点では、「地域包括ケア病棟に求められる3つの役割について、病床規模や病床種別による患者の背景・地域における運用の在り方等が異なることも踏まえつつ、その評価の在り方についてどのように考えるか」とし、委員の意見を聴いた。

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03スライド_P33_【総-2】入院(その7)_2021年12月10日の中医協総会

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厳しいペナルティは必要ない

 質疑で、診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)は「地域の医療提供体制によっていろいろと異なる」と改めて強調。自院からの転棟が多い場合や自宅からの入棟が多いケースなどを具体的に挙げ、「これらは地域包括ケアを成り立たせるための運用例と言えるのではないか」と説いた。

 城守委員はまた、入棟元の割合が「自院」と「自宅」などで異なる点について、「入院料・入院医療管理料1・3は、自宅等からの入棟や緊急患者の受入等の実績要件が既に一定程度、求められており、その分、高い点数設定になっている」とし、「実績要件を満たせずに一般病棟から多数の患者を受け入れて自宅等からの受入が少ない病棟は低い点数の2・4を算定することになっている」と説明した。

 こうした現状を踏まえ、城守委員は「今回、さらに厳しいペナルティを与えるような措置は必要ないのではないか」と述べた。
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救急の受入の有無にも差がある

 これに対し、支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は「役割の一部しか担えていない場合など、機能の差を踏まえた評価の在り方を検討すべき」との考えを改めて示し、自院や自宅など入棟元によって患者の状態に違いがあると指摘。「相対的に安定している状態の患者が多い等のデータを踏まえた対応」を求めた。

 続いて眞田享委員(経団連社会保障委員会医療・介護改革部会長代理)も「入棟元によって重症度、医療・看護必要度、あるいは患者の医療的な状態、医師による診察の頻度において差が見られる」とし、「救急の受入の有無にも差があることがわかる」と付け加えた。
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一般病床の9割が救急を実施

 同じく支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「サブアキュート、在宅復帰は地域包括ケア病棟に期待される重要な機能」とし、「救急について現行では入院料の1や3で自宅からの緊急患者の受入実績が求められているが、もう少し機能を明確化すべきだ」と主張した。

 松本委員はさらに病床種別による違いにも言及。「一般病床をベースにした地ケア病棟の9割が救急を実施していることを踏まえれば、現場に大きな混乱を生じさせない制度設計もありうる」と述べた。
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一般・療養で差別、「明確に反対する」

 池端副会長は、一般病床と療養病床に差があるデータとして示された「救急実施の有無」と題する資料24ページについて質問。「救急告示の病院かどうかで、こうした差が出ているのか」と疑問を呈した。

 池端副会長は「想像になるが」と断った上で、救急告示の病院では一般病棟でまず受け入れて、その後に地域包括ケア病棟に転棟させるケースが「一般的ではないか」と指摘。今回のデータは「地域包括ケア病棟そのものの機能を見ているものではない」と苦言を呈し、救急告示の有無など「ストラクチャーだけで評価することには反対」と述べた。

 これに対し、井内課長は資料24ページについて「地域ケア病棟を有する医療機関で、救急を実施しているかどうかを聞いたときに、イエスと答えたものはあり、ノーと答えたものはなし、そういった調査」と説明した。

 池端副会長は、病床種別によって患者の重症度等に大きな差異がないデータが今回は示されていないことを指摘し、「単に療養病床か一般病床かというだけでの評価に差を付けることに対しては再度、明確に反対させていただきたい」と述べた。
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2021年12月10日の中医協総会2

■ 地域包括ケア病棟について
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〇池端副会長
 地域包括ケア病棟に関する論点について質問と意見を述べたい。論点では、特に「病床規模や病床種別による」「評価の在り方についてどのように考えるか」ということで、その病床種別に関しては、資料24ページに、一般病床からの地ケアと療養病床からの地ケアとの差として「救急実施の有無」が示されている。
 これは令和2年度入院医療等の調査(施設票)のデータだが、救急告示の病院か、そうでない病院かということで、これだけ差があるという解釈でよいのかを質問したい。 
 もし、その解釈であれば、病院全体として救急を受け入れているか、救急告示をしているかである。救急告示病院の場合、これは想像になってしまうが、その病院に救急搬送された患者はまず一般病棟に入って、その後、地域包括ケア病棟等で受けるという流れになるのが一般的ではないかと思う。とすると、24ページのグラフでは3倍以上の差があるが、これは地域包括ケア病棟そのものの機能を見ているものではないという解釈になるではないか。
 地域包括ケア病棟自体が救急の体制を持っているかを見るのであれば、それは在宅からの受け入れがその機能に当たると思う。すなわち、サブアキュートの機能を見るためには入棟元のデータを見ればわかるわけで、その資料は今回、お示しされていないが、一般病床と療養病床でそれほど大きな差はなかった。
 地域包括ケア病棟のサブアキュート機能が在宅からの受け入れだけではわからないのであれば、「救急・在宅等支援病床初期加算」のデータを見ればわかるのではないか。一般病床からの初期加算か、在宅からの初期加算かがわかるし、さらに、それが救急かどうかはDPCデータを調べればわかる。
 そうしたデータを踏まえて、救急患者を一定数、受け入れているかを見て、その上で評価していただくことも可能であると思う。
 しかし、救急告示をしているかどうかで一般病床と療養病床の評価を変えるということに対しては全面的に反対したい。地域によっては療養病床しか持っていない病棟に救急告示の指定をしないこともある。その辺も理解していただきたい。
 つまり、ストラクチャーだけで評価するのではなく、きちんとアウトカムを出しているか、あるいはプロセスを評価していただくのであればやぶさかではないが、今さら、ストラクチャーだけで評価しようというのは、これまでの流れと少し違うのではないかということで、明確に反対をさせていただきたい。

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〇厚労省保険局医療課・井内努課長
 池端委員からいただいた24ページの救急実施の有無の定義ということであるが、これは、その地域ケア病棟を有する医療機関で、救急を実施しているかどうかということを聞いたときに、イエスと答えたものはあり、ノーと答えたものはなし、そういった調査である。
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〇池端副会長
 前回の資料では示されていたものが今回は示されていない。病床種別によって重症度、医療・看護必要度とか在宅復帰率はそれほど大きな差がない。そういうアウトカム指標できちんと評価していただくのは構わないが、単に療養病床か一般病床かというだけで評価に差を付けることに対しては再度、明確に反対させていただきたい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


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