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「国民にわかるように説明を」 ── 改定の基本方針で池端副会長

Posted By araihiro On 2021年12月10日 @ 11:11 AM In 協会の活動等,審議会,役員メッセージ | No Comments

 「令和4年度診療報酬改定の基本方針」をまとめた厚生労働省の会合で、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は「大病院受診時の定額負担は選定療養の制度を使った非常にわかりにくい仕組み」と改めて強調し、「きちんと国民にわかるように説明をお願いしたい」と求めた。

 厚労省は12月9日、社会保障審議会(社保審)医療保険部会(部会長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)の第148回会合を一部オンライン形式で開催し、当会から池端副会長が委員として出席した。

 厚労省は前回12月1日の会合で示した「骨子案」を一部修正した「基本方針(案)」を提示。9日午前に開かれた同部会で了承を得た。同日午後に開かれた医療部会でも了承され、次期改定の基本方針が10日にまとまった。
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02_2021年12月9日の医療保険部会(全国都市会館)

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安心な暮らしを実現し、成長と分配

 基本方針の重点課題は骨子案から変更なく、コロナ対応と働き方改革の二本柱となっているが、追記された箇所もある。

 基本認識には「社会保障の機能強化と持続可能性の確保を通じて、安心な暮らしを実現し、成長と分配の好循環の創出に貢献するという視点も重要」と新たに書き込まれた。
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01スライド_2021年12月9日の医療保険部会資料抜粋

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「政府において」丁寧な説明を

 最終ページの「将来を見据えた課題」では、国民に対する説明について「政府において」との文言が追加された。

 厚労省保険局医療介護連携政策課の水谷忠由課長は「この基本方針は医療保険部会・医療部会のクレジットでおまとめいただくものなので、政府に注文を付けるような文言になっていたが、前回の医療部会で、そうした趣旨が明確になるようにすべきという意見を頂戴した」と修正理由を説明した。
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02スライド_基本方針

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だますような感じで大きな改革

 骨子案について審議した11月29日の社保審・医療部会では、神野正博委員(全日本病院協会副会長)が大病院受診時の定額負担を引き合いに「国が国民の納得感を高めるということをきちんとやる責務がある」と指摘した。

 相澤孝夫委員(日本病院会会長)は「今こっそりと、ひっそりと、だますような感じで大きな改革をしようとしている。それは選定療養費」と苦言を呈し、「厚労省の姿勢はどうなのか。きちんとした丁寧な説明を行っていく、とすべきだ」と主張した。

 前回の骨子案では、「丁寧な説明を行っていくことが求められる」としていたが、今回の基本方針案では「政府において、(中略)丁寧な説明を行っていくことが必要である」と修正されている。
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政府の責務を明確にした

 12月9日の医療保険部会で、袖井孝子委員(高齢社会をよくする女性の会副理事長)は「国民に説明するのが政府の責務であることを明確にしたのは大変良かった」と評価した。

 袖井委員は「例えば介護保険については自治体がかなりわかりやすい詳細な冊子を作ったり説明会をしたりしているが、医療、そして年金もそうだが、社会保障の根幹をなすような、そういう大きなものの説明がほとんどなされていない」と指摘し、今後の取り組みに期待を寄せた。

 池端副会長も「国民への丁寧な説明が必要だと言い切ったことはありがたい」と評価し、「きちんと国民にわかるように説明をお願いしたい」と求めた。

 改定の基本方針は医療部会・医療保険部会の了承を得てまとまり、一部修正の上、翌日の中医協総会に示された。

 厚労省の担当者によると、修正されたのは主に2箇所で、P4「急変時の受入体制の確保」を「急変時の救急医療体制等の確保」に、P10「地域資源の実情を踏まえた取組」を「地域資源の実情に即した取組」に変更している。

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03_2021年12月9日の医療保険部会(全国都市会館)

【池端副会長の発言要旨】
 今回の案は丁寧に修正を加えていただき、全体的に賛同させていただく。その上で、2点コメントしたい。 
 まず、基本方針の基本認識について、「社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和」として、「社会保障の機能強化と持続可能性の確保を通じて、安心な暮らしを実現し、成長と分配の好循環の創出に貢献するという視点も重要」とある。 
 当然ながら医療機関などで働く人たちも国民である。その方々も安心な暮らしが実現できなければ、とうてい支えられる側を救うことができない。そういう視点も考えていただきたい。
 疲弊していると言われている看護職、あるいは看護補助者等の賃上げ等に関してはしっかりとした対応をお願いしたい。支える側、支えられる側というだけではなく、医療機関で働く方々も国民で、その安心な暮らしに対しての成長と分配も必要であることをご理解いただきたい。 
 今回のコロナでわかったことは医療機関の脆弱性であり、余裕がないために有事への対応が難しかったことである。そうした点も踏まえ、今後の診療報酬改定等にも生かしていただきたい。
 2点目は、先ほど袖井委員もおっしゃったように、国民への丁寧な説明である。「国民に対して医療制度に関する丁寧な説明を行っていく」という文言を入れていただいたことは非常にありがたい。しかも、それが必要だと言い切ったことはありがたい。 
 この点について、重点課題の「具体的方向性の例」として「外来医療の機能分化等」が挙げられている。この医療保険部会で指針をまとめた大病院受診時の定額負担は選定療養の制度を使った非常にわかりにくい仕組みである。患者さんがなぜこれを負担しなければいけないのかが非常にわかりにくい。これを医療機関側に説明を求められても非常に難しい。こうした問題も含めて、全体できちんと国民にわかるように説明をお願いしたい。

                          (取材・執筆=新井裕充) 


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